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新・領地生活! 充実させるには…… 4
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トラウデンの町はいつも通り賑やかで、往来も激しい……。はずですが、よく耳を澄ませば、愚痴りの声が上がっています。
野菜の箱を下ろしている男性は、店の男性に値上げを告げ、店の男性は怒っています。
「まあ、なんでこんなに高いの?」
粉物を扱う問屋に商いできた女性が思わずつぶやいていました。
「全体的に物価が上がっている……?」
まさかね。ここ数年、飢饉や不作といった原因はありません。近隣でも、ハトラウス王国でも戦争はありません。
「なぜ、小麦の値段が上がっている?」
王子は首を傾げます。
「職人エリアも見ていきましょうか」
私の問いかけに王子は頷きました。
いつもなら鍛冶屋の鉄を打つ音、火の気配などがしているのに……。音がほとんどしません。
それどころか、職人エリアの人が少ないんです。
「何が起きているんでしょう?」
私は首を傾けました。
「あー、アリス様!」
お父さまのお屋敷に出入りをしている職人さんが声をかけてくれました。
「サミダ、どうして職人エリアがこんなに静かなんですか」
周りをぐるりと見回します。
「それはですね……、ラッセル公に今まで食い止めていただいていたのですが、とうとうトラウデンに王の直属の組織というやつがやってきて……」
王子は首を捻ります。
「この国の奴らじゃない感じで……、何を言っても通じないんです」
「はあ? どういう事態ですか!」
王子の声に怒りが滲み始めています。
「鉄製品はおろか、ほかの金属製品まで根こそぎ持っていかれ……、昨日、今日は職人自体が徴収されたみたいで……」
「サミダ……、よく無事でしたね」
「たまたまお屋敷に呼ばれていたんです。階段のところの飾り棚の修復と、手摺りの取り替えにいってまして、難を逃れたといいますか……。しかし、頼まれていた修復や製作途中のものまで全部持っていかれちまいました」
ハトラウス王国で1、2を争うサミダの細工は見事としかいいようがない、芸術品で……。サミダはよく題材に幾何学模様とツタ植物を使っているのですが、繊細過ぎて、他の職人さんは修理ができないほどです。
うう、前に屋敷内丸ごとお掃除をしたせいかしら……。まだ、修理しているのでしょうか。すいません。
若干顔が引き攣ってしまいましたが、ここは笑顔で! 結果的にサミダが無事だから、オーライってことで……。
「ここもだいぶ王都へ連れてかれたな……」
サミダは寂しそうです。
工場からいつも聞こえる音もなく、材料を運ぶ馬車もない、職人エリアはひっそりとしています。
「なぜ? なぜ、そんな事態になっている?」
王子の顔が青くなっていきます。
「王子……。きっと何かあったんですよ。王も、理由もなくそんなことしません。きっとやむも得ない事情が……」
慰めるつもりで声をかけましたが、
「そうだな。何かあるんだ、絶対に」
王子は黙ってしまいました。しばらくして、顔をあげると、
「サミダ、職人エリアから離れておきなさい。それから妻子も一緒にどこかに隠れているとよいでしょう」
王子がアドバイスしました。
「うちの屋敷の離れもありますが……、もしよかったら、ちょっと歩きますけど、そちらでも人員募集中ですよ。どこか身を隠すところがありますか?」
私と王子の対応にサミダが焦っています。
「え? そんなにヤバい状態ですか」
「ええ、まあ。金属加工ができるっていうことはいろいろ使えますからね……」
私の言葉にサミダの顔が曇ります。
「人員募集って……?」
サミダは、不思議そうにしています。
私はちらっと王子の顔を見ましたが、王子は顔色一つ動かさず、横を向いています。
きっと聞こえないっていうポーズなのでしょう。ありがとうございます。王子……。
「ええ、少し歩くのですが、新しく領地を開拓したので……、そちらのほうで人員を募集しているのです」
「ほんとに、俺らが引っ越していいのかい?」
「はい! 家はこちらで用意します」
私は胸を張ります。
「そんな至れり尽くせり……」
「考えてみてくださいね。よろしくお願いします」
内心、ドキドキですが、余裕を見せるために軽く微笑んでみせます。
「で、いつ? いつ引っ越せばいい? 荷物なんて、さほどねえしな。命より大事なものはない。あ、道具はいるな……」
「おそらく2日後になるかと……」
私はサミダにこそっと話した。
「わかりました。アリス様。よろしくお願いします。今から家族に話して準備します。町のものにも声をかけておきます」
