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第三騎士団ライト・グロース⑧

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「サミエル兄さん、今帰りなの?」
「ああっ、ライト今日は非番だったのか?」
「うん、さっきまで騎士の先輩と一緒だったんだよ」
「騎士の先輩!?」
サミエル隊長がチラッと後ろを見た時、離れた場所でフレック騎士は木々の後ろに隠れていた為、サミエル隊長に見つかる事は無かった。
「……」
「どうしたの?サミエル兄さん」
「…ふっ、なんでもない今日は楽しんだのか?」
「うん、沢山奢って貰ったよ。ほらっ、この帽子も買って貰ったんだ」
ライト騎士は袋から帽子を取り出しサミエル隊長に被せて見せていた。
「良かったな、良く似合う」
「エヘヘ」
「ライト、今度の奴は本気か?」
「う~ん、優しい先輩だけど少し物足りないかな…あっ!」
パッと手を口に当てたライト騎士はサミエル隊長の顔を見た。
「どうしたライト、一緒にいた騎士の事を俺に隠すつもりだったのか?!」
「……ご、ごめんなさいサミエル兄さん…隠すつもりは無かったんだけど、まだ先輩とお付き合いしていないからサミエル兄さんには話せないと思って……」
「ふっ、まだ付き合ってもいないお前にこんな高価な帽子を買う訳はないと思うが、その騎士はお前との事を考えているだろう」
「えっ、やっぱりそうかなサミエル兄さん、でもまだサミエル兄さんには紹介はしないよ。買い物が出来なく成ったら困るから、それに先輩の他に好い人が見つかるかも知れないし」
「お前を好きになる男は苦労するな」
「えーっ、酷いよサミエル兄さん」
サミエル隊長に笑顔を向けるライト騎士を隠れて木の隙間から見ていたフレック騎士は力が抜けその場で伏せた。
「……ライトが…サミエル隊長と兄弟!?……」
地面に頭を着けてしまう程にフレック騎士は真っ青な顔で体が震えていた。
「……サミエル隊長は、騎士の中でも冷酷だと言われ騎士が酷い仕打ちを受けたと噂がある人だ…まさかライトがグロース家だったとは……家名などお互い話した事など無かった為俺は気にもしていなかった…俺は……俺はどうすればいいんだ…」
両手を拳にかえ地面に伏せるフレック騎士は暫くその場所から動けずにいた。
空の色が夕焼けから暗闇に変わった頃、騎士食堂から夕食を終えたジョエル騎士が自分の部屋へと向かっていた。
(……フレック…食堂に来なかったな…もうすぐ食堂が終わる頃だけど…ライトの奴と一緒なのか……)
とぼとぼと廊下を歩くジョエル騎士の足は重く、いつの間にかフレック騎士の部屋の前まで歩いていた。
「……いつの間にフレックの部屋まで…」
ジョエル騎士は部屋の前で悩んだ末「よし!」と自分に声を掛けフレック騎士の部屋にノックをした。
コンコン!
「フレック、帰ったか?」
カチャッと部屋の扉が開き、目の前に立っていたのはフレック騎士と同室のボム騎士が扉を開けた。
「よっ、ボム……フレックは居るのか?」
「ああ…居るが、もう寝てしまったぞ」
「は?」
ボム騎士はジョエル騎士を部屋の中に入れ二段ベッドの上で丸くなって眠るフレック騎士がいた。
(……な、何かあったのか?あんな頭まで被るような寝方をあいつがするなんて……)
「ボム…フレックから何も聞いていないか?」
「いや、何も言わなかったな飯は食べたのか?と聞いたが『具合いが悪い』と言ってそのままベッドへ潜ってしまった」
「……」
(ライトと何かあったのか?)
「起こすか?」
「いや、そのまま寝かせてくれ、明日また来るよ」
「ああ、分かった」
ジョエル騎士はフレック騎士の寝姿を見た後部屋を出た。
「……」
フレック騎士はジョエル騎士が部屋に入って来た事を知っていた。
ベッドの上で横に成っていたが眠る事が出来ず、フレック騎士はライト騎士の事で悩み続けていた。






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