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ロックが集まってきました。
ゴロゴロと転がってきます。
私のベリージュースを飲んだロックは岩の一部が紫なので、わかっちゃいますからね。
大きな岩が私たちの周りを囲み、ごつごつ手足が生えました。顔と胴体は一部なのでしょうか。
どうやって意思表示するのでしょう。
ぽかんと開いてしまった口が閉まりません。
岩たちは何か言いたげです。
こういう時に話ができる魔法とかあればいいんですけど。言語を変える何か、ああ、お父さまたちと話すような思念波はつかえるんでしょうか。
「こんにちは」
「コンニチハ」
おお、通じた。
「黒い森の後継者が来たというから、助けてもらおうとおもって……」
紫の岩が私の前に出てきました。
「ええ? まあ、後継者と言えば後継者ですが……。いまはラッセル伯爵の長女・アリスですよ」
「そうでしたね。川の流れを1本にされるなどお見事でした……。本当に素晴らしい。ついでにベリージュースも結構なお味でした」
「……で、何が困っているの?」
つい冷たい目で見たくなります。ああ、私のジュース……。食べ物の恨みは恐ろしいんですよ。
ブラウンは苦笑しながらそっと私にグラスを差し出してくれました。ありがとう。ブラウン。
一気にごくごくと喉を鳴らして飲んでしまいました。ぷはーっとやりたかったのですが、そこまではしませんでした。
ブラウンは白い目で見ています。だって……、干からびそうだったんですよ。それなのにジュースとられたんです。お淑やかに飲むなんてできません。生死がかかっていたんです……。
ううう、すいません。もう少しお行儀よく飲めばよかったかも……。気をつけます。
ブラウンの非難がましい視線は見なかったことにしましょう。
「あの……。最近、山が崩れて、僕らのいる場所がなくなったんです」
紫ロックは指さしました。
崩れたついでに、その山を拠点にしようとおもって、さらに平らにしちゃったし。少しは私の責任かも……。
すいません。すいません。なんとかしてあげないと!
「……ああ、なるほど」
心の焦りを隠して、話を続けます。
「どこか住める場所をつくってもらえないでしょうか」
「え?」
そんなことを言われてもねえ。どうすればいいのよ?
だからといって、ここにはいたくないから、私に相談しているのよね?
「でも、どこに住みたいの?」
「まあ、岩ですからどこにでも住めるのですが、できれば嫌われないところに……」
やばい。SUMOTORIで岩たちをどかそうと思っていたのがバレてる?
「そっと暮らせれば……」
「邪魔されなければどこでも……」
ロックたちの考えが次々と頭に流れ込んできます。
「そうですね……」
私は眉根を寄せました。
「ねえ、ブラウン。ロックたちは静かに暮らしたいらしいの」
「はあ。そうですか……」
「いま、どうしようか考えていて……、川を一本にしたじゃない? 堤防も作った。だから堤防のそばにロックたちにいてもらうとか……」
「でも、田畑や水道をつくるのに邪魔じゃないですか?」
「……邪魔ですね」
うーん。意外に難問です。ブラウン、ナイス回答です。
「誰にも邪魔にならないところ……、どこだろう」
おもわず腕組みをしてしまいます。
「例えば、山みたいなところですか? 自然にあるような?」
ブラウンが空を睨んで考えています。
「そうか! じゃあ、ロックの山を作ろう」
ブラウンは私の顔を見てため息をつきました。
「お嬢さまが作れるなら、いいんじゃないですか?」
「作れるもん。ジュース飲んだし」
私、水分と糖分を補強して、元気になりました。お任せください、もう一仕事くらいできますよ。
「はいはい。じゃあ、私は夕飯の支度をしてきます」
「うん、じゃあ、ちょっと山造る計画する」
ブラウンはほほほと笑いながらマジックポケットに入っていきました。
うう。本気にされてないような気がする。
できますからね。ちゃんと、やればできるんですって。
「お嬢さま……」
ロックたちは私を見つめています(見つめているような気がする)。
「アリス様……、本当に山を作っていただけるのですか?」
紫ロックが確認します。
「任しといて」
さて、どこにその山を作りましょうか……。また地図とにらめっこです。
元居た山は私の拠点にするので、その後ろか、横に山をつくりましょうか。それなら、拠点の要塞っぽい感じにもなりそう……。
ロックたちを見ると、ちょっと大きさも足りません。要塞の山になってもらうには、だいぶ大きな岩になってもらわないと……。
そうだ!
