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手紙の内容を確認した総隊長が考え事をして手紙の差出人を思い出していた。
「……ルィーズ・ホルン…確か昨年ホルン伯爵が病死したと聞いた事がある…その貴婦人とはいつから知り合いになったのだ?」
「昨年城内を迷われている姿を見まして、それで私が声を掛けまして、道案内をした時から城内に来られた時は挨拶をするように成りました。」
ユリウス父さんはこれは嘘は言って居ないと総隊長に経緯の話をしていた。
「そうか、ルィーズ夫人の事はユリーナ様も知って居るのか?」
「いえ、ユリーナは多分会った事は無いと思います。お会いしても城内での披露宴や舞踏会の時にお会いしただけかと思います。」
「……そうか…このお茶会のお誘いはどうする?ユリーナ様とは行けないだろう……」
「私がルィーズ夫人にお会いした時に御断りするつもりです」
「…そのほうが良いだろう…お前も貴婦人達と余り仲良く成らないほうが良いだろう、貴婦人達と会っても余り話をするな挨拶程度にしておけ」
「…挨拶程度にですか?…しかし話し掛けられる事が殆どなので…」
「……もうお前はユリーナ様の夫では無くなった。今度からはシルビア様の夫になる。婚約はしていなくても約束されているからな、城内で貴婦人達と話をしてみろシルビア様がどう思われるか今までお前は城の外の生活をしていた。今度は城の中だ!
シルビア様が居ることを忘れるな」
「……」
ユリウス父さんは総隊長の話で自分は今シルビア王女の監視の中にいるように聞こえ悪く言えばシルビア王女の籠の中に居るのだと…今日ユリーナ母さんから結婚の許可を貰った後のシルビア王女の自分に対する執着がありすぎる事に気付いた
「ユリウス…お前のその顔を見ると既にシルビア様から何を感じ取ったようだな……シルビア様はお前が初めての相手になる、今まで他の男性との恋愛はした事も無い方だ。お前と貴婦人達と一緒に居るとどう思われるか…お前もその事を考え城内の生活をする事だな」
「……」
ユリウス父さんは総隊長からこれからの生活に自分の自由が無いように聞こえ寒気を感じていた。
「ユリウスその手紙私が預かって置く」
「え?」
「香水が着いた封筒を持って見ろシルビア様が怒るのが目に見えて来るお前が落ち着くまで私が預かって置く」
「…御願いします総隊長……」
ユリウス父さんは貴婦人からの手紙を総隊長に渡した。
「これからはシルビア様だけの事を考え結婚した後の事も考えておく事だな王位にはまだ先の事かもしれん今の内に王に成るという覚悟をしておく事だな…私からの話は以上だ。」
「……」
ユリウス父さんは総隊長から先の話を聞き言葉が何も出てこなかった。
「ユリウスお前もユリーナ様や子供達の事が気になるだろう私が休日の日に様子を見て来るが、私が屋敷に行っても良いか?」
「え?……総隊長がユリーナと子供達に会いにですか?」
「元は私の責任で、お前達家族をバラバラにしてしまった…ユリーナ様と別れたとしてもお前はまだユリーナ様の事を想って居るのだろう?お前の代わりに私が様子を見に行こうそれで良いか?」
「……お、御願いします総隊長……」
「よし、分かった。お前も早く戻ると良いシルビア様が待っているぞ」
「……はい」
ユリウス父さんは総隊長と話を終え部屋を出た
これから先自由に外に出る事も出来ない事がユリウス父さんを悩ませていた。それにシルビア王女からも人との接する事も簡単な事では無い事も思い知るかもしれない…
「具合いでも悪いのですか?ユリウス様…」
ユリウス父さんは考え事をして廊下を歩くと少し離れた場所から貴婦人の声が聞こえた。
「…ルィーズ……」
ユリウス父さんは何度もルィーズ夫人と会って居るため呼び名が自然に「様」を付けなくなり、そのままの呼び名になっていた。
ルィーズ夫人は25歳で最初は妹のような存在で会う度に夫妻のような感じになっていた。
「ふふっ、手紙は読んで頂けましたか?」
「手紙は城に持ち出さない約束をしたはずだよ、君の手紙が総隊長に渡りおまけに手紙を読まれたんだ…生きた心地がしなかたよ」
貴婦人はゆっくりとユリウス父さんの近くに歩いて来た
「わたくしを無視した罰ですわ…クスクス」
「あの時は無視したのでは無いから、ユリーナと子供達が一緒に居たんだよ」
城に行く途中に城下町で手を振っていたのが、ルィーズ夫人だった。
「あら、ユリーナ様とお子様方もご一緒でしたの?」
「…業とらしいね…馬車の中が見えただろう?」
「そうかしら…ふふっ」
お互い笑い話が続いた。
「……ルィーズ…今日は会えないんだ明日も分からない…」
「…手紙のせいですの?」
「……いや…実は……」
「ユリウス様!!」
少し離れた廊下辺りから怒る声が聞こえ、ルィーズ夫人は後ろを振り向いた。
「……シルビア様…」
「シルビア様?…王様の……」
シルビア王女は顔が怒っている様に見え2人の側に歩いて来た。
「…どなたですの?ユリウス様」
「え、ああ、ホルン伯爵の夫人だよ」
「初めましてシルビア様ルィーズ・ホルンと申します」
ルィーズ夫人はドレスの両端を手で持ち貴婦人の礼をした
シルビア王女はルィーズ夫人をジロジロと見定めユリウスに問いかけていた。
「何を御話なさっていましたの?」
「何をと……ただの挨拶ですが…」
「ただの挨拶には見えませんでしたわユリウス様が笑っておられましたもの」
「え、いや、笑顔で挨拶をしないと失礼なので…」
「…ユリウス様が…私以外の方と笑顔を見せるなんて…うぅっ…」
シルビア王女は目に涙を溜め始めユリウスは慌ててシルビア王女を抱き締めていた。
ルィーズ夫人はユリウス父さんの行動を見て驚いていた。
「…王様達の御部屋に戻りましょうシルビア様」
シルビア王女はユリウス父さんの腕の中で頷いた。
ルィーズ夫人は何故ユリウス父さんがシルビア王女を抱き締めているのかも分からずただ驚くだけで、ユリウス父さんはシルビア王女と一緒に歩き出し片手でルィーズ夫人に合図を出していた。
《明日いつもの場所で》
いつもの場所とはユリウス父さんが仕事で外を出る時城下町のわき道にルィーズ夫人が乗る馬車が待機して待っている事だった。
ルィーズ夫人はただ2人の歩く姿を眺めていた。









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