3 / 26
3 人生が狂ったあの日のこと③
しおりを挟む
「……な、なんだぁ!?」
混乱した誘拐犯が上体を上げ、私の視界に小屋の扉が入ってきた。
バキン!!
再び音が響く。
分厚い木の扉を突き破って見えたのは、鈍色の尖った何か。
(あれって……すごく大きいけど、オノの刃?)
扉の向こうがひどく騒がしいことに、そのときやっと私は気づいた。
「ま、まさか!? き、貴族だろ? 貴族が、そんなこと、するわけ……っ」
バキバキン!!
扉の向こうから光が漏れる。
二撃目で、扉の閂が壊れた。
今度こそハッキリ見えた。扉に大穴を開けたのは、大きな大きな斧の頭だ。
バキバキバキバキ……!!
大勢の手が扉を押してくるような音が響く。
「待て!! やめろ、入ってくるな!! コイツがどうなっても良いのか!?」
男性はわめきちらす。声は上ずり、明らかに怯えて、それでも私を楯にしている。
(こ……殺されるの!? 私……)
思わず両手をお祈りの形にした。
ゴドオン……。鈍く重い音が、最後の一押しだった。
扉がゆっくりと倒れていく。
差し込んでくる光に目を射られたけど、小屋に大人たちが何人も入り込んでくるのがわかった。
すさまじい怒鳴り声。
誰かの手が、男の手から私の身体を引き剥がした。
だけど私は膝に力が入らず、そのまま床にへたりこんでしまう。
「大丈夫か!?」
そう私にかけられた声は、大人の男の人たちのそれと比べると格段に高い、少年のような声だった。
私は恐る恐る顔を上げる。
(……え?)
見上げた先に、見たこともないほど秀麗な顔があった。
(…………誰?)
確実にお兄様よりも年上、たぶんアンナより少し年下……15歳ぐらいだろうか。
その手には、細身に見えるその体格に似合わない、身長を遥かに越える長柄の大きな大きな斧を持っていた。
(この人が……あの扉を壊したの?)
彼は斧を置いて私の前にひざまずき、同じ目線の高さで見つめてくる。
磨き上げた黒曜石みたいな黒い髪に、浅黒い肌。
そして現実味がないほど整った目鼻立ち。
深い深い碧の瞳が、真剣に私を見つめている。
「頭は痛いか? 他に怪我は?」
声変わり中らしい、ハスキーで繊細な響きの声。
騎士団の服をまとっている。
私の手を縛る縄を、小さなナイフで切ってくれた。
「ご令嬢様っ、大丈夫ですか!?」
「お怪我はございませんか!?」
「頭は痛くないですか!?」
他の人たちにも矢継ぎ早に訊かれて混乱する私。
少年の肩越しに、私をさらった男が縛り上げられて、どこかに連れていかれるのが見えた。
(…………私、たすかった、の?)
この人たちは私を助けにきてくれたの?
「……あ、あの、わ、わたし……わた……」
お礼を言わなくちゃ。
そう思うのに唇が震えてしまう。
筋肉が強ばって、口がうまく動かせない。言葉が、出てこない。
「あ、あ……アンナ、は……?」
やっと出てきたのは、私のせいで殴られてしまったアンナの名前。
大丈夫? 大怪我していないかしら?
そのまま死んでしまったらどうしよう!
