23 / 26
23 ロデリックの葛藤①
しおりを挟む
***
「……大丈夫か?」
今夜の宿へ向かう馬車の中、ロデリックはリンゴのように赤く頬を染めたマージェリーに声をかける。
「だっ、大丈夫です! 元気です!」
そう言って彼女は笑ってみせるものの、何だかぽーっとしているようで。
市場の次に向かったカフェでも、植物園でもディナーの間も、どこか上の空だった。
体調が悪いのではないかと聞くと懸命に否定するし、額に触れても熱はなかったのだが。
あまり心配するとまた謝られてしまうので、ロデリックはそれ以上言うのをやめたが……何だか妙に手持ち無沙汰な気持ちになる。
彼自身も、今日は何かがおかしい。
(思うことを伝えたいだけなんだが、うまくいかないな)
笑っていてほしい。幸せでいてほしい。自分を責めず、許し、肯定してほしい。精神的につらいときには支えたい。
そう伝えたいだけなのだが、なぜか彼女にはうまくできない。
淑女に対してそれなりにスマートな接し方はできるつもりでいた。
だが、今朝からの自身の行いを思い返すと、紳士としては落第だ。
事件の恐怖をよみがえらせてしまった彼女を衝動的に抱き締めてしまったり。子ども相手のようについ口許を拭いてしまったり。うまくコントロールができない。十八歳の淑女に対して、ベタベタと触れて礼を欠いている。
(唇……)
ハンカチ越しに触れたマージェリーの柔らかい唇の感触が、妙に指先に残って離れない。
不意に彼女の唇を見てしまい、ロデリックは反射的に目をそらした。
今日のマージェリーは綺麗だ。
ドレスは思っていた以上によく似合っているし、髪型も化粧も、控えめな彼女の魅力を引き出し、若々しくも大人の女性の魅力を醸し出している。
もちろん普段の彼女が魅力的でないというわけではない。
まず彼女には日々、癒されている。何も特別なことをしなくても、帰る場所に彼女がいて、会話をして、笑ってくれて、思いやってくれるだけで、活力がわいてくるのだ。人柄ゆえか、ロデリックと相性がいいのか、あるいは両方か。
それに彼女は賢い。教育を受けていなかったことをコンプレックスに思っているようだが、新聞を読み込んでいたためか社会情勢や政治に対しては詳しいし、新たな知識や情報も柔軟に取り込む。
淑女としての所作も振る舞いもあっという間に取り戻した(時々ひどく動揺してしまうときもあるが)。
それに小柄さや容姿も本人は気にしているようだが、ロデリックからは可愛らしく思える。それでいて大人びた表情も見せる。悪いことなど何一つない。
そういうわけで、ロデリックはマージェリーに対して普段から好感しか抱いていないのだが、なぜか今日の彼女を見ていると胸の辺りがざわつくような、むずがゆいような感覚に襲われる。
ウィズダム城の玄関ホールで外出仕様の格好で現れた彼女を見てから、まるで蝋燭に火をつけられたように、その胸の感覚が消えないのだ。
不快なのではない。
何かをしたい気持ちを掻き立てられているのに、その何かが自分でもわかっていない、そんな焦れったさだった。
『さぁ、お手を』
そう言って彼女の手をとったとき、その、足りなかったものがちょうどピッタリと埋まった感じを覚えた。
彼女に触れたからか?と気づき、きっとこれは庇護欲なのだろうと思った。
自分の手でマージェリーをヴァンダービル伯爵家から助け出したものの、それからあとは忙しさにかまけてリサや城の者に任せきりになっていた。
それに自分で納得いっていなかったのではないか。
(たぶん俺は、もっと彼女の世話を焼きたいんだろう)
昔から自分はそういうところがあると、ロデリックは自覚していた。
子どもの頃から物語の本を読み漁っていた彼は、大好きな物語の主人公が他の人を守り助ける姿に惹かれた。
一方、現実のロデリックは、自分のことさえ何でも周りの人間にやってもらえる立場だ。弟や妹もいない。それで物足りなさを感じ、ついつい人の世話を焼きがちになった。
口の悪い姉にいわせれば、それは『良い格好しい』とか『英雄願望』らしいが、何をいわれようが気にしたことはない。
……ただ、今日一日過ごして思った。
どうも庇護欲とは違う感情のようだ。
馬車の中でマージェリーを抱きしめたとき、安心させるための行為のはずだったのに、ずっと抱きしめていたいと思う自分がいた。
それほど、今日の彼女が魅力的だったからか?
