5 / 88
騎士学校の生活が始まった③
しおりを挟む
あの日からカイルと言っていた人と会う事はなく、数週間が過ぎ僕はあの日の出来事を忘れていた。
「おばちゃーん、手伝いに来たよ~~ふあ~…」
「ト、トム、ヨナさんに失礼だよ。それに名前を呼ばないとダメだよ。御早う御座いますヨナさん、お手伝いに来ました」
「ふふっ、おはよう二人とも大きなあくびだねトム君は、ロイ君トム君今日もお願いね」
「はい」
「ふあ~い」
トムがまだ眠たそうな顔でヨナさんに返事をして、僕達は寮母をしているヨナさんの手伝いにやって来た。
一ヵ月前に女の子がヨナさんと一緒に働いていたようで、騎士達とのお喋りが多く掃除に食事はヨナさんがほとんど一人でしていたと聞いている。ある日女の子は騎士と一緒に城を出て行ったと聞き、今はヨナさん一人で僕達の世話をしてくれている…
寮長が、ヨナさん一人では大変だと話し新人の僕達が交替でヨナさんの手伝いをする事になった。
最初は初めての事が多く、料理なんて作った事もなかったけれどヨナさんから料理を習うようになって楽しいと思うようになった
騎士寮に入り、みんなと同じ料理を食べて会話が楽しいなんて思ったのは初めての事だった。
屋敷にいた頃は、家族で食事をする事は数回ほどで一人で食事をする事が多かった…家族が集まる席に僕の居場所は無かった。
父や兄弟達の会話が弾み、僕に声を掛けてくれる事はほとんどなくて、声を掛けてくれても冷たい声が多く一緒に食事をしても美味しいと思った事は無かった……
「……イ、ロイ!?」
「えっ、痛っ!」
「うあっ、大丈夫か?ロイ、ごめんお前がボーっとしたまま刃物を使っていたから危ないと言おうと声を掛けたんだ。大丈夫か?」
「うん、大丈夫ちょっと指先を切っただけだよ」
「あらあら、珍しいわねロイ君が怪我をするなんてちょっといらっしゃい、傷口を貼ってあげるから」
「大丈夫ですヨナさん、かすり傷ですから」
「良いからいらっしゃい」
ヨナさんから呼ばれ傷口を貼って貰う事になった。
痛いのは兄さんの稽古を毎日のように叩かれていたから、こんな小さな傷は手当てなんて不要だと思っていた。
「手はロイ君達にとって大事なんだから、怪我をしたら直ぐに手当てをしてもらってね。傷口から菌でも入ると大変よ」
ヨナさんは僕の切った指先の手当てをしてくれていた時、ピタッとヨナさんの手が止まるのが見え複数の古傷にヨナさんは僕の手を擦ってくれた。
「……ヨナさん?」
「…こんなに傷に成って……」
「……」
ヨナさんは何も言わず僕の手を擦ってくれた。
「おばちゃん、俺達騎士は毎日傷だらけなんだから手当てなんて要らないよ。なーっ、ロイ!……ロ、ロイ?」
「……ふ……う…」
ポロポロと涙が流れヨナさんの手が暖かくて……僕は暫く泣いていた…涙なんてとっくに渇れていたのだと思っていたのに……
「おばちゃーん、手伝いに来たよ~~ふあ~…」
「ト、トム、ヨナさんに失礼だよ。それに名前を呼ばないとダメだよ。御早う御座いますヨナさん、お手伝いに来ました」
「ふふっ、おはよう二人とも大きなあくびだねトム君は、ロイ君トム君今日もお願いね」
「はい」
「ふあ~い」
トムがまだ眠たそうな顔でヨナさんに返事をして、僕達は寮母をしているヨナさんの手伝いにやって来た。
一ヵ月前に女の子がヨナさんと一緒に働いていたようで、騎士達とのお喋りが多く掃除に食事はヨナさんがほとんど一人でしていたと聞いている。ある日女の子は騎士と一緒に城を出て行ったと聞き、今はヨナさん一人で僕達の世話をしてくれている…
寮長が、ヨナさん一人では大変だと話し新人の僕達が交替でヨナさんの手伝いをする事になった。
最初は初めての事が多く、料理なんて作った事もなかったけれどヨナさんから料理を習うようになって楽しいと思うようになった
騎士寮に入り、みんなと同じ料理を食べて会話が楽しいなんて思ったのは初めての事だった。
屋敷にいた頃は、家族で食事をする事は数回ほどで一人で食事をする事が多かった…家族が集まる席に僕の居場所は無かった。
父や兄弟達の会話が弾み、僕に声を掛けてくれる事はほとんどなくて、声を掛けてくれても冷たい声が多く一緒に食事をしても美味しいと思った事は無かった……
「……イ、ロイ!?」
「えっ、痛っ!」
「うあっ、大丈夫か?ロイ、ごめんお前がボーっとしたまま刃物を使っていたから危ないと言おうと声を掛けたんだ。大丈夫か?」
「うん、大丈夫ちょっと指先を切っただけだよ」
「あらあら、珍しいわねロイ君が怪我をするなんてちょっといらっしゃい、傷口を貼ってあげるから」
「大丈夫ですヨナさん、かすり傷ですから」
「良いからいらっしゃい」
ヨナさんから呼ばれ傷口を貼って貰う事になった。
痛いのは兄さんの稽古を毎日のように叩かれていたから、こんな小さな傷は手当てなんて不要だと思っていた。
「手はロイ君達にとって大事なんだから、怪我をしたら直ぐに手当てをしてもらってね。傷口から菌でも入ると大変よ」
ヨナさんは僕の切った指先の手当てをしてくれていた時、ピタッとヨナさんの手が止まるのが見え複数の古傷にヨナさんは僕の手を擦ってくれた。
「……ヨナさん?」
「…こんなに傷に成って……」
「……」
ヨナさんは何も言わず僕の手を擦ってくれた。
「おばちゃん、俺達騎士は毎日傷だらけなんだから手当てなんて要らないよ。なーっ、ロイ!……ロ、ロイ?」
「……ふ……う…」
ポロポロと涙が流れヨナさんの手が暖かくて……僕は暫く泣いていた…涙なんてとっくに渇れていたのだと思っていたのに……
22
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】


アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる