捨てられた侯爵夫人の二度目の人生は皇帝の末の娘でした。

クロユキ

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エミリーの婚約者④

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アレックの前にエミリーの婚約者が睨むように立っていた。
「…誰だ?」
「僕はエミリーの婚約者ポール・コルベールと言います」
「エミリー様の婚約者!?」
「……」
「婚約者と聞いて驚かれないんですね。僕の事は彼女から聞いていたのですか?」
アレックの側から放れないエミリーを見てポールは手を握りしめていた。
「…エミリーはなれてくれないか」
「え、でも…」
睨むように見下ろすアレックを見たエミリーは、怒っていると分かると真っ青な顔になり、アレックの服を握りしめていた手を放し側を離れた。
「医師、エミリーを頼む…俺は彼と話がある…」
「わ、わかりました…エミリー様こちらへ…」
「……っ」
涙目になっているエミリーを医師に任せたアレックは、ポールへと顔を向けた。
「エミリーの婚約者と聞いて驚かれないんですね、彼女から聞いていたのですか?」
「…いや、妻が亡くなって初めて婚約者がいるのを知った」
「エミリーは貴方に僕の事を話さなかったと言うのですか?」
「ああ…」
「っ…」
ポールは、医師と一緒にいるエミリーを見ると目が合うとビクッと震え目を逸らすエミリーを見て『もう自分の事は愛していないんだ』と思うと婚約者から裏切られ、エミリーが好きなのは目の前にいる姉の夫だと……
「……っ、貴方は…奥さんがいるのにエミリーに手を出したのですか…」
「……」
「何か言ったらどうなんですか」
ガシッと胸ぐらを掴むポールの手は震え怒りがおさまらなかった。
「……君にはすまないと思っている…」
「…奥さんは…知っていたのですか…貴方とエミリーが…」
「……ああ…知っていた…」
「っ…妹が夫と関係を持って貴方の奥さんは何も言わなかったのか!?見て見ぬふりをして貴方の奥さんは何も思わなかったのか?」
ガシッとポールの手を握りしめたアレックは声をあげた。
「妻の事を悪く言うのはやめろ…俺とエミリーに言いたくても俺が妻を寄せ付けなかった…怒りをぶつけたいのは妻の方なんだ…」
アレックは胸ぐらを掴むポールの手を握りしめ震えていた。
「……いまさら夫面ですか……奥さんが亡くなって何もかも手遅れだったと顔に出ていますよ…」
「……」
「…はぁ…貴方を殴り倒そうと思いましたがやめます…」
「…気がすむまで殴ればいい…」
「はっ、イヤですよ。親族から何を言われるか…憎い相手ですが貴方は侯爵ですから…」
「…爵位は関係ない、俺は君の婚約者を奪ってしまった…」
「……彼女をどうするのですか?」
「……妻として迎える…彼女は妊娠している…」
「……」
ポールはアレックの服を握りしめていた手を放し、苦笑いを見せていた。
「楽しみです。生まれて来る子供が貴方に似ているのか…僕に似ているのか…」
「!!」
アレックはポールを見て目を見開いていた。
「子供が貴方に似ていたら良いのですが…僕似だったらすみません」
「……もし、君に似ていたら…」
「…貴方と彼女で決めてください…」
ポールはアレックの側を離れ医師の側にいるエミリーの元へ歩き出した。








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