(浅ましくも肉欲を覚えてしまったのだろうか? 彼女に)
だとしたら、隠し通そう。
彼女にとって、安心できる居場所でありたい。この先も、ずっと。
(……ずっと?)
自分で呟いた心中の言葉に引っ掛かった、その時、馬車の窓から今夜の宿が目に入った。
「あのホテルだ、マージェリー嬢」
「あちらですか! とても素敵ですね……迎賓館のようです」
外国の要人が極秘裏に来訪し、大っぴらに王宮に宿泊できない時につかうなど、王政関係者が何かと懇意にしているホテルだ。
建物の大きさにくらべ客室の数は少なく、部屋はどれも広くて調度品も良い。不用意に他の貴族と顔を合わせる確率も低い。
昨日王都を出る前に使いの者を送り、一番良い部屋を二つ押さえたので、問題はないはず────だった。
「大変申し訳ないことでございます、王弟殿下。
その……ご予約いただきましたお部屋にお泊まりだった方が、ご出立前に発作を起こされまして。
対応しておりました結果、そのお部屋の清掃と支度が間に合いませんでして……」
────ロビーにて、ものすごくものすごく申し訳なさそうに頭を下げる支配人。
確かに急病人ならば仕方がない、仕方がないのだが。タイミングが悪すぎる。
「それは、つまり?」
「つまり、その……お部屋はお一つのみご用意できます」
「……大丈夫か?」
今夜の宿へ向かう馬車の中、ロデリックはリンゴのように赤く頬を染めたマージェリーに声をかける。
「だっ、大丈夫です! 元気です!」
そう言って彼女は笑ってみせるものの、何だかぽーっとしているようで。
市場の次に向かったカフェでも、植物園でもディナーの間も、どこか上の空だった。
体調が悪いのではないかと聞くと懸命に否定するし、額に触れても熱はなかったのだが。
あまり心配するとまた謝られてしまうので、ロデリックはそれ以上言うのをやめたが……何だか妙に手持ち無沙汰な気持ちになる。
彼自身も、今日は何かがおかしい。
(思うことを伝えたいだけなんだが、うまくいかないな)
笑っていてほしい。幸せでいてほしい。自分を責めず、許し、肯定してほしい。精神的につらいときには支えたい。
そう伝えたいだけなのだが、なぜか彼女にはうまくできない。
淑女に対してそれなりにスマートな接し方はできるつもりでいた。
だが、今朝からの自身の行いを思い返すと、紳士としては落第だ。
事件の恐怖をよみがえらせてしまった彼女を衝動的に抱き締めてしまったり。子ども相手のようについ口許を拭いてしまったり。うまくコントロールができない。十八歳の淑女に対して、ベタベタと触れて礼を欠いている。
(唇……)
ハンカチ越しに触れたマージェリーの柔らかい唇の感触が、妙に指先に残って離れない。
不意に彼女の唇を見てしまい、ロデリックは反射的に目をそらした。
今日のマージェリーは綺麗だ。
ドレスは思っていた以上によく似合っているし、髪型も化粧も、控えめな彼女の魅力を引き出し、若々しくも大人の女性の魅力を醸し出している。
もちろん普段の彼女が魅力的でないというわけではない。
まず彼女には日々、癒されている。何も特別なことをしなくても、帰る場所に彼女がいて、会話をして、笑ってくれて、思いやってくれるだけで、活力がわいてくるのだ。人柄ゆえか、ロデリックと相性がいいのか、あるいは両方か。
それに彼女は賢い。教育を受けていなかったことをコンプレックスに思っているようだが、新聞を読み込んでいたためか社会情勢や政治に対しては詳しいし、新たな知識や情報も柔軟に取り込む。
淑女としての所作も振る舞いもあっという間に取り戻した(時々ひどく動揺してしまうときもあるが)。
それに小柄さや容姿も本人は気にしているようだが、ロデリックからは可愛らしく思える。それでいて大人びた表情も見せる。悪いことなど何一つない。
そういうわけで、ロデリックはマージェリーに対して普段から好感しか抱いていないのだが、なぜか今日の彼女を見ていると胸の辺りがざわつくような、むずがゆいような感覚に襲われる。
ウィズダム城の玄関ホールで外出仕様の格好で現れた彼女を見てから、まるで蝋燭に火をつけられたように、その胸の感覚が消えないのだ。
不快なのではない。
何かをしたい気持ちを掻き立てられているのに、その何かが自分でもわかっていない、そんな焦れったさだった。
『さぁ、お手を』
そう言って彼女の手をとったとき、その、足りなかったものがちょうどピッタリと埋まった感じを覚えた。
彼女に触れたからか?と気づき、きっとこれは庇護欲なのだろうと思った。
自分の手でマージェリーをヴァンダービル伯爵家から助け出したものの、それからあとは忙しさにかまけてリサや城の者に任せきりになっていた。
それに自分で納得いっていなかったのではないか。
(たぶん俺は、もっと彼女の世話を焼きたいんだろう)
昔から自分はそういうところがあると、ロデリックは自覚していた。
子どもの頃から物語の本を読み漁っていた彼は、大好きな物語の主人公が他の人を守り助ける姿に惹かれた。
一方、現実のロデリックは、自分のことさえ何でも周りの人間にやってもらえる立場だ。弟や妹もいない。それで物足りなさを感じ、ついつい人の世話を焼きがちになった。
口の悪い姉にいわせれば、それは『良い格好しい』とか『英雄願望』らしいが、何をいわれようが気にしたことはない。
……ただ、今日一日過ごして思った。
どうも庇護欲とは違う感情のようだ。
馬車の中でマージェリーを抱きしめたとき、安心させるための行為のはずだったのに、ずっと抱きしめていたいと思う自分がいた。
それほど、今日の彼女が魅力的だったからか?
