婚約破棄されましたが、もふもふと一緒に領地拡大にいそしみます

百道みずほ

文字の大きさ
63 / 83

大移動、決行します! 6

しおりを挟む
「おかえり! お姉さま」
フィリップが突然現れた私を見て大喜びしています。

「わーい、マカミもおかえり!」
ムギューっとフィリップはマカミを抱きしめました。ちょっと、お姉さまにハグは? どこに消えたの?

ちょっぴり寂しい気持ちになります。なぜ、マカミなんですか……。
マカミをジーッと見ましたが、マカミは私と視線を合わせません。

「こちらの方は?」
フィリップは紹介されるまできちんと待っています。おお、すごい、貴族教育の賜物です。

「ピュララティスのラティファ様です」
「お初にお目にかかります。ラッセル公の嫡男のフィリップと申します」

フィリップは膝を折って正式なご挨拶です。
わお! フィリップのご挨拶、初めてみた! 大きくなったのねえ。よちよちしていたのに。
感慨深いです。

ラティファ様はそっと手を差し伸べ、手の甲にフィリップの額を寄せることを許します。
さすが、美男美女。すごい絵になる! こういうところを絵姿に残すべきよね。

「ラティファとお呼びくださいね」
「光栄です。私のことはフィリップと」
無事面通しが終わって、ホッとしたのでした。

「ラティファ様!」
お母様が慌てて近寄ってきました。まさか、うちの屋敷の庭に隣の国の王女が出現とは思わなかったのでしょう。

息を切らしています。
そのあとをお父様がほぼ駆け足でやってきます。

あははは。大パニックです。思念波で会話しておけばよかったですね。今ごろ気がつきました。ごめんなさい、お父様、お母様。

貴族たるもの、万事万全であれ。
お父様とお母様は、ラティファ様の前に立つと、額に汗をかきながら、涼しい顔をしてご挨拶です。

「突然になってしまい、申し訳ございません。非公式ゆえ、堅苦しいことはなしでお願いします」
ラティファ様は申し訳なさそうに微笑みました。

「どうして急にラティファ様が?」と私の顔をお父様とお母様が見ます。

「実はタウルス様とラティファ様が私の領地にいらっしゃったのです」
お父様とお母様は顔がみるみるうちに青くなっていきます。

「タウルス様は、ご用事があるとかで、すでに出立されています。ラティファ様をこれから王都へお送りしようかと思います」
お父様はうんうんと頷きました。

「そろそろ午後のお茶の時間ですから、ラティファ様に軽く召し上がってもらいましょう」
お母様が微笑みます。女神の笑みは、健在です。

「そのあと、私が馬車でラティファ様を王都までお送りします。今夜は王都で一泊して、朝に戻りますね。お父様、お母様よろしいですか」

お父様は少し不安そうに頷きます。
「もちろんです。誰かお供につけましょう」
「ブラウンを連れて行きますから、大丈夫です」

私の答えにお母様はホッとしたようにうなずき、ラティファ様の手を取り、我が家の中へお誘いしました。

「私が王城へお送りしたかったのだが、今、ちょっと問題があるからなあ」
お父様が渋い顔で私に呟きます。

「どうしたのですか」
「町に物がなくなったのだ」
「はあ? それって……」

「食料も鉄製品、銅製品、材料もその場で取り上げだ」
「うちの地下の、隠し備蓄庫にいくらかあるとはいえ、緊急事態になってきた。私は町の惨状をなんとかしなければいけない」

「私のことは心配ご無用です。付き添いはブラウンがいますし、マカミも連れて行きますから」
笑顔でいうと、お父様はまだ心配そうにしています。

「こんな時に王都へは行かせたくないが、しかたない。早く帰っておいで。お前は無茶をするからなあ」
そういうと、私の持っていた遠見の珠を取り、細工し始めました。

「これをもっていきなさい」
魔法の術式が複雑に付与されています。

「あの、持っていればいいのですか」
「ああ、ただ持っていればいい。お前を守ってくれるから」
お父様は不安そうに微笑みました。

「わかりました。いつでも、持っていきます」
「うん、そうしておくれ。少なくともこの件が片付くまでは……」
お父様は大きくため息をつきました。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』

鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。 だからこそ転生後に誓った―― 「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。 気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。 「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」 ――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。 なぜか気づけば、 ・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変 ・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功 ・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす ・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末 「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」 自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、 “やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。 一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、 実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。 「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」 働かないつもりだった貴族夫人が、 自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。 これは、 何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。

処理中です...