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メイドのカトリアさんが俺の存在を知っているメイド達に騒ぎを起こさないように伝えに行き、ルカリオ兄は今から夕食があるため家族の待っ部屋に向かった。
1人ルカリオ兄の部屋の中に居る俺は、大きな窓の外の景色を見ていた。夕日に沈む太陽の光が見え、俺はこれからどうすればいいのか…思い悩んでいた。
今日の出来事がまるで嘘のようで、朝は家族皆でワイワイと騒ぎユリウス父さんが勇樹があの森に来ることを信じ、普通に兄弟喧嘩をして、俺は勇樹を許すつもりでいた…ユリウス父さんとユリーナ母さんはこの国では夫婦だから、夫婦の時間はあたり前だ。
赤ん坊の俺が文句を言うのはおかしいと思った。
だから、勇樹にもし、夫婦の時間が欲しい時は赤ん坊の俺をメイドか誰かに預け、ユリーナ母さんの部屋から俺を連れ出して欲しいと、お願いするつもりだった……。
だが、まさかこんな事が起こるとは思いもしなかった。
……俺は勇樹から…ユリウス父さんから、俺との約束を破った事が許せなかった。
俺は怒りの余り自分の手を痛め付け…ボロボロに砕かれた想いが兄弟仲良くまたやって行く自信が無かった。
俺はルカリオ兄が傷の手当てをしてくれた右手を、ギュッと握り締めただ眺める事しかなかった。
向こうでの生活はこれ程まで無かった。勇樹が優花さんと結婚した時は辛い事もあった。だが、子供が生まれ俺に姪と甥が出来た時は素直な気持ちで嬉しくて、子供達も俺に良く懐き遊んでいた事を思い出す。優花さんとも仲は良かった。
俺と勇樹と優花さんと良く笑い語り合って、俺達は仲が良かった
その時の俺は、勇樹と優花さんの夫婦の時間を気にもしていなかった。
多分俺が実家を出て独り暮らしを始めたのが、良かったのかもしれない…勇樹の家族と離れて生活をする事でこんなに、弟を許せ無い思いはしなかっただろう……
俺は薄暗くなる部屋の中でボーと窓の外を眺めていた。
「コンコン…カイト坊っちゃま、私です。カトリアです」
俺はルカリオ兄付きのメイドが部屋に来た為、部屋の鍵を開けカトリアさんを中に入れた。
「御待たせ致し…カイト坊っちゃま御部屋が薄暗く成りましたね
電気をお付けしますね」
メイドのカトリアが、天上のシャンデリアに人差し指を向けてピッと動くとパッ!と明かりが付き思わず俺は「おおおお!」と驚きの声を出してしまった。
「カトリアさんさっきのは魔法ですか?始めて見ました。」
俺は天上を見上げ笑顔が止まらなかった。
「え、あ、はい、電気を付ける時は魔法を使います。メイド達は全員電気の明かりは使いこなさなくてはいけません。」
メイドのカトリアさんは何故か頬を赤く染め笑顔で答えてくれた
部屋の明かり付けはメイドの仕事何だろうな…「電気」の呼び名は久しぶりに聞いて、向こうの事を思い出すが、まさか電気と言うとは思いもしなかった。
「カトリアさんこの明かりの事を電気と呼ぶんですね……」
「はい、旦那様が明かりを付ける時は電気と呼ぶようにと、申されていましたので、皆電気と呼ぶようになったのです。」
「……」
勇樹の奴、明かりの呼び名を灯火と言いにくいと思ったのか、それとも無意識に電気と言ってしまったのか…この国に生まれ、向こうの生活語を使っているのではと思いながら、メイドのカトリアさんが持って来てくれた夕食を頂く事にした。






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