騎士の成り損ないと言われた僕は王子の騎士(恋人)に成りました

クロユキ

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騎士学校の生活が始まった③

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あの日からカイルと言っていた人と会う事はなく、数週間が過ぎ僕はあの日の出来事を忘れていた。
「おばちゃーん、手伝いに来たよ~~ふあ~…」
「ト、トム、ヨナさんに失礼だよ。それに名前を呼ばないとダメだよ。御早う御座いますヨナさん、お手伝いに来ました」
「ふふっ、おはよう二人とも大きなあくびだねトム君は、ロイ君トム君今日もお願いね」
「はい」
「ふあ~い」
トムがまだ眠たそうな顔でヨナさんに返事をして、僕達は寮母をしているヨナさんの手伝いにやって来た。
一ヵ月前に女の子がヨナさんと一緒に働いていたようで、騎士達とのお喋りが多く掃除に食事はヨナさんがほとんど一人でしていたと聞いている。ある日女の子は騎士と一緒に城を出て行ったと聞き、今はヨナさん一人で僕達の世話をしてくれている…
寮長が、ヨナさん一人では大変だと話し新人の僕達が交替でヨナさんの手伝いをする事になった。
最初は初めての事が多く、料理なんて作った事もなかったけれどヨナさんから料理を習うようになって楽しいと思うようになった
騎士寮に入り、みんなと同じ料理を食べて会話が楽しいなんて思ったのは初めての事だった。
屋敷にいた頃は、家族で食事をする事は数回ほどで一人で食事をする事が多かった…家族が集まる席に僕の居場所は無かった。
父や兄弟達の会話が弾み、僕に声を掛けてくれる事はほとんどなくて、声を掛けてくれても冷たい声が多く一緒に食事をしても美味しいと思った事は無かった……
「……イ、ロイ!?」
「えっ、痛っ!」
「うあっ、大丈夫か?ロイ、ごめんお前がボーっとしたまま刃物を使っていたから危ないと言おうと声を掛けたんだ。大丈夫か?」
「うん、大丈夫ちょっと指先を切っただけだよ」
「あらあら、珍しいわねロイ君が怪我をするなんてちょっといらっしゃい、傷口を貼ってあげるから」
「大丈夫ですヨナさん、かすり傷ですから」
「良いからいらっしゃい」
ヨナさんから呼ばれ傷口を貼って貰う事になった。
痛いのは兄さんの稽古を毎日のように叩かれていたから、こんな小さな傷は手当てなんて不要だと思っていた。
「手はロイ君達にとって大事なんだから、怪我をしたら直ぐに手当てをしてもらってね。傷口から菌でも入ると大変よ」
ヨナさんは僕の切った指先の手当てをしてくれていた時、ピタッとヨナさんの手が止まるのが見え複数の古傷にヨナさんは僕の手を擦ってくれた。
「……ヨナさん?」
「…こんなに傷に成って……」
「……」
ヨナさんは何も言わず僕の手を擦ってくれた。
「おばちゃん、俺達騎士は毎日傷だらけなんだから手当てなんて要らないよ。なーっ、ロイ!……ロ、ロイ?」
「……ふ……う…」
ポロポロと涙が流れヨナさんの手が暖かくて……僕は暫く泣いていた…涙なんてとっくに渇れていたのだと思っていたのに……






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