勇者と闇の魔法使い

クロユキ

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すれ違う二人

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チチチ…ピィピィ……と何処かで鳴く鳥の声がして天高く木々の葉の隙間から射し込む朝日が深く眠りに着いていたショウの瞼に日が射し込んで来るのが分かりその眩しさにショウは目を覚ます事になった。
「……ん…」
微かに木の枝を燃やした煙の臭いが鼻を霞めいつも眠る布団では無いため固い地面で体を横に向き眠っていた為痛い事でも目が覚めふと左手に違和感を感じていた。
体温のある暖かいモノを握り締め柔らかい物ではなくごつごつと固い物を左手で握り締めている事が分かった。
ショウはメガネを外している為自分が手で握り締めている物が分からず左手の指をゆっくりと広げると握り締めていた物がギュッと握り返して来た為ショウは驚き声を出した。
「うあっ!?」
「え、あっ!?」
ショウの声で驚き勇者アランも声を出し驚いていた。
ショウが握り締めていた物は勇者アランの左手を握り締めていたのだった。
勇者アランはショウの隣で剣を地面に突き立て背中を剣で支える形で座り勇者アランの隣ではショウが眠る頭があり左手にはショウの左手を握り締めていたのだった。
勇者アランはショウの声で眠りから覚めショウの左手を放しショウも寝ていた体を起こし「イタタタ」と言った後横になっていた体を起き上げた。
何故勇者アランの手を握り締めそして何故彼が自分の側にいる事が分からず焚き火の番を自分はする事無くそのまま朝を向かえた事にも血の気が引く感じがしていた。
「……あ、あの…アランさん、僕は昨日あのまま焚き火の番をせずに眠って……」
ショウは焚き火の番が出来なかった事で気まずさがあり勇者アランの顔を見る事が出来なかったと言うよりもメガネを掛けていない為ぼんやりと人の影がある事は分かるが勇者アランの顔の表情が分からない為怒って居るのかも知れないと思い顔を上げる事が出来ずにいた。
「えっ、ああ…ショウが起きる気配が無かった為私が焚き火の番をしていたので魔物が来る事もなく朝を迎える事が出来ました」
「……」
勇者アランの声を聞き怒っているようには感じ無かったが何故彼の手を握り締めそして自分が眠る前は焚き火越しの目の前で座っていたのに何故隣に居たのかと、ショウは頭の中で「何故?」の言葉が過り考えるよりも勇者アランに聞いた方が早いと思い彼に聞く事にした。
「……あの…アランさん何故僕の手を握り締めて…それに何故隣に居たのですか?」
「えっ?!ああっ、すみません勝手に手を握り締めて…と言いたいのですが、私の手を握り締めて来たのはショウだったのですよ」
「えっ?……ええっ!?ぼ、僕がですか?……アランさん僕はそんな事はしません」
勇者アランがショウが先に手を掴んだと聞きショウは自分はそんな事はしないと否定始めていた。
「……私が勝手に貴方の手を握り締めていたと思いますか?この場ではっきりと言いますが私は男性の手を握り締めるよりも女性の手を握り締めていたい程です。昨日ショウが眠りに着いた頃にショウが夢で魘され何度も起こしました。でもショウは起きる事も無くそのまま眠りそして私もショウの元を放れようとしましたがショウが私の手を握り締め放さない為私はショウの隣で座る事になったのです。」
「……」
勇者アランの話しを聞いていたショウは自分が夢で魘されそれを見ていたアランが起こしてくれようとしていた。
自分がアランの手を無意識で握り締めそれをアランが自分の手を握り締めたのだと勘違いをしてしまった事でまたアランとの距離が離れてしまった事で気まずさが深まって行くのをショウは感じ取っていた。
「ごめんなさい……アランさん僕は……」
「気にするような事では無いので謝らなくても良いです。
そんな事より早く出発をしましょう、ソルト村で朝食を頂きたいので、それに早く仕事を終わらせ帰りたいです。」
勇者アランの言葉が何故か胸を突き刺す感じを受けたショウは自分の側にある石に手を伸ばしメガネを取り掛け始めた時勇者アランは背を向け顔を見る事も無く二人はソルト村へと向かった。





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