「ええ、頼みますね」
依頼している様子を王子が口角をあげて見守ってくれています。
「そうした方がいいですね。私も急いでこの事態を解決しますから」
王子が真剣な顔でサミダに約束しました。
「あの、この方は……」
サミダは怪訝な顔をしています。
「この人は、ハトラウス王国の第一継承者です」
小さな声でサミダに教えます。
「つ、つまり、王子……、王子ですか!」
サミダは驚いていました。そうですよね、驚きますよね。こんなところにいるなんて……。
「あの……、それって、アリス様と婚約破棄されたという……王子ですか?」
言いづらそうに追加して聞いてきました。
「……、訳があるんです。婚約破棄は不本意で、それも含めなんとかしてきます」
王子は乾いた笑顔です。
「ああ、アリス様をフるなんて、なんて巫山戯た王子だと思っていたんですが……、どうやらきな臭い事情がありそうですね、アリス様?」
ええ? 私に振る? その回答を……、なんて言えばいいのよ。そうですねというのが、正解なの?
「男がこんな顔して言うんじゃ、本当の訳ありです。よかったですね、アリス様が弄ばれたんじゃないかと、トラウデンの町では結構な怒りの声があって……」
サミダが頷きながら、説明してきます。
骨身に堪えます。すいません、市井の方々までご心配をおかけしております。
なんだか申し訳なくなってきました。ううう。
「アリスのことは、僕が護ります。そのつもりですから。もう少し、あと少しだけ、その不本意な噂を我慢してください」
王子が私の手を握りました。
「そんなに熱い目で見られちゃ……、アリス様、信じてやれよ」
サミダは苦笑しています。
「……」
思わず返答に困ってしまいました。
「あとは王子にお任せだな。頼んだよ」
サミダはニヤッと笑います。
「お任せください」
王子は微笑みました。
キラキラした笑顔にあてられたサミダは、思わず王子の横顔に見とれています……。王子、誰彼構わず愛想を振りまくのはおやめください。
もうすぐ屋敷が見えてくるはずです。
ほんの少しの、視察の旅でしたが、トラウデンの町が懐かしく思えます。ここが私の故郷なんですね……。
大通りの八百屋のおばちゃんや、こどもたちも挨拶してくれました。
「アリス様、最近顔を見ませんでしたが、お出かけでしたか? 仲良く?」
ちらっとおばちゃんは王子の顔を見て、おばちゃんはニヤニヤしています。
「そういうんじゃないですってば」
おばちゃんに絡まれ、私の顔は赤くなります。
いつものおばちゃんのようですが……、でも、ちょっと元気がないように思えます。顔色も悪いですかね?
「何か、最近あったのですか」
私がおばちゃんの顔を覗き込むと、
「最近、小麦粉も高くって、パンも値上がりして困ってるんだよ」
おばちゃんは愚痴ってきました。
「そうなんですか?」
王子は親身になって聞きます。
「やっぱり、王子はイケメンだねえ。アリス様とうまくいったかい?」
おばちゃんが私の横腹をつつきます。
私にリアクション求めないで……。
「……鋭意努力中です」
王子はキリッした顔でおばちゃんをみつめました。
「しっかり、アリス様、捕まえておかないと。アリス様は……、駆け引きは下手くそだろうが、誠意はあるし、優しいよ。魔力もあるけどね。前向きに何でも取り組むし、いい子なんだよ」
「はい、そうですよね。僕も、そう考えております」
おばちゃんは王子の背中を軽くパシパシ叩きました。
「なんだ、わかってるのかい。じゃ、まずは新婚約のほうをなんとかしないとね」
「ええ、おっしゃる通りで……。そちらの準備もするつもりです」
王子の答えにおばちゃんがニヤリと笑いました。
「なら、いいんだ。うちらのアリス様が泣かされるのは許せないからね」
おばちゃんは両手を腰に当てます。
おばちゃん……。いつもありがとう。私、頑張って、野菜食べるね。ううう、目に熱い涙がたまっていきます。
「お任せください」
王子は涼しい顔を作って、微笑みました。
野菜の箱を下ろしている男性は、店の男性に値上げを告げ、店の男性は怒っています。
「まあ、なんでこんなに高いの?」
粉物を扱う問屋に商いできた女性が思わずつぶやいていました。
「全体的に物価が上がっている……?」
まさかね。ここ数年、飢饉や不作といった原因はありません。近隣でも、ハトラウス王国でも戦争はありません。
「なぜ、小麦の値段が上がっている?」
王子は首を傾げます。
「職人エリアも見ていきましょうか」
私の問いかけに王子は頷きました。
いつもなら鍛冶屋の鉄を打つ音、火の気配などがしているのに……。音がほとんどしません。
