捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

クロユキ

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願望

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ソフィアは昼寝をしていた時、夢を見ていた。
いつものように空き部屋を仕事場として使い、ソフィアは一人書類の整理をしていた。
コンコン!
『はい』
『俺だが、少しいいか』
『…はい、なんでしょう?』
『今から、休憩をしたいんだが散歩を一緒にと思って誘ったんだが、どうかな?』
『え?散歩ですか?エミリーと一緒ではないのですか?』
『君と二人で行きたいんだ』
『……わかりました…』
仕事部屋をアレックと一緒に出たソフィアは戸惑っていた。
(いままで私を散歩に誘う事はなかったのに…)
『アレックお兄様』
エミリーが廊下を走り笑顔でアレックに抱きついていた。
(はぁ…いつもの光景ね…エミリーには注意はしたのだけど旦那様が『いい』といわれたのだから私から注意はしなくなったけれど…散歩の誘いはなくなったわね…)
『アレックお兄様、公園に一緒に行きましょう?』
アレックの体に抱きついたまま笑顔を見せるエミリーは公園に誘っていた。
『……妻と一緒なら行ってもいい』
『『え!?』』
ソフィアとエミリーは同時に声を出し一番驚いていたのはソフィアだった。
『え~っ、アレックお兄様と二人で行きたいわ』
『今から妻と二人で散歩をするんだ。公園はエミリーが一人で行くといいだろう』
『!?』
『え…一人…で…』
アレックがエミリーが体に抱きつく腕を離したのにもソフィアは驚いていた。
『…あの…旦那様?』
『そんな…酷いわアレックお兄様…』
涙を溜めるエミリーにソフィアはため息をはいていた。甘え上手なエミリーは、アレックが涙を見るといつも宥めてくれていたのを知っていた。
『はぁ…その癖はやめた方がいい』
『え…』
『行こう、時間の無駄だ』
『え?あ、あの…旦那様…?』
手を掴み歩き出したアレックに戸惑いながらも、エミリーではなく自分を選んでくれたアレックが嬉しかったソフィアは、涙を流し前を歩くアレックの声が聞こえた気がした…
『…すまなかった…もっと早く君に寄り添うべきだった…』
『旦那様…』
(……)
目を覚ましたソフィアは、涙を流し顔が濡れているのに気づき「あう~っ」と声に出しメイドに手を振って呼んでいた。
顔を拭いて貰ってホッとしたソフィアは、現実では叶うことがなかったが、夢の中でのアレックはエミリーではなく自分を選んでくれたのが嬉しかった。
(…夢の中で旦那様が私に謝るなんて…最後に見た旦那様の謝る姿が忘れられないんだわ…)
ソフィアは周りを見渡しアレックがどうなったのか気になっていたが、話す事ができないためどうする事もできなかった。
(誰かが、旦那様の話をしてくれたらいいのだけど…はぁ、会話ができないなんて不便だわ…)
ソフィアは、側で寝ている皇子達を見てうとうとと眠たくなり、アレックが気になるが、赤ちゃんだから睡魔には勝てなかった。ソフィアが目を覚ました時には二人の皇子達はいなくなり、代わりに陛下とアレックが覗いていたのには驚いていた。






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