捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

クロユキ

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出掛けることもできず…

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側に兄アルフォンス皇子がいないと思い探していたソフィアは、アルフォンス皇子を中心に若い女性達が周りを囲み、品物選びをしている様子をソフィアは離れて見ていた。
チリン!
「いらっしゃいませ…」
店の中に入って来た女性二人が小声で「こちらにいらしたわよ」
と敬語混じりで声に出し、四人の女性達の間に二人の女性が加わり店内は大騒ぎになっていた。
店員も気になっていたが会計場を離れる事が出来ず、時々体を傾けて女性達の固まりの場所を覗いていた。
(…アルフォンス皇子様の頭が見えるくらいで、周りは綺麗な服を着た女性ばかりだわ…)
ソフィアはアレックと結婚して綺麗な服を着て出掛けた事がなかった…実家から持って来た服を繰り返し着ていた。
仕事を手伝うようになり、服を買う時間がなかった。
(…メイドが着ていた服にほつれを見っけてくれてその時新しい服があればと思って、旦那様に話した事があった…)
『買い物に行きたい?』
『はい…旦那様の屋敷へ来てから出掛けた事がありませんので明日にでも出掛ける事が出来たらと思いまして…』
『…ここへ来て出掛けた事がなかったのか?』
『…はい、ありませんが…』
困った顔をする旦那様を見て仕事の事で困っていると思った。
『…何かお困りでも?明日でなくてもいいのですが…』
『…じっは、数週間屋敷を留守にする事になった…取り引き先へ行かなくてはならないんだ…俺の留守の間屋敷内と店を君に任せようと思ってお願いする所だった』
『…そうですか…お仕事でしたら私の事でしたらいつでも行けますのでお気をつけて行ってください』
『はぁ…ありがとう、そう言ってくれると助かる…明日の朝出掛けたいと思う』
『分かりました』
私は、『助かる』と笑顔を見せる旦那様を見て本当に嬉しかった…
『三週間の予定だが、何か分からない事は執事に聞いてくれ』
『はい』
ドサッ、ドサッと馬車の荷台には大荷物のように乗せていた。
(旦那様一人で行くのにこんなにいるのかしら?)
パタパタと階段から下りてくるエミリーを見て驚いた。
『ごめんなさい、仕度で時間かかってしまったの』
『いや、大丈夫だ』
『あ、あの、旦那様…お一人で行くのでは…』
『ああ…昨日言いそびれてしまった。エミリーが一緒に行きたいと言って長旅だと言ったが…』
『だって、アレック様だけ旅行なんて狡いわ』
『いや、仕事だが…』
『……』
『すまない、屋敷を空けるが留守を頼む』
『お姉様、お土産を買ってくるわ!行ってきます』
私は二人が乗った馬車を見ているだけだった…執事やメイド達が私を慰める声を聞きながら、旦那様とエミリーがいない屋敷を過ごした…屋敷へ帰って来た旦那様とは、暫く会うのを避け私に何か言っていたと思ったけど忘れてしまった…

「イヤな思いをしてまで旦那様の側にいたのだろう…」








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