「君の侍女のことだな?」少年は言う。
「憲兵のもとで医師に診させている。
頭を殴られ、かなり出血していたが、手当ても済んでいまは落ち着いているようだ」
「あ……」
「こうして君を見つけられたのは、彼女のおかげなんだ。
彼女が懸命に助けを呼んだから、俺たちだけじゃなく人がたくさん集まった。
だから目撃者もすぐに見つかり、怪しい場所をしらみつぶしに探すことができたんだ。
本当に……命があって良かった」
語りかけてくる彼の声は優しい。
だけど優しいからこそ、自分のなかでどんどんなにかが込み上げてくる。
「……恐かっただろう。良くがんばったな」
「……っ!」
私は目の前の少年の胸にすがりつき、声を上げて泣いた。
もうわけがわからないほど叫んで泣いた。
貴族の娘として、人前でこんなにみっともなく泣くなんてあってはならないことだとわかっているのに止まらなかった。
────歯止めが効かない私を、少年は優しく抱きしめてくれた。
そうして、大人に比べれば細いのにすごく力強い腕で、私を危なげなく抱き上げ、声をかけながら憲兵の詰め所まで連れていってくれた。
そこでアンナに再会した。
頭に包帯を巻かれた姿は痛々しかったけど、私を見るなり「マージェリー様、ご無事で……!」と叫んで駆け寄ってきて、私をギュッと抱き締めた。
「ごめんなさい、ごめんなさいマージェリー様、私がもっとちゃんと気をつけていればっ……!!」
そんな風にアンナに言われたら、私もまた感情の堰が切れてしまい涙がボロボロ止まらなくなった。
「ごめんなさい、アンナ、ごめんなさい、私が……」
────お互い声も枯れるほど夢中になって泣いた。
どれほど泣いていたのか……ふと気づくと、少年の姿は見えなくなっていたのだった。
(あ……どうしよう……私、あの人にお礼を言えなかったわ)
それから私は、アンナに付き添われ、殴られたところを医師に診てもらった。
老齢の医師は、私の頭を見ながら顔をしかめる。
「こぶができておりますな……。
出血はしていませんが、頭を打たれていらっしゃいます。
頭への衝撃は、直後は何ともなくとも、後に容態が急変することがございます。
特にお子さまが頭を打った時は、その後48時間は要注意です」
「は、はい、わかりました。
ありがとうございます」
「それにしても、頭を殴られるのは大人でさえ危険だというのに、まだ8歳の子どもの頭を、大人の男が棍棒で……なんと酷いことを」
そこへ険しい顔の警吏たちがやってきた。
「ご令嬢様、ヴァンダービル伯爵家にもお知らせしました。
大変な目に遭われた後に、申し訳ありません。
まだお小さい貴族のお嬢様にお願いするのは、とても申し訳ないのですが……あの男の取り調べをし、ふさわしい罰を与えなければなりません。
つきましては、被害者として、何があったか何をされたか、細かくお話ししていただいてもよろしいでしょうか?」
「は……はいっ」
私をさらった男は、ほかにも悪いことをしていたらしい。
一秒でも早くお父様とお母様のもとに帰りたい気持ちをグッと我慢して、私はアンナとともに、警吏たちからの質問に答えた。
質問は思ったよりずっと多かった。
時折恐怖を思い出して身体が凍りついてしまい、涙がまたこぼれてしまうこともあったが、それでもがんばった。
悪者をちゃんと捕まえないと、私と同じようなことをされる子どもがまた出てきてしまうと思ったから。
「おつらい思いをさせてしまいすみません。ですが、ありがとうございます。これできっと奴を監獄に送れます」
「よくがんばりましたね」
大人たちが、私をいたわりながら深々と頭を下げるのがとてもこそばゆい。
「い、いえ……こちらこそ、助けてくださって本当にありがとうございます。
あ、あの……すみません私、お礼をまだ言えていない方がいるのです。
……たぶん、15歳?ぐらいの男の人で……」
「15歳?」
警吏の代表者は首をかしげる。
「そんな若い者が? では騎士団の見習いですかな」
「そう……なのでしょうか」
「わかりました。誰だったか確認して、後日ヴァンダービル家にお知らせいたしましょう」
「ありがとうございます」
(よかった……これであの方にもお礼が言えるわ)
すべて終わったらもう、夕方になっていた。
散歩に出たのは朝だったのに……まるで、遠い昔のように思えた。
混乱した誘拐犯が上体を上げ、私の視界に小屋の扉が入ってきた。
バキン!!
再び音が響く。
分厚い木の扉を突き破って見えたのは、鈍色の尖った何か。
(あれって……すごく大きいけど、オノの刃?)
