上 下
28 / 88

第三騎士団ライト・グロース⑭

しおりを挟む
「今日も任務前に会えなかった……本当に俺を避けているのだろうか…でもあの日はいつものライトだった……」
毎朝ライト騎士はフレック騎士に会いに来ていたが、数日前からフレック騎士はライト騎士に会えずにいた。
その頃ライト騎士は城の庭園でカイル王子を待っていた。
「また来ちゃったな…昨日もその前も早く来て待っていたんだけど来なかったな……カイル王子」
木々の茂みに隠れたように体を隠したライト騎士はカイル王子が来るのを待っていた。
「はぁ…今日も会えないかな…あの時は偶然にカイル王子がこの庭園と思う場所で本を読んでいた時だったから、毎日この場所に来れば会えるかなと思って来ているのに…会えないなんて……
初めてカイル王子を見た時はイヤな王子だと思っていたのに…僕カイル王子の事を……」
ポッと頬が熱くなるライト騎士は手で頬を触りカイル王子の事を考えていた時だった。コッコッと歩く足音が聞こえいつものテーブルの椅子に座るカイル王子がいた。
(!!カイル王子が来てくれた)
ライト騎士はポポポと顔が赤くなり、木々の隙間から見る姿は男とは思えない仕草をしていた。
「……はぁ…」
(……?)
カイル王子はテーブルに肘をつき手で顔を支えるとボーとしては何度もため息を吐いていた。
(カイル王子どうしたのかな?今日は本を持たずにただボーとしてため息を吐いて…何かあったのかな……でも、思い詰めるカイル王子も素敵だな…)
「お話ししたいな…僕が慰めてあげるのに」
上の空のように黙って座るカイル王子にライト騎士も「はぁ…」と小さく息を吐いていた。

ライト騎士は久しぶりにカイル王子を見て第三騎士部屋に戻る為廊下を歩いていた。
「ライト!?」
前の方からフレック騎士の姿が見えライト騎士は笑顔を向けた。
「フレックさん、おはようございます」
「あ、ああ、おはよう…ライトこんな早くに何処に行っていたんだ?」
「散歩ですよフレックさん」
「散歩?…そうか…」
「僕、戻らないと失礼しますね」
ニコッと笑顔を見せライト騎士がフレック騎士の側を離れた時だった。
「ラ、ライト!…聞きたい事があるんだ」
「聞きたい事ですか?」
首をコテッと横に向けるライト騎士にフレック騎士は「ふぅ…」と小さく息を吐き話し始めた。
「……その…ライトはグロース家の家名なのか?」
(い、言ってしまった…ライトは……)
気まずそうな顔を見せるフレック騎士に対しライト騎士は笑顔を見せていた。
「はい、そうですが僕がグロース家の人間だと聞いて何かあるのですか?」
「えっ…いや何も無いんだが…すまない家名の事を尋ねてしまって……」
「ふふっ、別に良いですよ。僕に兄が二人いますと言った事を覚えていますか?フレックさん」
「ああ、サミエル隊長とジャック副隊長がライトの兄だと……」
「ふふっ、自慢の兄達なんです」
「……」
「あっ、僕この前サミエル兄さんに好きな人がいますと言いました」
「!」
「でも安心して下さい、名前は言っていません。僕とお付き合いしている人の名前を言うとサミエル兄さんが来てしまうんです」
「サミエル隊長が来る?」
「ふふっ、弟と付き合う人が気になるようで兄が認めないとお付き合いが出来ないんです。僕、フレックさんの前に数名お付き合いした人達がいたのですが、サミエル兄さんに認めて貰えなくて別れてしまったんです。困った兄さんなんですよ」
「……」
クスクスと笑うライト騎士にフレック騎士は何も言えずにいた。
「あっ、でもフレックさん安心して下さい。僕、フレックさんと別れますから、あれ?そう言えば僕達ってお付き合いしていました?」
「……は?」
ニコッと別れ話を笑顔で話しをするライト騎士にフレック騎士は呆然としていた。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

Ωの皇妃

永峯 祥司
BL
転生者の男は皇后となる運命を背負った。しかし、その運命は「転移者」の少女によって狂い始める──一度狂った歯車は、もう止められない。

王子様と魔法は取り扱いが難しい

南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。 特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。 ※濃縮版

【完結】浮薄な文官は嘘をつく

七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。 イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。 父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。 イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。 カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。 そう、これは─── 浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。 □『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。 □全17話

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...