それどころか、職人エリアの人が少ないんです。
「何が起きているんでしょう?」
私は首を傾けました。
「あー、アリス様!」
お父さまのお屋敷に出入りをしている職人さんが声をかけてくれました。
「サミダ、どうして職人エリアがこんなに静かなんですか」
周りをぐるりと見回します。
「それはですね……、ラッセル公に今まで食い止めていただいていたのですが、とうとうトラウデンに王の直属の組織というやつがやってきて……」
王子は首を捻ります。
「この国の奴らじゃない感じで……、何を言っても通じないんです」
「はあ? どういう事態ですか!」
王子の声に怒りが滲み始めています。
「鉄製品はおろか、ほかの金属製品まで根こそぎ持っていかれ……、昨日、今日は職人自体が徴収されたみたいで……」
「サミダ……、よく無事でしたね」
「たまたまお屋敷に呼ばれていたんです。階段のところの飾り棚の修復と、手摺りの取り替えにいってまして、難を逃れたといいますか……。しかし、頼まれていた修復や製作途中のものまで全部持っていかれちまいました」
ハトラウス王国で1、2を争うサミダの細工は見事としかいいようがない、芸術品で……。サミダはよく題材に幾何学模様とツタ植物を使っているのですが、繊細過ぎて、他の職人さんは修理ができないほどです。
うう、前に屋敷内丸ごとお掃除をしたせいかしら……。まだ、修理しているのでしょうか。すいません。
若干顔が引き攣ってしまいましたが、ここは笑顔で! 結果的にサミダが無事だから、オーライってことで……。
「ここもだいぶ王都へ連れてかれたな……」
サミダは寂しそうです。
工場からいつも聞こえる音もなく、材料を運ぶ馬車もない、職人エリアはひっそりとしています。
「なぜ? なぜ、そんな事態になっている?」
王子の顔が青くなっていきます。
「王子……。きっと何かあったんですよ。王も、理由もなくそんなことしません。きっとやむも得ない事情が……」
慰めるつもりで声をかけましたが、
「そうだな。何かあるんだ、絶対に」
王子は黙ってしまいました。しばらくして、顔をあげると、
「サミダ、職人エリアから離れておきなさい。それから妻子も一緒にどこかに隠れているとよいでしょう」
王子がアドバイスしました。
「うちの屋敷の離れもありますが……、もしよかったら、ちょっと歩きますけど、そちらでも人員募集中ですよ。どこか身を隠すところがありますか?」
私と王子の対応にサミダが焦っています。
「え? そんなにヤバい状態ですか」
「ええ、まあ。金属加工ができるっていうことはいろいろ使えますからね……」
私の言葉にサミダの顔が曇ります。
「人員募集って……?」
サミダは、不思議そうにしています。
私はちらっと王子の顔を見ましたが、王子は顔色一つ動かさず、横を向いています。
きっと聞こえないっていうポーズなのでしょう。ありがとうございます。王子……。
「ええ、少し歩くのですが、新しく領地を開拓したので……、そちらのほうで人員を募集しているのです」
「ほんとに、俺らが引っ越していいのかい?」
「はい! 家はこちらで用意します」
私は胸を張ります。
「そんな至れり尽くせり……」
「考えてみてくださいね。よろしくお願いします」
内心、ドキドキですが、余裕を見せるために軽く微笑んでみせます。
「で、いつ? いつ引っ越せばいい? 荷物なんて、さほどねえしな。命より大事なものはない。あ、道具はいるな……」
「おそらく2日後になるかと……」
私はサミダにこそっと話した。
「わかりました。アリス様。よろしくお願いします。今から家族に話して準備します。町のものにも声をかけておきます」
「ええ、頼みますね」
依頼している様子を王子が口角をあげて見守ってくれています。
「そうした方がいいですね。私も急いでこの事態を解決しますから」
王子が真剣な顔でサミダに約束しました。
「あの、この方は……」
サミダは怪訝な顔をしています。
「この人は、ハトラウス王国の第一継承者です」
小さな声でサミダに教えます。
「つ、つまり、王子……、王子ですか!」
サミダは驚いていました。そうですよね、驚きますよね。こんなところにいるなんて……。
「あの……、それって、アリス様と婚約破棄されたという……王子ですか?」
言いづらそうに追加して聞いてきました。
「……、訳があるんです。婚約破棄は不本意で、それも含めなんとかしてきます」
王子は乾いた笑顔です。
「ああ、アリス様をフるなんて、なんて巫山戯た王子だと思っていたんですが……、どうやらきな臭い事情がありそうですね、アリス様?」
ええ? 私に振る? その回答を……、なんて言えばいいのよ。そうですねというのが、正解なの?