扉の向こうがひどく騒がしいことに、そのときやっと私は気づいた。
「ま、まさか!? き、貴族だろ? 貴族が、そんなこと、するわけ……っ」
バキバキン!!
扉の向こうから光が漏れる。
二撃目で、扉の閂が壊れた。
今度こそハッキリ見えた。扉に大穴を開けたのは、大きな大きな斧の頭だ。
バキバキバキバキ……!!
大勢の手が扉を押してくるような音が響く。
「待て!! やめろ、入ってくるな!! コイツがどうなっても良いのか!?」
男性はわめきちらす。声は上ずり、明らかに怯えて、それでも私を楯にしている。
(こ……殺されるの!? 私……)
思わず両手をお祈りの形にした。
ゴドオン……。鈍く重い音が、最後の一押しだった。
扉がゆっくりと倒れていく。
差し込んでくる光に目を射られたけど、小屋に大人たちが何人も入り込んでくるのがわかった。
すさまじい怒鳴り声。
誰かの手が、男の手から私の身体を引き剥がした。
だけど私は膝に力が入らず、そのまま床にへたりこんでしまう。
「大丈夫か!?」
そう私にかけられた声は、大人の男の人たちのそれと比べると格段に高い、少年のような声だった。
私は恐る恐る顔を上げる。
(……え?)
見上げた先に、見たこともないほど秀麗な顔があった。
(…………誰?)
確実にお兄様よりも年上、たぶんアンナより少し年下……15歳ぐらいだろうか。
その手には、細身に見えるその体格に似合わない、身長を遥かに越える長柄の大きな大きな斧を持っていた。
(この人が……あの扉を壊したの?)
彼は斧を置いて私の前にひざまずき、同じ目線の高さで見つめてくる。
磨き上げた黒曜石みたいな黒い髪に、浅黒い肌。
そして現実味がないほど整った目鼻立ち。
深い深い碧の瞳が、真剣に私を見つめている。
「頭は痛いか? 他に怪我は?」
声変わり中らしい、ハスキーで繊細な響きの声。
騎士団の服をまとっている。
私の手を縛る縄を、小さなナイフで切ってくれた。
「ご令嬢様っ、大丈夫ですか!?」
「お怪我はございませんか!?」
「頭は痛くないですか!?」
他の人たちにも矢継ぎ早に訊かれて混乱する私。
少年の肩越しに、私をさらった男が縛り上げられて、どこかに連れていかれるのが見えた。
(…………私、たすかった、の?)
この人たちは私を助けにきてくれたの?
「……あ、あの、わ、わたし……わた……」
お礼を言わなくちゃ。
そう思うのに唇が震えてしまう。
筋肉が強ばって、口がうまく動かせない。言葉が、出てこない。
「あ、あ……アンナ、は……?」
やっと出てきたのは、私のせいで殴られてしまったアンナの名前。
大丈夫? 大怪我していないかしら?
そのまま死んでしまったらどうしよう!
