転生してまで俺の後を追いかけるのは止めろ～父様と僕は兄弟でした～

２６

俺は今小さなルカリオ兄の部屋に向かっている。
この家と言うか屋敷と言ったほうがいいのか結構広い、赤ん坊のカイトの時は部屋に出たことが無かったからな…あ、風呂に入る時に部屋を出たな直ぐ近くだが…しかし、さっきから擦れ違うメイドに使用人だろうか…凄く見られているから歩きずらい…黒髪はマズかったかな……怒りの余り考えずに部屋を出たからな……
ふと…俺は下から視線を感じ何だ？と思いチラッと見た。
ルカリオ兄が俺を見ていた様で、俺が見るとビクッと小さな体が動き視線を剃らしていた。
「顔に何か付いてる？」
「え！いえ、ごめんなさい…僕の知っている人に少し似ていたので…ごめんなさい。」
ルカリオ兄は俺に謝ると頬を少し赤くなっているのが見えた。
暫く廊下を歩くと１つの部屋から数人の声が聞こえてきた。
「今日のメイド長、凄い剣幕で奥様に怒鳴っていたから私ビックリして、奥様の部屋の近くの廊下を走って通り過ぎたわ」
「あーっ、知ってる～っ！何でもカイト坊っちゃまをほっといて旦那様と一緒にヤってたそうよ」
「え～っ、嘘っ、信じらんない。」
「数日前の事を思い出すわ…夜中に声が……私達寝不足になったものね。逆に羨ましいわ旦那様と奥様が！」
「やだもー思い出したじゃない！」
部屋の中から女性達の黄色い声が聞こえ、ユリウス父さんとユリーナ母さんの事を話している事が分かった。
ルカリオ兄は話し声の部屋で立ち止まり、暫く黙り込んだまま、扉にノックをした。
「は～い、…え！あ、ルカリオ坊っちゃま！？」
ルカリオ兄が部屋にノックをしたのはメイド達の部屋のようだった。メイド達はルカリオ兄を見て驚き自分達の話を聞いていたのかも？と皆顔が真っ青になっていた。
「……ル、ルカリオ坊っちゃまどうしました？」
「……ケガをしたのでお薬を貰いに来ました…ごめんなさい、さっき聞こえたけどカイに何か合ったの？さっき母様の部屋に行ったら、父様の部屋で寝ているとしか聞いて居ないから……」
メイド達はお互い気まずそうにして、話していいものか戸惑っていた。
「誰にも言わないから、教えてください。」
ルカリオ兄の真剣な顔を見て１人のメイドが話し出していた。
「……今日のお昼過ぎにカイト坊っちゃまがお熱で、倒れましてそれで奥様と旦那様は一緒にその場におりましたが……あっ、ですが今はカイト坊っちゃまは元気だと聞きましたので、大丈夫で御座います。」
メイドはルカリオ兄に心配掛けないように俺の安否を伝えた。
「……そうですか…カイにそんな事が……」
ルカリオ兄は下を向き黙ったまま立って、１人のメイドが慌てて薬箱を持って来たがルカリオ兄は下を向いたままで、後ろでその様子を見ていた俺がメイド達の前に来た。
「薬箱貸してくれますか？」
俺が突然来た為メイド達が驚いた顔をして慌て出した。
「え？あ？その…は、はい、ど、どどどうぞ……！？」
「有難う、借りていきます。に……行こうか…」
俺は薬箱を持ちルカリオ兄の小さな手を取り一緒に歩いた。
「「「「「きゃ～～～～っ誰！？」」」」」
何故かメイド達の黄色い声に遠くまで聞こえビクッとしたが、今はルカリオ兄が心配だった。
俺はルカリオ兄と一緒に歩いてはいるが、ルカリオ兄の部屋が
分からない……メイド達の話を聞いてから黙ったまま歩いているルカリオ兄にどうしたら良いのか分からず、俺が「カイト」だよと言って信じてくれるのかも分からない……俺は歩いている足を止めルカリオ兄と同じ目線で腰を下ろし、持っていた薬箱を床に置きルカリオ兄の小さな両手を握りしめた。
そして俺は目を閉じ、ルカリオ兄の手に「カイト」の気を流し込んだ！ルカリオ兄は驚き俺の顔を見ていた。
「……カ……カイ……？！」
俺はニコッと笑いそしていっも呼んでいる呼び名で答えた。
「にぃ……！」
俺の呼ぶ声にルカリオ兄の目からポロポロと涙が流れ、俺に抱き付いてきた！
「カイ！カイ！カイ～～ッ！！」
俺は小さなルカリオ兄の体をギュッと抱き締めていた。