「男がこんな顔して言うんじゃ、本当の訳ありです。よかったですね、アリス様が弄ばれたんじゃないかと、トラウデンの町では結構な怒りの声があって……」
サミダが頷きながら、説明してきます。
骨身に堪えます。すいません、市井の方々までご心配をおかけしております。
なんだか申し訳なくなってきました。ううう。
「アリスのことは、僕が護ります。そのつもりですから。もう少し、あと少しだけ、その不本意な噂を我慢してください」
王子が私の手を握りました。
「そんなに熱い目で見られちゃ……、アリス様、信じてやれよ」
サミダは苦笑しています。
「……」
思わず返答に困ってしまいました。
「あとは王子にお任せだな。頼んだよ」
サミダはニヤッと笑います。
「お任せください」
王子は微笑みました。
キラキラした笑顔にあてられたサミダは、思わず王子の横顔に見とれています……。王子、誰彼構わず愛想を振りまくのはおやめください。
もうすぐ屋敷が見えてくるはずです。
ほんの少しの、視察の旅でしたが、トラウデンの町が懐かしく思えます。ここが私の故郷なんですね……。
大通りの八百屋のおばちゃんや、こどもたちも挨拶してくれました。
「アリス様、最近顔を見ませんでしたが、お出かけでしたか? 仲良く?」
ちらっとおばちゃんは王子の顔を見て、おばちゃんはニヤニヤしています。
「そういうんじゃないですってば」
おばちゃんに絡まれ、私の顔は赤くなります。
いつものおばちゃんのようですが……、でも、ちょっと元気がないように思えます。顔色も悪いですかね?
「何か、最近あったのですか」
私がおばちゃんの顔を覗き込むと、
「最近、小麦粉も高くって、パンも値上がりして困ってるんだよ」
おばちゃんは愚痴ってきました。
「そうなんですか?」
王子は親身になって聞きます。
「やっぱり、王子はイケメンだねえ。アリス様とうまくいったかい?」
おばちゃんが私の横腹をつつきます。
私にリアクション求めないで……。
「……鋭意努力中です」
王子はキリッした顔でおばちゃんをみつめました。
「しっかり、アリス様、捕まえておかないと。アリス様は……、駆け引きは下手くそだろうが、誠意はあるし、優しいよ。魔力もあるけどね。前向きに何でも取り組むし、いい子なんだよ」
「はい、そうですよね。僕も、そう考えております」
おばちゃんは王子の背中を軽くパシパシ叩きました。
「なんだ、わかってるのかい。じゃ、まずは新婚約のほうをなんとかしないとね」
「ええ、おっしゃる通りで……。そちらの準備もするつもりです」
王子の答えにおばちゃんがニヤリと笑いました。
「なら、いいんだ。うちらのアリス様が泣かされるのは許せないからね」
おばちゃんは両手を腰に当てます。
おばちゃん……。いつもありがとう。私、頑張って、野菜食べるね。ううう、目に熱い涙がたまっていきます。
「お任せください」
王子は涼しい顔を作って、微笑みました。
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