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家族
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「用意は出来たのか?」
皇女の部屋に服を着替えた陛下が顔を覗かせて迎えに来ていた。
「はい、準備は出来ております陛下」
年配のメイドが頭を下げ後ろに五~六人並んでいるメイド達も頭を下げていた。
(陛下に叱っていた年配のメイドは、多分メイド長だと思う…陛下が困った顔で頭を下げていたからその光景が珍しく、この人は陛下の事をよく知っている人だと思った。)
「今日も可愛いな」
「あう、あう」
(朝まで一緒でしたけど…)
メイドから陛下へと抱き渡した皇女ソフィアは、陛下の胸にギュッと握りしめ落ちないように下を余り見ないようにしていた。
その様子をメイド達は頬を染めて見ていた。
(皆さん、笑顔が素敵なんですね…私は…ソフィア・ルモアは結婚してから笑った事があったかしら…いつも旦那様の顔色を伺っていたような…会話といえば仕事の話ばかりで、夫婦の話しはなかった…)
タタタタタ…陛下と皇女の側に男の子が走って陛下の腰に抱きついていた。
「ジェラルド皇子!」
(え、皇子様!?)
グリグリと陛下のお腹に顔を埋めると、パッと顔を上げたジェラルド皇子はニカッと笑顔を見せていた。
「父様!赤ちゃんは?」
「ああ、父様が抱っこしているぞ…」
「ジェラも赤ちゃん抱っこする!」
「いや…落としたら大変だから、もう少し大きくなってからだな…」
「抱っこ!抱っこ!!」
ぴょんぴょんと跳ねるジェラルド皇子は、何処にでもいる普通の男の子のようで、ソフィアは心の中で微笑んでいた。
(私のお兄さんになるのよね?なんだか変な気分だわ…初めてお会いするけれど…旦那様の話では五歳か六歳だったかしら…)
「ジェラルド皇子様!」
騎士二人が慌てたように走り出し声を出した時、ジェラルドは陛下の後ろに隠れて腰の服を握りしめていた。
「お捜ししましたよ、ジェラルド皇子」
「はあ、はあ、お部屋にお戻りを……!へ、陛下!?」
一人の騎士が、陛下に気づき慌て出し挨拶をした。
「アルテシアの太陽」
「ジェラルド皇子付きの騎士だな、どうした?」
「皇女様に会いに行くと言われて皇后様の部屋を出られましてお捜ししていた所です」
「申し訳御座いません我々が付いていながら…」
「ふむ…」
じっと陛下の側を離れないジェラルド皇子の頭をポンと軽く叩いた。
「今日は、父様が妹を連れて行くから部屋で待つように言っただろう?」
「…う、はい…ごめんなさい…」
「騎士のお兄さんには?」
「……」
陛下の服を握りしめていた手を放したジェラルド皇子は二人の騎士にペコッと頭を下げていた。
「ごめんなさい…」
「!お、皇子様…」
「わたくし達の方こそ…」
じーんとした騎士二人を見て陛下はジェラルド皇子の頭を撫で笑顔を見せていた。
「父様と一緒に行こう、部屋に入って妹に触るといい」
「うん!」
(なんだか、ほのぼのとして良いな…私にも子供がいたらこんな風に親子の会話ができたのかな…)
陛下とジェラルド皇子そしてソフィア皇女と三人で皇后の部屋に向かう事になった。
「あ!お前達は団長に話しておこう、ジェラルド皇子に追い付けないのなら護衛を替える話しでもしておこう」
「「!」」
「このまま護衛を続けたいのなら足腰を鍛えるんだな」
「「は!」」
頭を下げた騎士を見ていたソフィアは皇子様をお守りするのも大変だなと…ジェラルド皇子を見ると目がバチッと合いニコッと笑顔を向けたジェラルド皇子にソフィアも笑顔を向けた。
「きゃはっ!」
「!?」
陛下の顔が驚いたように見下ろし笑みを見せていた。
「父様の顔を見てもう一度笑ってごらん?」
(……)
皇女の部屋に服を着替えた陛下が顔を覗かせて迎えに来ていた。
「はい、準備は出来ております陛下」
年配のメイドが頭を下げ後ろに五~六人並んでいるメイド達も頭を下げていた。
(陛下に叱っていた年配のメイドは、多分メイド長だと思う…陛下が困った顔で頭を下げていたからその光景が珍しく、この人は陛下の事をよく知っている人だと思った。)
「今日も可愛いな」
「あう、あう」
(朝まで一緒でしたけど…)
メイドから陛下へと抱き渡した皇女ソフィアは、陛下の胸にギュッと握りしめ落ちないように下を余り見ないようにしていた。
その様子をメイド達は頬を染めて見ていた。
(皆さん、笑顔が素敵なんですね…私は…ソフィア・ルモアは結婚してから笑った事があったかしら…いつも旦那様の顔色を伺っていたような…会話といえば仕事の話ばかりで、夫婦の話しはなかった…)
タタタタタ…陛下と皇女の側に男の子が走って陛下の腰に抱きついていた。
「ジェラルド皇子!」
(え、皇子様!?)
