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焼き菓子

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僕は、カイル王子がメイドに王様の騎士でもある近衛を呼びに向かわせた事に少し驚いてしまった。
「ロイ君、驚いた顔で俺の方を見ているけど『何故近衛を呼ぶんだ?』って言いそうな顔だよ」
「え!?」
ニコッと笑顔を見せるカイル王子に、僕は(そんなに顔に出ているのだろうか?)と手で頬を触っていた。
「近衛を呼んだのは闘技場にいるロイ君の先生に知らせようと思って近衛を呼んだんだ」
「…僕の先生ですか?」
「うん、騎士学校の先生に俺と一緒に居ることを知らせればロイ君も気にする事も無いと思ってね」
「あ、有り難う御座います…」
「先生の名前はなんて言うの?」
「シャーリス先生と言います…騎士学校のバッチを付けていますので分かると思います。」
「シャーリス先生だね。近衛が来たら言っておくよ」
「はい」
(近衛騎士の人を使いに闘技場まで向かわせるとは思っていなかった…でも、良いのかな…王様の騎士を先生に知らせる為に向かわせて……)
僕は紅茶の入ったカップに両手で支えボーとしていた時、僕の目の前に甘い匂いがする焼き菓子が向けられていた。
「え?」
「ロイ君、甘いのは好き?」
「え!?は、はい……」
「良かった俺も甘いの好きなんだ」
「えっ、意外……あっ!す、すみません」
僕は思わず声に出してしまって慌ててカイル王子に頭を下げた。
「…ロイ君、顔上げて」
「あっ…は……いっモゴッ!?」
焼き菓子を僕の口の中に押し込めるように入れ、笑顔を見せるカイル王子に僕は驚きの余り顔が熱く成っていた。
「美味しい!?」
「……」
コクンと僕は無言のまま頷き、手を口に押さえてモゴモゴと焼き菓子を食べるのに必死だった。
(い、いきなり口の中に焼き菓子を押し込んで来るから驚いた……少し大きめの焼き菓子だから口の中がいっぱいだ!)
「この焼き菓子、見習い料理人が作っているんだ」
「え?!見習い料理人ですか?」
「うん、数ヵ月前俺が厨房を覗きに行った時、料理人達が休憩していたんだ。で、みんな同じ焼き菓子を手に持っていたから俺も貰って食べたんだ。みんな驚いた顔で俺に焼き菓子をやって良いのか迷っていたけどね。その焼き菓子が俺好みの味で美味しかったから誰が作ったのか?って聞いたら見習いだと聞いて驚いたんだ。料理長だと思っていたからね、その見習い、お菓子作りが好きで仕事が終わった後に作っていると聞いたんだ。それからは見習いを俺専属としてお菓子を作って貰っているんだ」
「……そうなんですか…」
(でもカイル王子が甘いのが好きだと聞いた時はそれ以上に驚いてしまって、お菓子を作る専属を持ったと聞いたのにはもっと驚いてしまった…)
「ロイ君、もう一枚」
「え!?」
ニコッと笑顔で僕に焼き菓子を向けるカイル王子に戸惑ってしまった……






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