(浅ましくも肉欲を覚えてしまったのだろうか? 彼女に)
だとしたら、隠し通そう。
彼女にとって、安心できる居場所でありたい。この先も、ずっと。
(……ずっと?)
自分で呟いた心中の言葉に引っ掛かった、その時、馬車の窓から今夜の宿が目に入った。
「あのホテルだ、マージェリー嬢」
「あちらですか! とても素敵ですね……迎賓館のようです」
外国の要人が極秘裏に来訪し、大っぴらに王宮に宿泊できない時につかうなど、王政関係者が何かと懇意にしているホテルだ。
建物の大きさにくらべ客室の数は少なく、部屋はどれも広くて調度品も良い。不用意に他の貴族と顔を合わせる確率も低い。
昨日王都を出る前に使いの者を送り、一番良い部屋を二つ押さえたので、問題はないはず────だった。
「大変申し訳ないことでございます、王弟殿下。
その……ご予約いただきましたお部屋にお泊まりだった方が、ご出立前に発作を起こされまして。
対応しておりました結果、そのお部屋の清掃と支度が間に合いませんでして……」
────ロビーにて、ものすごくものすごく申し訳なさそうに頭を下げる支配人。
確かに急病人ならば仕方がない、仕方がないのだが。タイミングが悪すぎる。
「それは、つまり?」
「つまり、その……お部屋はお一つのみご用意できます」
31
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
新婚なのに旦那様と会えません〜公爵夫人は宮廷魔術師〜
秋月乃衣
恋愛
ルクセイア公爵家の美形当主アレクセルの元に、嫁ぐこととなった宮廷魔術師シルヴィア。
宮廷魔術師を辞めたくないシルヴィアにとって、仕事は続けたままで良いとの好条件。
だけど新婚なのに旦那様に中々会えず、すれ違い結婚生活。旦那様には愛人がいるという噂も!?
※魔法のある特殊な世界なので公爵夫人がお仕事しています。
不要なモノを全て切り捨てた節約令嬢は、冷徹宰相に溺愛される~NTRもモラハラいりません~
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
皆様のお陰で、ホットランク一位を獲得しましたーーーーー。御礼申し上げます。
我が家はいつでも妹が中心に回っていた。ふわふわブロンドの髪に、青い瞳。まるでお人形さんのような妹シーラを溺愛する両親。
ブラウンの髪に緑の瞳で、特に平凡で地味な私。両親はいつでも妹優先であり、そして妹はなぜか私のものばかりを欲しがった。
大好きだった人形。誕生日に買ってもらったアクセサリー。そして今度は私の婚約者。
幼い頃より家との繋がりで婚約していたアレン様を妹が寝取り、私との結婚を次の秋に控えていたのにも関わらず、アレン様の子を身ごもった。
勝ち誇ったようなシーラは、いつものように婚約者を譲るように迫る。
事態が事態だけに、アレン様の両親も婚約者の差し替えにすぐ同意。
ただ妹たちは知らない。アレン様がご自身の領地運営管理を全て私に任せていたことを。
そしてその領地が私が運営し、ギリギリもっていただけで破綻寸前だったことも。
そう。彼の持つ資産も、その性格も全てにおいて不良債権でしかなかった。
今更いらないと言われても、モラハラ不良債権なんてお断りいたします♡
さぁ、自由自適な生活を領地でこっそり行うぞーと思っていたのに、なぜか冷徹と呼ばれる幼馴染の宰相に婚約を申し込まれて? あれ、私の計画はどうなるの……
※この物語はフィクションであり、ご都合主義な部分もあるかもしれません。
甘すぎ旦那様の溺愛の理由(※ただし旦那様は、冷酷陛下です!?)