「君の侍女のことだな?」少年は言う。
「憲兵のもとで医師に診させている。
頭を殴られ、かなり出血していたが、手当ても済んでいまは落ち着いているようだ」
「あ……」
「こうして君を見つけられたのは、彼女のおかげなんだ。
彼女が懸命に助けを呼んだから、俺たちだけじゃなく人がたくさん集まった。
だから目撃者もすぐに見つかり、怪しい場所をしらみつぶしに探すことができたんだ。
本当に……命があって良かった」
語りかけてくる彼の声は優しい。
だけど優しいからこそ、自分のなかでどんどんなにかが込み上げてくる。
「……恐かっただろう。良くがんばったな」
「……っ!」
私は目の前の少年の胸にすがりつき、声を上げて泣いた。
もうわけがわからないほど叫んで泣いた。
貴族の娘として、人前でこんなにみっともなく泣くなんてあってはならないことだとわかっているのに止まらなかった。
────歯止めが効かない私を、少年は優しく抱きしめてくれた。
そうして、大人に比べれば細いのにすごく力強い腕で、私を危なげなく抱き上げ、声をかけながら憲兵の詰め所まで連れていってくれた。
そこでアンナに再会した。
頭に包帯を巻かれた姿は痛々しかったけど、私を見るなり「マージェリー様、ご無事で……!」と叫んで駆け寄ってきて、私をギュッと抱き締めた。
「ごめんなさい、ごめんなさいマージェリー様、私がもっとちゃんと気をつけていればっ……!!」
そんな風にアンナに言われたら、私もまた感情の堰が切れてしまい涙がボロボロ止まらなくなった。
「ごめんなさい、アンナ、ごめんなさい、私が……」
────お互い声も枯れるほど夢中になって泣いた。
どれほど泣いていたのか……ふと気づくと、少年の姿は見えなくなっていたのだった。
(あ……どうしよう……私、あの人にお礼を言えなかったわ)
それから私は、アンナに付き添われ、殴られたところを医師に診てもらった。
老齢の医師は、私の頭を見ながら顔をしかめる。
「こぶができておりますな……。
出血はしていませんが、頭を打たれていらっしゃいます。
頭への衝撃は、直後は何ともなくとも、後に容態が急変することがございます。
特にお子さまが頭を打った時は、その後48時間は要注意です」
「は、はい、わかりました。
ありがとうございます」
「それにしても、頭を殴られるのは大人でさえ危険だというのに、まだ8歳の子どもの頭を、大人の男が棍棒で……なんと酷いことを」
そこへ険しい顔の警吏たちがやってきた。
「ご令嬢様、ヴァンダービル伯爵家にもお知らせしました。
大変な目に遭われた後に、申し訳ありません。
まだお小さい貴族のお嬢様にお願いするのは、とても申し訳ないのですが……あの男の取り調べをし、ふさわしい罰を与えなければなりません。
つきましては、被害者として、何があったか何をされたか、細かくお話ししていただいてもよろしいでしょうか?」
「は……はいっ」
私をさらった男は、ほかにも悪いことをしていたらしい。
一秒でも早くお父様とお母様のもとに帰りたい気持ちをグッと我慢して、私はアンナとともに、警吏たちからの質問に答えた。
質問は思ったよりずっと多かった。
時折恐怖を思い出して身体が凍りついてしまい、涙がまたこぼれてしまうこともあったが、それでもがんばった。
悪者をちゃんと捕まえないと、私と同じようなことをされる子どもがまた出てきてしまうと思ったから。
「おつらい思いをさせてしまいすみません。ですが、ありがとうございます。これできっと奴を監獄に送れます」
「よくがんばりましたね」
大人たちが、私をいたわりながら深々と頭を下げるのがとてもこそばゆい。
「い、いえ……こちらこそ、助けてくださって本当にありがとうございます。
あ、あの……すみません私、お礼をまだ言えていない方がいるのです。
……たぶん、15歳?ぐらいの男の人で……」
「15歳?」
警吏の代表者は首をかしげる。
「そんな若い者が? では騎士団の見習いですかな」
「そう……なのでしょうか」
「わかりました。誰だったか確認して、後日ヴァンダービル家にお知らせいたしましょう」
「ありがとうございます」
(よかった……これであの方にもお礼が言えるわ)
すべて終わったらもう、夕方になっていた。
散歩に出たのは朝だったのに……まるで、遠い昔のように思えた。
7
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
新婚なのに旦那様と会えません〜公爵夫人は宮廷魔術師〜
秋月乃衣
恋愛
ルクセイア公爵家の美形当主アレクセルの元に、嫁ぐこととなった宮廷魔術師シルヴィア。
宮廷魔術師を辞めたくないシルヴィアにとって、仕事は続けたままで良いとの好条件。
だけど新婚なのに旦那様に中々会えず、すれ違い結婚生活。旦那様には愛人がいるという噂も!?