グリグリと陛下のお腹に顔を埋めると、パッと顔を上げたジェラルド皇子はニカッと笑顔を見せていた。
「父様!赤ちゃんは?」
「ああ、父様が抱っこしているぞ…」
「ジェラも赤ちゃん抱っこする!」
「いや…落としたら大変だから、もう少し大きくなってからだな…」
「抱っこ!抱っこ!!」
ぴょんぴょんと跳ねるジェラルド皇子は、何処にでもいる普通の男の子のようで、ソフィアは心の中で微笑んでいた。
(私のお兄さんになるのよね?なんだか変な気分だわ…初めてお会いするけれど…旦那様の話では五歳か六歳だったかしら…)
「ジェラルド皇子様!」
騎士二人が慌てたように走り出し声を出した時、ジェラルドは陛下の後ろに隠れて腰の服を握りしめていた。
「お捜ししましたよ、ジェラルド皇子」
「はあ、はあ、お部屋にお戻りを……!へ、陛下!?」
一人の騎士が、陛下に気づき慌て出し挨拶をした。
「アルテシアの太陽」
「ジェラルド皇子付きの騎士だな、どうした?」
「皇女様に会いに行くと言われて皇后様の部屋を出られましてお捜ししていた所です」
「申し訳御座いません我々が付いていながら…」
「ふむ…」
じっと陛下の側を離れないジェラルド皇子の頭をポンと軽く叩いた。
「今日は、父様が妹を連れて行くから部屋で待つように言っただろう?」
「…う、はい…ごめんなさい…」
「騎士のお兄さんには?」
「……」
陛下の服を握りしめていた手を放したジェラルド皇子は二人の騎士にペコッと頭を下げていた。
「ごめんなさい…」
「!お、皇子様…」
「わたくし達の方こそ…」
じーんとした騎士二人を見て陛下はジェラルド皇子の頭を撫で笑顔を見せていた。
「父様と一緒に行こう、部屋に入って妹に触るといい」
「うん!」
(なんだか、ほのぼのとして良いな…私にも子供がいたらこんな風に親子の会話ができたのかな…)
陛下とジェラルド皇子そしてソフィア皇女と三人で皇后の部屋に向かう事になった。
「あ!お前達は団長に話しておこう、ジェラルド皇子に追い付けないのなら護衛を替える話しでもしておこう」
「「!」」
「このまま護衛を続けたいのなら足腰を鍛えるんだな」
「「は!」」
頭を下げた騎士を見ていたソフィアは皇子様をお守りするのも大変だなと…ジェラルド皇子を見ると目がバチッと合いニコッと笑顔を向けたジェラルド皇子にソフィアも笑顔を向けた。
「きゃはっ!」
「!?」
陛下の顔が驚いたように見下ろし笑みを見せていた。
「父様の顔を見てもう一度笑ってごらん?」
(……)
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