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「……何を言っているんだショーン、誰もお前達の事を白い目で見る訳がない…お前達は私の子供だ。お前達の母様と私の子供達だ。誰も文句は言わせないよ、何かを言われたら私に話をすると良い。だから安心してお前達はお城に住むと良い」
ユリウス父さんは城での生活を安心させるためショーン兄を落ち着かせた。
「……母様は知っているの?父様とシルビア様が結婚する事」
「……ああ、知っているよだからお前達に話をしたんだ」
ユリウス父さんはカップを手に取り紅茶を飲み始めた。
「……御父様とシルビア様はいつ御結婚するのですか?」
エミリー姉が珍しくユリウス父さんに結婚の日取りを聞いていた
「まだ、そこまでは決まってはいないよ、成るべく早く結婚したいと思っている。母様をお城へ連れて行かないと結婚は出来ないんだよ…だから早く母様に許しを貰わないと」
「旦那様奥さまはまだ御話しが出来る状態では御座いません、精神的に病んでおられます。お城へはまだ当分無理で御座います」
「病を治すのが医師の仕事だろう、早くユリーナを治すのだ。城に連れて行く日が長引くだろう…シルビア様との結婚が遅くなる」
「…旦那様……」
ユリウス父さんはシルビア王女との結婚で頭から離れず病んでいるユリーナ母さんに治癒を急がせていた。
ユリウス父さんは医師様にユリーナ母さんを早く治すようにと回復を急がせた。そして自分に治癒能力がある事を思い出した。
「…待て……私が治そう私には治癒能力がある…私が治せば明日…いや今からでも城へユリーナを連れて行けるはず…」
「旦那様!?」
「父様?母様は今ご病気なのですか?」
ジェーン兄がユリーナ母さんの事を聞きまさか病気になっているとは兄姉達は思わなかった。
「……父様とシルビア様の話を聞いて驚いただけなんだよ、父様が母様を見てあげるから…」
ユリウス父さんは座っていた椅子から立ち上がりユリーナ母さんの部屋に向かおうとしていた。
カチャ!
ユリウス父さんの前にユリーナ母さんとメイド長が部屋の前に立っていた。
「……ユリーナ…」
「「「「母様!!」」」」
兄姉達はテーブルにある椅子を降りユリーナ母さんの所へ駆け出した。俺はルカリオ兄にユリーナ母さんの側に行く?と聞いたが今は良いと言ってユリーナ母さんの方を見ていた。
母親が居る事でこんなにも違うものなのか…と、皆笑顔が戻っていた。
「……心配を掛けました。ごめんなさいね皆…母様は大丈夫ですよ」
ユリーナ母さんは兄姉達の顔を見て微笑んでいた。
「リンちゃんはどうしたの?姿が見えないようね」
「リンは泣き疲れて寝てしまったよ」
ショーン兄がユリーナ母さんにリン姉の事を話をして「悪い母様ね…」と一言呟きユリウス父さんの顔を見ていた。
「……旦那様先ほどから医師様を困らせて何を考えておりますの?少しは落ち着きましたらどうですの?」
俺はユリーナ母さんに驚いた。部屋に居たときとは別人の様でユリウス父さんも驚き戸惑っている様子だ。
「…私は…医師を困らせている訳ではなく、ユリーナが伏せっていると聞き、私が治癒能力を持っているので今からユリーナの部屋に行く所だったんだよ」
ニコッと笑顔で話し、ユリーナ母さんを見ていた。
「…旦那様治癒能力をお持ちなのですか……今は綺麗な顔ですわね。何故今まで頬の傷をそのままに為さっていましたの?子供達がどれ程心配をしていた事か…」
「…す、済まないと思っている…私も傷を治す事を忘れていたんだよ」
「……」
ユリーナ母さんは「ふぅ…」とため息を吐き話を続けた。
「……旦那様は私の意志を無視して無理矢理お城に連れて行く気で御座いますか?今から御城に行きましても皆様の御迷惑に成ります。それにもうすぐ夕食で御座います…今夜は子供達抜きで御話がしたいと思います。医師様にメイド長も宜しいですか?」
「分かりました奥様」
「はい、奥様」
「宜しいですね、旦那様」
「……ああ…」
ユリウス父さんはユリーナ母さんの一言で圧され何も言えずにいた。
「ショーンちゃん皆を部屋に連れて行ってあげて、夕食の準備があるからお願いしても良いかしら?」
「はい、分かりました。母様」
ショーン兄はエミリー姉達に一緒に部屋を出る誘いをしていた。
ユリーナ母さんは俺とルカリオ兄の側に来るとルカリオ兄の顔を見て話し掛けていた。
「……ルーちゃん、ごめんなさい…ルーちゃんを泣かせて仕舞いました……ごめんなさい……」
ユリーナ母さんは目に涙を溜めルカリオ兄に謝っていた。
「謝らないで母様、母様は何も悪くないのに…」
「……にぃ」
ルカリオ兄は涙を流しユリーナ母さんに抱き締めていた。
俺は部屋の扉の前に黙って立っているユリウス父さんを見て「泣いているユリーナ母さんとルカリオ兄の気持ちが分からないのか!」と、言ってやりたかった。
ユリウス父さんはそのまま部屋を出て行った。











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