※魔法のある特殊な世界なので公爵夫人がお仕事しています。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
不要なモノを全て切り捨てた節約令嬢は、冷徹宰相に溺愛される~NTRもモラハラいりません~
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
皆様のお陰で、ホットランク一位を獲得しましたーーーーー。御礼申し上げます。
我が家はいつでも妹が中心に回っていた。ふわふわブロンドの髪に、青い瞳。まるでお人形さんのような妹シーラを溺愛する両親。
ブラウンの髪に緑の瞳で、特に平凡で地味な私。両親はいつでも妹優先であり、そして妹はなぜか私のものばかりを欲しがった。
大好きだった人形。誕生日に買ってもらったアクセサリー。そして今度は私の婚約者。
幼い頃より家との繋がりで婚約していたアレン様を妹が寝取り、私との結婚を次の秋に控えていたのにも関わらず、アレン様の子を身ごもった。
勝ち誇ったようなシーラは、いつものように婚約者を譲るように迫る。
事態が事態だけに、アレン様の両親も婚約者の差し替えにすぐ同意。
ただ妹たちは知らない。アレン様がご自身の領地運営管理を全て私に任せていたことを。
そしてその領地が私が運営し、ギリギリもっていただけで破綻寸前だったことも。
そう。彼の持つ資産も、その性格も全てにおいて不良債権でしかなかった。
今更いらないと言われても、モラハラ不良債権なんてお断りいたします♡
さぁ、自由自適な生活を領地でこっそり行うぞーと思っていたのに、なぜか冷徹と呼ばれる幼馴染の宰相に婚約を申し込まれて? あれ、私の計画はどうなるの……
※この物語はフィクションであり、ご都合主義な部分もあるかもしれません。
甘すぎ旦那様の溺愛の理由(※ただし旦那様は、冷酷陛下です!?)
夕立悠理
恋愛
伯爵令嬢ミレシアは、恐れ多すぎる婚約に震えていた。
父が結んできた婚約の相手は、なんと冷酷と謳われている隣国の皇帝陛下だったのだ。
何かやらかして、殺されてしまう未来しか見えない……。
不安に思いながらも、隣国へ嫁ぐミレシア。
そこで待っていたのは、麗しの冷酷皇帝陛下。
ぞっとするほど美しい顔で、彼はミレシアに言った。
「あなたをずっと待っていました」
「……え?」
「だって、下僕が主を待つのは当然でしょう?」
下僕。誰が、誰の。
「過去も未来も。永久に俺の主はあなただけ」
「!?!?!?!?!?!?」
そういって、本当にミレシアの前では冷酷どころか、甘すぎるふるまいをする皇帝ルクシナード。
果たして、ルクシナードがミレシアを溺愛する理由は――。
愛されたくて、飲んだ毒
細木あすか(休止中)
恋愛
私の前世は、毒で死んだ令嬢。……いえ、世間的には、悪役令嬢と呼ばれていたらしいわ。
領民を虐げるグロスター伯爵家に生まれ、死に物狂いになって伯爵のお仕事をしたのだけれど。結局、私は死んでからもずっと悪役令嬢と呼ばれていたみたい。
必死になって説得を繰り返し、領主の仕事を全うするよう言っても聞き入れなかった家族たち。金遣いが荒く、見栄っ張りな、でも、私にとっては愛する家族。
なのに、私はその家族に毒を飲まされて死ぬの。笑えるでしょう?
そこで全て終わりだったら良かったのに。
私は、目覚めてしまった。……爵位を剥奪されそうな、とある子爵家の娘に。
自殺を試みたその娘に、私は生まれ変わったみたい。目が覚めると、ベッドの上に居たの。
聞けば、私が死んだ年から5年後だって言うじゃない。
窓を覗くと、見慣れた街、そして、見慣れたグロスター伯爵家の城が見えた。
私は、なぜ目覚めたの?
これからどうすれば良いの?
これは、前世での行いが今世で報われる物語。
※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
※保険でR15をつけています。
※この物語は、幻想交響曲を土台に進行を作成しています。そのため、進みが遅いです。
※Copyright 2021 しゅんせ竣瀬(@SHUNSEIRASUTO)
転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います
結城芙由奈
恋愛
【だって、私はただのモブですから】
10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした――
※他サイトでも投稿中
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる