捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

戻ることなら…⑤

屋敷に届いた荷物は、パルリス家に嫁いだ亡き娘ソフィアの物だった。
「…これも…これも…見覚えのある物ばかりだわ…」
涙を目に溜める母親はソフィアの物をギュッと握りしめていた。
「…以前、侯爵にソフィアの物は全部送ってくれと話をした…娘の物が残っていれば、いつか妻を迎えるだろう侯爵に前の妻の物がそのまま残っていると嫁いで来た女性は嫌だと思ってな…ソフィアの物を送って貰ったんだ…」
「…そうでしたか…」
父親も懐かしくソフィアの荷物を触っていた。
「……ソフィアの物は売りに出そうと思う」
「あなた！？」
「……」
「私達の手元に置いても…あの子なら許してくれる…私達はソフィアに何もしてあげる事ができなかった…侯爵の元へ嫁がせたのも私達に何も言えずに行った…ソフィアの物は人の手に渡るが見かけた時は思い出を語り合おう…」
父親の話を聞いていた時階段から下りてくるエミリーが声をかけていた。
「みんな何をしているの？その箱は何？」
エミリーが両親の側に行き箱の中を覗くと姉のソフィアの物だと気づいた。
「あ！これソフィアお姉様の物だわ。私の荷物はあるの？アレック様から沢山買って貰ったの」
「……」
父親はエミリーの物を買っていたとアレックから聞いて、本当だったのかと呆れて首を横に振っていた。
「あの…エミリー様のは紙袋に入っていますこれでしょうか…」
メイドが衣服が入るほどの紙袋を見せていた。
「違うわ、私のはお姉様の箱と同じ大きさが何個でもあるはずよ洋服にドレスに靴に宝石も貰ったんだから…本当よ嘘ではないわ」
エミリーの話を聞いていた両親に医師そしてメイド達は茫然としていた。
「…侯爵からの贈り物は送らなくていいと侯爵に話している」
「え！？どうして…」
「お前は侯爵と縁を切ったのだ…」
「え…縁を切ったって何の事？」
「お前は侯爵とは結婚はできない…侯爵の妻はソフィア一人だ…エミリーどうしてポール君を裏切ったんだ？お前達あんなに仲が良かったではないか…」
父親は涙を溜めエミリーをじっと見ていた。
「…選べなかったの…二人とも好きだったから…」
「ソフィアの事は考えなかったのか？」
「だって、アレック様はお姉様を避けていたから私がお姉様の替わりになればって…でも、時々ポールの事も気になって…だって…お姉様が亡くなるなんて思っていなかったの…」
涙を流すエミリーを見て父親は息をはいていた。
「はぁ…エミリー姉に申し訳ないと思うなら侯爵には会わないと約束してくれ…」
「……」
エミリーは何も言えず涙が止まらなかった。