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俺はいつの間にかユリウスの腕の中で眠ってしまったらしく、いっもの俺の空間に来ていた。
空間の景色が俺が以前自分で造り出したと思う緑の森の中で、俺は立っている。
俺が来ている事が分かったのか、森の奥から光の玉がふわふわとやって来て俺の頭の上に乗って来た。
「ハハハ、俺が来た事が直ぐ分かるんだなもうすぐ勇樹も来るはずだがまた遊んでやってくれ」
光の玉は俺の頭から離れぐるぐると回り始めた。
勇樹との追いかけっこは、光の玉が圧勝で勇樹は一度も捕まえた事がなかった。
完全に勇樹は遊ばれている感じだ。
光の玉は俺の側から離れると森の奥に入り、暫くして赤い丸い物を持って来て俺の手に渡した。
よく見るとあの妖精の森にあった赤い実と同じ形をしていた。
俺はこの森でも実が出来るのか?と思い光の玉が渡した赤い実をひとくち食べて驚いた。
あの妖精の森と同じ赤い実の果物がハンバーガーショップのフライドポテトの味がしたから、俺が造ったこの森でも食べる事に驚きが隠せなかった…。
俺は木に腰を下ろしポテトの味がする赤い実を食べていた。
そして子供の頃を思い出していた…「家族4人で良くハンバーガーショップに行っていたな…勇樹が始めてビッグサイズのハンバーガーを頼んで必死で食べて、口の回りがソースでベタベタになり母さんが慌てて拭いていたっけ……」
俺は赤い実を食べながら涙がボロボロと流れ、父さんと母さんの事を思い出していた。
「父さん…母さん……ごめん…ごめん……」
俺は息子の俺が先に死んでしまった事に謝る事しかできず、ただこの生まれ変わった世界で、父さんと母さんが向こうで幸せに暮らしてくれる事を祈るしかなかった。
俺が泣いているのに気付いた光の玉が、ぐるぐると勢いつけたように回りフョフョと俺の側に来て、心配しているように見えた。
「ハハ……ごめんな…お前にも心配させてしまった様で、向こうで生きていた頃を思い出して、残して来た両親の事を考えたら泣いてしまったな…カッコ悪いな」
俺は光の玉に話した後黙り込んでしまった。
そして頭に触る気配と声が聞こえて来た……
《……早く…オレ……を…思いだ……せ…》
俺は何か声が聞こえた気がして辺りを見回したが誰もいない…緑の森と光の玉と俺だけで、勇樹かなと思ったが声が違う…俺は光の玉を見たがまさかな…と思い涙をグイッと拭き取ると……
「兄ちゃん何で泣いてんだ?お前兄ちゃんに何した!」
勇樹が勘違いで光の玉が俺を泣かしたと思い、また追いかけっこが始まった。
俺はさっきの声のようなモノを気にせず、光の玉と勇樹のかけっこを笑いながら見ていた。




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