上 下
39 / 190

家族

しおりを挟む
「用意は出来たのか?」
皇女の部屋に服を着替えた陛下が顔を覗かせて迎えに来ていた。
「はい、準備は出来ております陛下」
年配のメイドが頭を下げ後ろに五~六人並んでいるメイド達も頭を下げていた。
(陛下に叱っていた年配のメイドは、多分メイド長だと思う…陛下が困った顔で頭を下げていたからその光景が珍しく、この人は陛下の事をよく知っている人だと思った。)
「今日も可愛いな」
「あう、あう」
(朝まで一緒でしたけど…)
メイドから陛下へと抱き渡した皇女ソフィアは、陛下の胸にギュッと握りしめ落ちないように下を余り見ないようにしていた。
その様子をメイド達は頬を染めて見ていた。
(皆さん、笑顔が素敵なんですね…私は…ソフィア・ルモアは結婚してから笑った事があったかしら…いつも旦那様の顔色を伺っていたような…会話といえば仕事の話ばかりで、夫婦の話しはなかった…)
タタタタタ…陛下と皇女の側に男の子が走って陛下の腰に抱きついていた。
「ジェラルド皇子!」
(え、皇子様!?)
グリグリと陛下のお腹に顔を埋めると、パッと顔を上げたジェラルド皇子はニカッと笑顔を見せていた。
「父様!赤ちゃんは?」
「ああ、父様が抱っこしているぞ…」
「ジェラも赤ちゃん抱っこする!」
「いや…落としたら大変だから、もう少し大きくなってからだな…」
「抱っこ!抱っこ!!」
ぴょんぴょんと跳ねるジェラルド皇子は、何処にでもいる普通の男の子のようで、ソフィアは心の中で微笑んでいた。
(私のお兄さんになるのよね?なんだか変な気分だわ…初めてお会いするけれど…旦那様の話では五歳か六歳だったかしら…)
「ジェラルド皇子様!」
騎士二人が慌てたように走り出し声を出した時、ジェラルドは陛下の後ろに隠れて腰の服を握りしめていた。
「お捜ししましたよ、ジェラルド皇子」
「はあ、はあ、お部屋にお戻りを……!へ、陛下!?」
一人の騎士が、陛下に気づき慌て出し挨拶をした。
「アルテシアの太陽」
「ジェラルド皇子付きの騎士だな、どうした?」
「皇女様に会いに行くと言われて皇后様の部屋を出られましてお捜ししていた所です」
「申し訳御座いません我々が付いていながら…」
「ふむ…」
じっと陛下の側を離れないジェラルド皇子の頭をポンと軽く叩いた。
「今日は、父様が妹を連れて行くから部屋で待つように言っただろう?」
「…う、はい…ごめんなさい…」
「騎士のお兄さんには?」
「……」
陛下の服を握りしめていた手を放したジェラルド皇子は二人の騎士にペコッと頭を下げていた。
「ごめんなさい…」
「!お、皇子様…」
「わたくし達の方こそ…」
じーんとした騎士二人を見て陛下はジェラルド皇子の頭を撫で笑顔を見せていた。
「父様と一緒に行こう、部屋に入って妹に触るといい」
「うん!」
(なんだか、ほのぼのとして良いな…私にも子供がいたらこんな風に親子の会話ができたのかな…)
陛下とジェラルド皇子そしてソフィア皇女と三人で皇后の部屋に向かう事になった。
「あ!お前達は団長に話しておこう、ジェラルド皇子に追い付けないのなら護衛を替える話しでもしておこう」
「「!」」
「このまま護衛を続けたいのなら足腰を鍛えるんだな」
「「は!」」
頭を下げた騎士を見ていたソフィアは皇子様をお守りするのも大変だなと…ジェラルド皇子を見ると目がバチッと合いニコッと笑顔を向けたジェラルド皇子にソフィアも笑顔を向けた。
「きゃはっ!」
「!?」
陛下の顔が驚いたように見下ろし笑みを見せていた。
「父様の顔を見てもう一度笑ってごらん?」
(……)









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

形だけの妻ですので

hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。 相手は伯爵令嬢のアリアナ。 栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。 形だけの妻である私は黙認を強制されるが……

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

(完結)だったら、そちらと結婚したらいいでしょう?

青空一夏
恋愛
エレノアは美しく気高い公爵令嬢。彼女が婚約者に選んだのは、誰もが驚く相手――冴えない平民のデラノだった。太っていて吹き出物だらけ、クラスメイトにバカにされるような彼だったが、エレノアはそんなデラノに同情し、彼を変えようと決意する。 エレノアの尽力により、デラノは見違えるほど格好良く変身し、学園の女子たちから憧れの存在となる。彼女の用意した特別な食事や、励ましの言葉に支えられ、自信をつけたデラノ。しかし、彼の心は次第に傲慢に変わっていく・・・・・・ エレノアの献身を忘れ、身分の差にあぐらをかきはじめるデラノ。そんな彼に待っていたのは・・・・・・ ※異世界、ゆるふわ設定。

夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。

MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。 記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。 旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。 屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。 旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。 記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ? それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…? 小説家になろう様に掲載済みです。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

処理中です...