捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

葬儀が終わり…⑤

ソフィアは、ドレスを切ってしまった事に後悔してベッドの上で眠れずにいた。
『…披露宴から帰って来たら謝りましょう』
ソフィアは、ベッドから起き上がり扉を少し開けるとアレックが帰って来たら会いに行こうと待っていた。
玄関の扉が開きアレックとエミリーが帰って来た。
『陛下に初めて会ったわ…まだドキドキしている』
『陛下を見て驚いた顔をするとは思わなかったな…』
『だって、お父様と同じと思っていたから…あんなに若いなんて思わなかったもの』
『はははは』
賑やかな話し声を聞いていたソフィアは、開いた扉から階段を上る二人の足音を聞き、もしかしたら部屋に来てくれるかもと思いアレックが来るのを待っていた。
『ドレスを着替えたらアレック様の部屋へ来ても良い？』
『来てもいいが、メイドに見つからないように来てくれ妻に知られたら大変だからな』
『お姉様は、お部屋でおやすみなんでしょう？』
『念のためだ』
『もう、心配症なんだから…お姉様と離婚したらいいのに、こんなにコソコソと会わなくてもいいのにな～っ』
『それは駄目だ。妻と離婚する理由がない…それに彼女がいるだけで仕事が速いんだ』
『ふ～ん、お姉様だけ褒めて私には何もないの？』
頬を膨らませたエミリーにアレックはキスをした。
『君は俺の側にいてくれるだけでいいんだ』
『もう、アレック様ったら…でも、嬉しい』
誰もいない廊下で、アレックとエミリーは抱きしめキスを交わしていた。
その様子を部屋から出ていたソフィアが目を見開いて見ていた。
『また後でお部屋に行くわ。アレックお兄様』
『ああ』
二人は別れ自分の部屋へと戻り、ソフィアは腰が抜けたように床に膝を着き真っ青な顔になり震えていた。
『…う……うう…』
涙を流すソフィアにメイドが見つけ驚いていた。
『奥様！？大丈夫ですか？どうして廊下に…旦那様がお帰りになりましたので知らせてまいります』
『待って！旦那様には…知らせなくていいの…会いたくないから…』
『奥様…』
『あの人には妹が…エミリーがいればいいの…私の事なんて何も思っていないのだから…』
『そんな事はありません旦那様は奥様の事を…』
『…旦那様は、部屋には来なかったわ…私を少しでも心配していたら部屋に真っ直ぐ来てもよかったのに…でも…旦那様は…』
『奥様…い、今はお部屋に戻りましょう』
『離婚…』
『え？』
『…あの人の口から「離婚」を言ってくれたら、私はこんなに苦しまなくてすむのに……』
『奥様…』
『…ごめんなさい…貴女にこんな話をしたら困るのに…お話する人が私にはいないから…』
『私で良かったら、いつでも聞きます。ですから、奥様気を落とさないでください…』
涙目で話をするメイドにソフィアは笑みを見せていた。

「…私が知っています奥様のお話はこれだけです…他のメイド達にもお話を聞かれますか？」
「……いや、ありがとう…私一人にしてくれないか…」
「…わかりました…」
メイドはアレックにソフィアの知っている事を全部話し終え、部屋の中では切り刻まれたドレスを握りしめ俯くアレックの姿があった。
「……う……ううっ……ソフィア…ソフィア……」
何度も呼ぶ妻の名前に返事が来ない静かな部屋で、アレックは泣き続けていた。