「SUMOTORI!」
私が呼ぶと土の巨人たちが集まっていました。
私の周りにだいぶ日影ができました。というか、圧迫感半端ないんだけど……。
「ロック、住む場所は提供できそうなんだけど……。この土人形と融合しない?」
「ええ?」
ロックたちは驚いています。
「もっと大きくなって、たくさん魔力があったら踏まれないし、生活も邪魔にもされないよ。だって、山って感じになっちゃうし。どう? 山になったら静かだよ。いい考えでしょ」
「……」
ロックたちはなんだかロックたちだけで話し合っているようです。
ゴロゴロと転がってきます。
私のベリージュースを飲んだロックは岩の一部が紫なので、わかっちゃいますからね。
大きな岩が私たちの周りを囲み、ごつごつ手足が生えました。顔と胴体は一部なのでしょうか。
どうやって意思表示するのでしょう。
ぽかんと開いてしまった口が閉まりません。
岩たちは何か言いたげです。
こういう時に話ができる魔法とかあればいいんですけど。言語を変える何か、ああ、お父さまたちと話すような思念波はつかえるんでしょうか。
「こんにちは」
「コンニチハ」
おお、通じた。
「黒い森の後継者が来たというから、助けてもらおうとおもって……」
紫の岩が私の前に出てきました。
「ええ? まあ、後継者と言えば後継者ですが……。いまはラッセル伯爵の長女・アリスですよ」
「そうでしたね。川の流れを1本にされるなどお見事でした……。本当に素晴らしい。ついでにベリージュースも結構なお味でした」
「……で、何が困っているの?」
つい冷たい目で見たくなります。ああ、私のジュース……。食べ物の恨みは恐ろしいんですよ。
ブラウンは苦笑しながらそっと私にグラスを差し出してくれました。ありがとう。ブラウン。
一気にごくごくと喉を鳴らして飲んでしまいました。ぷはーっとやりたかったのですが、そこまではしませんでした。
ブラウンは白い目で見ています。だって……、干からびそうだったんですよ。それなのにジュースとられたんです。お淑やかに飲むなんてできません。生死がかかっていたんです……。
ううう、すいません。もう少しお行儀よく飲めばよかったかも……。気をつけます。
ブラウンの非難がましい視線は見なかったことにしましょう。
「あの……。最近、山が崩れて、僕らのいる場所がなくなったんです」
紫ロックは指さしました。
崩れたついでに、その山を拠点にしようとおもって、さらに平らにしちゃったし。少しは私の責任かも……。
すいません。すいません。なんとかしてあげないと!
「……ああ、なるほど」
心の焦りを隠して、話を続けます。
「どこか住める場所をつくってもらえないでしょうか」
「え?」
そんなことを言われてもねえ。どうすればいいのよ?
だからといって、ここにはいたくないから、私に相談しているのよね?
「でも、どこに住みたいの?」
「まあ、岩ですからどこにでも住めるのですが、できれば嫌われないところに……」
やばい。SUMOTORIで岩たちをどかそうと思っていたのがバレてる?
「そっと暮らせれば……」
「邪魔されなければどこでも……」
ロックたちの考えが次々と頭に流れ込んできます。
「そうですね……」
私は眉根を寄せました。
「ねえ、ブラウン。ロックたちは静かに暮らしたいらしいの」
「はあ。そうですか……」
「いま、どうしようか考えていて……、川を一本にしたじゃない? 堤防も作った。だから堤防のそばにロックたちにいてもらうとか……」
「でも、田畑や水道をつくるのに邪魔じゃないですか?」
「……邪魔ですね」
うーん。意外に難問です。ブラウン、ナイス回答です。
「誰にも邪魔にならないところ……、どこだろう」
おもわず腕組みをしてしまいます。
「例えば、山みたいなところですか? 自然にあるような?」
ブラウンが空を睨んで考えています。
「そうか! じゃあ、ロックの山を作ろう」
ブラウンは私の顔を見てため息をつきました。
「お嬢さまが作れるなら、いいんじゃないですか?」
「作れるもん。ジュース飲んだし」
私、水分と糖分を補強して、元気になりました。お任せください、もう一仕事くらいできますよ。
「はいはい。じゃあ、私は夕飯の支度をしてきます」
「うん、じゃあ、ちょっと山造る計画する」
ブラウンはほほほと笑いながらマジックポケットに入っていきました。
うう。本気にされてないような気がする。
できますからね。ちゃんと、やればできるんですって。
「お嬢さま……」
ロックたちは私を見つめています(見つめているような気がする)。
「アリス様……、本当に山を作っていただけるのですか?」
紫ロックが確認します。
「任しといて」
さて、どこにその山を作りましょうか……。また地図とにらめっこです。
元居た山は私の拠点にするので、その後ろか、横に山をつくりましょうか。それなら、拠点の要塞っぽい感じにもなりそう……。
ロックたちを見ると、ちょっと大きさも足りません。要塞の山になってもらうには、だいぶ大きな岩になってもらわないと……。
そうだ!
「SUMOTORI!」
私が呼ぶと土の巨人たちが集まっていました。
私の周りにだいぶ日影ができました。というか、圧迫感半端ないんだけど……。
「ロック、住む場所は提供できそうなんだけど……。この土人形と融合しない?」
「ええ?」
ロックたちは驚いています。
「もっと大きくなって、たくさん魔力があったら踏まれないし、生活も邪魔にもされないよ。だって、山って感じになっちゃうし。どう? 山になったら静かだよ。いい考えでしょ」
「……」
ロックたちはなんだかロックたちだけで話し合っているようです。
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