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はじめての外国 6
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ああ、とうとう『エドワード王子の恋の物語~僕の運命の恋人は~』の2巻も読み終えてしまいました。
エドワード王子ロスです。エドワード王子様……。
マジックポケットにそっと本を投げ入れました。
「アリス様! その辺にポイポイしないでください」
ああ、遠くでブラウンが怒ってます。すいません。つい、ついやってしまいました。
はやく、誰か私に続きをください。3巻はたぶんベッドの上です。せっかく王妃にもらったのに。置いてきてしまいました。ショック。
あとで、王子に言えば、もらえるかしら。
忘れたことが不敬とか言われないだろうか。というか、私、城から失踪ってことになっているのでは? がーん。
ああ、がっかり。くううう。
あの本がもらえないなら、王都に行って、本を探さねばなりませんね。いや、順番的に、この船問題を片付けてからでしょうか。誰だか知りませんけど、私の読書の邪魔するやつは絶対許しませんからね!(?)
いや、それより、拉致がわかったら、国際問題勃発になる? どうなるんだろう。いざとなったら、シレッと記憶喪失になろう。うん、それがいい。
ぶつぶつ言っているうちに陸地に着いたようです。縄を巻きなおして、スタンバイ、OKです。
赤マントの男たちがやってきました。
タウルス様はというと、フードを深くかぶっていますが、無事のようです。
船着き場で、馬車が降ろされました。海とは違う、水の音です。そういえば、海の匂いがしません。これは、川なんでしょうか。あと、なんかあまり嗅いだことがない匂いがします。何の匂いかな。あとは、なんだか暑いです。どこまできてしまったんだろう?
この匂い……、そうそう、お父様の部屋にあったお土産のお香の匂いがします。 スパイシーで、すこし甘い香り……。
ヘカサアイ! ヘカサアイ王国!
ヘカサアイ王国に行ったときに買ったって言ってました。ヘカサアイ王国は辛いもの、赤い国だって聞いています。
まさか、ここって……。
幌の隙間からのぞくと、赤い土が見えました。やはりハトラウス王国ではないようです。
ああ、マジですか。外国に来ちゃったよ。
お父さまたちに報告しないとね! びっくり、どっきりです。で、私の運命はどうなるんでしょう?
「あの……。ここってヘカサアイ王国ですか」
きょろきょろする私が赤マントの男たちに聞くと、男たちはぎょっとした顔になりました。
突然話しかけてすいません。
でも……。ここの土の色、見たし、空気の匂いも違うし。外国だってことくらいすぐにわかるよ。
私は男たちが気の毒になりました。
それに、サミダの金属加工品の乗った船も、私たちの船の前につけられています。みんなまとめてヘカサアイ王国か……。
「……。そうだ」
その一言以外、男たちは黙っています。あまりにも黙っていて面白くありません。
「ヘカサアイの男はおしゃべりしないんですか?」
「ぶはっ」
タウルス様が笑います。
タウルス様の笑い声につられて、男たちが相好を崩しました。
「アリス様は横暴で自分勝手、乱暴者、ハトラウス王家を害するものと聞いていましたが、こんなにおとなしく人質をするくらいの人物だったんですね」
「俺たちに話しかけるとか……、勇気があるな」
男たちが勝手に話し始めました。
「ちょっとひどくないですか? 横暴で自分勝手……っていったい誰が?」
ムカついて、タウルス様を見ます。
タウルス様は視線を外されました。といってもタウルス様ではないでしょう。私と知り合ったばかりですから。え? タウルス様ですか? 誰でもいいですけど、私の悪口を広めないでください。
社交界にも出ていないのに、外国まで私の悪口が伝わっているとは! 言ったのは、どこのどいつでしょうね……。
この国際問題はいずれはっきりさせたいと思います。胸にしっかり刻み込みましたよ。
エドワード王子ロスです。エドワード王子様……。
マジックポケットにそっと本を投げ入れました。
「アリス様! その辺にポイポイしないでください」
ああ、遠くでブラウンが怒ってます。すいません。つい、ついやってしまいました。
はやく、誰か私に続きをください。3巻はたぶんベッドの上です。せっかく王妃にもらったのに。置いてきてしまいました。ショック。
あとで、王子に言えば、もらえるかしら。
忘れたことが不敬とか言われないだろうか。というか、私、城から失踪ってことになっているのでは? がーん。
ああ、がっかり。くううう。
あの本がもらえないなら、王都に行って、本を探さねばなりませんね。いや、順番的に、この船問題を片付けてからでしょうか。誰だか知りませんけど、私の読書の邪魔するやつは絶対許しませんからね!(?)
いや、それより、拉致がわかったら、国際問題勃発になる? どうなるんだろう。いざとなったら、シレッと記憶喪失になろう。うん、それがいい。
ぶつぶつ言っているうちに陸地に着いたようです。縄を巻きなおして、スタンバイ、OKです。
赤マントの男たちがやってきました。
タウルス様はというと、フードを深くかぶっていますが、無事のようです。
船着き場で、馬車が降ろされました。海とは違う、水の音です。そういえば、海の匂いがしません。これは、川なんでしょうか。あと、なんかあまり嗅いだことがない匂いがします。何の匂いかな。あとは、なんだか暑いです。どこまできてしまったんだろう?
この匂い……、そうそう、お父様の部屋にあったお土産のお香の匂いがします。 スパイシーで、すこし甘い香り……。
ヘカサアイ! ヘカサアイ王国!
ヘカサアイ王国に行ったときに買ったって言ってました。ヘカサアイ王国は辛いもの、赤い国だって聞いています。
まさか、ここって……。
幌の隙間からのぞくと、赤い土が見えました。やはりハトラウス王国ではないようです。
ああ、マジですか。外国に来ちゃったよ。
お父さまたちに報告しないとね! びっくり、どっきりです。で、私の運命はどうなるんでしょう?
「あの……。ここってヘカサアイ王国ですか」
きょろきょろする私が赤マントの男たちに聞くと、男たちはぎょっとした顔になりました。
突然話しかけてすいません。
でも……。ここの土の色、見たし、空気の匂いも違うし。外国だってことくらいすぐにわかるよ。
私は男たちが気の毒になりました。
それに、サミダの金属加工品の乗った船も、私たちの船の前につけられています。みんなまとめてヘカサアイ王国か……。
「……。そうだ」
その一言以外、男たちは黙っています。あまりにも黙っていて面白くありません。
「ヘカサアイの男はおしゃべりしないんですか?」
「ぶはっ」
タウルス様が笑います。
タウルス様の笑い声につられて、男たちが相好を崩しました。
「アリス様は横暴で自分勝手、乱暴者、ハトラウス王家を害するものと聞いていましたが、こんなにおとなしく人質をするくらいの人物だったんですね」
「俺たちに話しかけるとか……、勇気があるな」
男たちが勝手に話し始めました。
「ちょっとひどくないですか? 横暴で自分勝手……っていったい誰が?」
ムカついて、タウルス様を見ます。
タウルス様は視線を外されました。といってもタウルス様ではないでしょう。私と知り合ったばかりですから。え? タウルス様ですか? 誰でもいいですけど、私の悪口を広めないでください。
社交界にも出ていないのに、外国まで私の悪口が伝わっているとは! 言ったのは、どこのどいつでしょうね……。
この国際問題はいずれはっきりさせたいと思います。胸にしっかり刻み込みましたよ。
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