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真実を知ったとき…②

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「……エミリーさんの様子を見てきます…」
「……」
アレックは父親を部屋に残し、ソフィアの部屋を出るとエミリーの部屋へと入った。
「……」
「あ…エミリー、アレックさんよ」
「……グスッ…」
涙目で母親と一緒にベッドの上に座るエミリーをアレックはじっと見ていた。
「……エミリーさんと二人になりたいのですが…」
アレックは母親に声をかけ頷き部屋を後にした。
部屋の中では、ベッドの側に来たアレックと下を向いて涙目になっているエミリーと二人になった。
「……婚約者がいる事を何故言わなかった」
「……初めて屋敷へ来た時に話をするつもりだったの、でも貴方の顔を見ると言えなくて、次に屋敷へ行った時に話そうと…後から話そうと思うと言えなくなってしまったの……貴方の事が好きだったから、結婚式の日から初めて会った時から貴方の事が忘れられなくて……でも、貴方はお姉様の旦那様だったから…」
アレックは、じっと話を聞きエミリーはアレックの顔をチラッと見て怒っている様子でもないように見え、そのまま話を続けていた。
「そんな時に、私の縁談の話が来たの…伯爵の彼とも何度も会って彼となら貴方の事を忘れさせてくれると思ったの…でも、結婚すれば貴方にも会えなくなると思って…結婚式までには半年もあったから、貴方との思い出を作りたくて通い続けたの……お姉様と貴方の生活を見て、貴方がお姉様を避けているのを見て私は貴方に近づいたの」
「……」
アレックは手を握りしめエミリーの話を聞いていた。
「私を受け入れてくれた時は凄く嬉しくて…お姉様ではなく私を選んでくれた貴方から離れる事が出来なくなったの…だから私は貴方が屋敷にいる日には通い続けたの…そして、私達の赤ちゃんを授かったわ」
エミリーはお腹を擦り笑みを見せていた。
「貴方がお姉様に離婚の話をしてくれた時は嬉しくて、私は貴方の隣にいてもいいんだと思うと、彼には婚約破棄を伝えたらそれでいいと思ったの……お姉様が亡くなったのは悲しいわ…でも、もしかしたらこの子がお姉様の生まれ変わりだと思えば……」
「……話はそれで終わったのか?」
「え?」
アレックはエミリーの腕を掴み一緒に部屋を出た。
「い、痛いわ、突然どうしたの?」
アレックはエミリーを連れソフィアの部屋に入った。
「エミリー!?」
「お話は終わったの?」
両親はベッドの側に立ちアレックはエミリーを連れソフィアの側に来た。
「今話したことを全部彼女の前で言うんだ」
「え!?」
エミリーは目を見開いてアレックを見た。
「……そ、そんな事言えないわ!お姉様は死んでしまったのよ」
「だから、生きている俺達が償うんだ」
「!?」
「…何があったのだ?お前達……」
両親はアレックとエミリーに何かあったと思い、アレックはエミリーが話したことを両親に話をした。
「……っ、エミリー……お前は……」
「……どうして…そんな事が言えるの……」
両親はエミリーを見て肩を落としていた。
「私は、思っている事をアレック様に話しただけなのに何故私が悪いみたいに言うの?アレック様がお姉様を死に追いやったじゃない……あ…」
「……」
エミリーは、夫になるアレックと両親から責められている事に納得いかず、姉の死をアレックのせいにしていた。
「エミリー、お前は……」
「私を責めないでよ!赤ちゃんに悪いわ」
「お前は、何かあると子供を盾にするのか?!」
「お姉様、起きてよ!お父様が私に怒るのよ」
エミリーはベッドに眠るソフィアに助けを求めていた。
「……妻の死は私のせいだ…エミリーさんを責めないでください…」
アレックは父親に頭を下げソフィアの死は自分のせいだと言った
「アレック様……」
「…しかし……」
「エミリーさんの婚約者の方に謝罪をしたいと思います…そして、式の費用に披露宴の費用等は私が責任を持ってお支払いいたします……」
「「!!」」
両親はアレックが全額支払うと言った事に驚いていたが、内心のところ安堵していた。
「……私達は助かるが…」
「私は納得いかないわ。どうして、アレック様がお金を払わないといけないの?婚約破棄の書類だけでいいでしょう?」
「君は黙っていろ!」
ビクッと驚いたエミリーは、アレックの険しい顔を見て下を向き静かになった。
「……妻の葬儀は私の方で埋葬したいのですが…」
「…葬儀はお願いするが…娘は私達の所へ帰して欲しい…君と娘は寄り添う事はなく、君は妹のエミリーを選んでしまった…」
「……」
「夫と実の妹に裏切られた娘の魂は安らぐ事が出来ない…娘は私達の所へ帰らせてくれ」
両親は涙を流し冷たくなったソフィアの顔を触っていた。
「……わかりました…」
アレックは苦痛な表情で両親に頭を下げていた。
コンコン!
「…旦那様、医師様がお見えです…」
「わかった…医師が来ますので…妻と二人になりたいのですが…」
『妻』と呼ばれ顔を上げたエミリーは、自分の事だと思ったがアレックはソフィアをじっと見ていた。
「アレック様…?」
「……ご両親と一緒に部屋を出てくれ」
「……っ」
エミリーは不機嫌な顔を見せ両親と一緒に部屋を出た。
アレックは今日一日でエミリーの事を知った。
「……君が死んでエミリーを知ることになるとは思いもしなかった…」
アレックはソフィアの頬を触り唇を重ねた。
「息を吹き込めば君が生き返ってくれたら……」
アレックは涙を流しソフィアの冷たい唇を重ね続けた。
「……今になって君が恋しいと思うなんて……」
ソフィアの胸に顔を埋め心臓の音を聞いていたが動く事はなかった。
「……ソフィア、俺はエミリーを妻に迎える…君の代わりに仕事も与える…侯爵夫人になるんだ我が儘は許さない。君の償いをしてもらわないと…」
アレックは、ベッドから離れると棚の引き出しからハサミを持ちソフィアの髪の毛を一房切り落とした。
「……君の物が何も持っていないんだ…」
アレックは切り落としたソフィアの髪の毛に口付けをして妻の最後の姿を見送った。






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