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俺がユリウス父さんに抱き抱えられてまだルカリオ兄の部屋に着く前の事だ。
「カイ達遅いな…途中でメイド達に捕まったとか?……それともお風呂で長風呂も考えられるな…」
ルカリオ兄は1人部屋の中で俺達の帰りを待っていたようで、朝食の為に部屋に向かわなくてはいけなかった。
コンコン!
「ルカリオ坊っちゃまただいま戻りました。」
メイドのカトリアさんが扉を叩き戻った事を知らせた。
「お帰り2人とも遅か……!?」
ルカリオ兄が扉を開け俺達を出迎え、そして体が固まり驚いていた。
「御早う、ルカリオ!」
「……と、父様が何故…」
「…ルカリオ朝の挨拶は?」
「……お、御早う御座います…父様……」
ルカリオ兄は俺を抱き抱えているユリウス父さんを見て驚きメイドのカトリアさんの方を見た。
「…あ、カイト坊っちゃまと御話をしたいとの事で、ご一緒に御風呂にお入りに成られたそうです。それで御話が長くなりましたとの事で……」
メイドのカトリアさんは話の途中俺の方を向いていた。
「……っ」
「……カイトをベッドに眠らせたいのだけど、ルカリオのベッドで良いかい!?」
ルカリオ兄は黙ったまま声も出せず、その様子を見ていたユリウス父さんは、黙ったまま俺をルカリオ兄のベッドに体を寝かせそしてメイドのカトリアさんに話し掛けた。
「すまないが、暫く席をはずして貰っても良いかな?」
「あ、はい」
メイドのカトリアさんは部屋を出て、ユリウス父さんは椅子に腰を下ろし、黙ったまま立っているルカリオ兄の顔を見ていた。
「……カイトがお風呂場へ行くのを見掛けてね、親子でお風呂に入りたくて、それで長風呂になってしまったんだよ」
ユリウス父さんは話終えるとニコッと笑みでルカリオ兄の顔を見ていた。
「……嘘を付かないで下さい父様、カイを父様の身勝手な事で振り回さないで下さい」
「……どういう事かなルカリオ…」
「……僕は知っています。父様が今のこの姿のカイに何をしたのかを……」
ユリウス父さんは、俺との関係をルカリオ兄が知っていると聞き目を見開いていたが、直ぐにいつもの表情を見せていた。
「さっきの話も嘘でしょう、親子でお風呂に入りたいって……僕達兄弟は、父様と一緒にお風呂に入った事は有りません。
いつも父様は母様を優先にして、僕達兄弟は1度も父様とお風呂を一緒に入った事はありません。」
「……」
ルカリオ兄は、本当はユリウス父さんとお風呂に一緒に入りたい、他の兄弟達も同じ気持ちで、でも皆言えず父親と一緒に入らない事が当たり前になってしまった。
ユリウス父さんは椅子に座っていた腰を上げ、下を向いているルカリオ兄を見たあと、扉の前に立ち話し出した。
「……カイトが目を覚ましたらメイドにルカリオの部屋に朝食を持たせなさい。ルカリオも一緒にカイトと朝食を取ると良い…父様は城での休暇を貰いに行った後、連絡をするからそれまで部屋でカイトと待って居なさい」
ユリウス父さんはルカリオ兄に伝え終えると部屋を出て行った。
ルカリオ兄はベッドの上で眠る俺の頭を触り涙を流していた。
「……カイ……カイ……」
父親から弟を守る事も出来ない無力な自分に涙を流した。







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