夕立悠理
恋愛
伯爵令嬢ミレシアは、恐れ多すぎる婚約に震えていた。
父が結んできた婚約の相手は、なんと冷酷と謳われている隣国の皇帝陛下だったのだ。
何かやらかして、殺されてしまう未来しか見えない……。
不安に思いながらも、隣国へ嫁ぐミレシア。
そこで待っていたのは、麗しの冷酷皇帝陛下。
ぞっとするほど美しい顔で、彼はミレシアに言った。
「あなたをずっと待っていました」
「……え?」
「だって、下僕が主を待つのは当然でしょう?」
下僕。誰が、誰の。
「過去も未来も。永久に俺の主はあなただけ」
「!?!?!?!?!?!?」
そういって、本当にミレシアの前では冷酷どころか、甘すぎるふるまいをする皇帝ルクシナード。
果たして、ルクシナードがミレシアを溺愛する理由は――。
愛されたくて、飲んだ毒
細木あすか(休止中)
恋愛
私の前世は、毒で死んだ令嬢。……いえ、世間的には、悪役令嬢と呼ばれていたらしいわ。
領民を虐げるグロスター伯爵家に生まれ、死に物狂いになって伯爵のお仕事をしたのだけれど。結局、私は死んでからもずっと悪役令嬢と呼ばれていたみたい。
必死になって説得を繰り返し、領主の仕事を全うするよう言っても聞き入れなかった家族たち。金遣いが荒く、見栄っ張りな、でも、私にとっては愛する家族。
なのに、私はその家族に毒を飲まされて死ぬの。笑えるでしょう?
そこで全て終わりだったら良かったのに。
私は、目覚めてしまった。……爵位を剥奪されそうな、とある子爵家の娘に。
自殺を試みたその娘に、私は生まれ変わったみたい。目が覚めると、ベッドの上に居たの。
聞けば、私が死んだ年から5年後だって言うじゃない。
窓を覗くと、見慣れた街、そして、見慣れたグロスター伯爵家の城が見えた。
私は、なぜ目覚めたの?
これからどうすれば良いの?
これは、前世での行いが今世で報われる物語。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
※保険でR15をつけています。
※この物語は、幻想交響曲を土台に進行を作成しています。そのため、進みが遅いです。
※Copyright 2021 しゅんせ竣瀬(@SHUNSEIRASUTO)
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
すべてが嫌になったので死んだふりをしたら、いつの間にか全部解決していました
小倉みち
恋愛
公爵令嬢へテーゼは、苦労人だった。
周囲の人々は、なぜか彼女にひたすら迷惑をかけまくる。
婚約者の第二王子は数々の問題を引き起こし、挙句の果てに彼女の妹のフィリアと浮気をする。
家族は家族で、せっかく祖父の遺してくれた遺産を湯水のように使い、豪遊する。
どう考えても彼らが悪いのに、へテーゼの味方はゼロ。
代わりに、彼らの味方をする者は大勢。
へテーゼは、彼らの尻拭いをするために毎日奔走していた。
そんなある日、ふと思った。
もう嫌だ。
すべてが嫌になった。
何もかも投げ出したくなった彼女は、仲の良い妖精たちの力を使って、身体から魂を抜き取ってもらう。
表向き、へテーゼが「死んだ」ことにしようと考えたのだ。
当然そんなことは露知らず、完全にへテーゼが死んでしまったと慌てる人々。
誰が悪い、これからどうするのか揉めるうちに、自爆していく連中もいれば、人知れず彼女を想っていた者の復讐によって失脚していく連中も現れる。
こうして彼女が手を出すまでもなく、すべての問題は綺麗さっぱり解決していき――。
さようなら、わたくしの騎士様
夜桜
恋愛
騎士様からの突然の『さようなら』(婚約破棄)に辺境伯令嬢クリスは微笑んだ。
その時を待っていたのだ。
クリスは知っていた。
騎士ローウェルは裏切ると。
だから逆に『さようなら』を言い渡した。倍返しで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる