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探査にいってきます!

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王子に町案内というミッションをクリアした私は、次の日無事足りないものの買い出しも終え、現在、最終チェックしています。

食料、よし! 
水、よし! 
調理器具、よし! 
着替えも入っている。
マカミのお世話セットに、念のため剣と槍と弓も用意してあります。たぶん使わないけどね。究極魔法あるし。やるときは魔法になると思うけど。

「さて、忘れ物はないと」
ブラウンとお母さまと一緒に、荷物は全て確認済みです。

商工会から地図も、農協から苗も届いたので、マジックポケットに仕舞いました。マカミの背中に乗れば、目的地まですぐなんですが、今回はどこを開拓するかが目的なので、なるべく自分の足で見る予定です。

疲れるし、大変だし、歩くのは……とも思ったけれど、町の人たちを誘致するのであれば、そんな無責任なことは言えません。

農業ができる場所があること。商業を発展させることができる場所で、ラッセル領のトラウデンや海辺の町リマー、王都につながる道があることが条件です。隠れて領地を開発するので、王都への道は優先順位は低いですが、状況が変わった時のことも考えないといけませんからね。

町の人が引っ越しやすいように、なるべく平坦な場所がいいですよね……。また治安をよくするため、町の守りをどうするかなども調べないといけません。

地図上ではいくつか候補地のあたりをつけてはいるのですが……。実際見ないとわかりません。なんてったって、黒い森付近なので、地図も信頼性が低いと私は考えています。

黒い森って、魔物や神が住むとか言われているところなんです。そこをを調査する人なんていませんからね。

できたら、黒い森で、ついでに薬草もあるか調べておきたいところです。なんか変わったものがありそう!

鉱物資源もラッセル領は豊富に出る国なので、黒い森にも何かあるかもしれないなって期待してます。

ね? 楽しくなってきたでしょ。あー、わくわくする。

結局出発するのは、王子が来たあの日から三日目になってしまいましたが……、きょうは晴れているし、出発日和です。頑張っていきましょう!

「お父様、お母様、フィリップ、行ってきます。セバスチャン、みんなを頼みます」
私が挨拶をすると、お父様がうるうると瞳を潤せた。

「気をつけて行くんだぞ……」
お父様が手で涙を拭っていたら、お母様がハンカチを渡していました。
「お姉ちゃん、頑張って!」
フィリップも今日ばかりは素直です。

「アリスはすぐに魔法で帰れますから、大丈夫ですよ。あなたったら……、そんなに泣いていたらみんなも泣きたくなっちゃうじゃない」
「いや、僕は泣いてなんかいないから」
お父様の鼻はグズっているし、目も赤いので、泣いているのはバレバレですが、認めないようです。

「ブラウン、アリスのこと頼みましたよ」
お母様は、お父様からそっと視線を外しました。
「はい、奥様」
ブラウンは軽く会釈しました。

それからブラウンはマジックポケットの中に入り、マカミもスタンバイOKです。

さあ、出発しますよ。張り切っていきましょう!

「ねえ、マカミ。暇だわ」
マカミは「ワフッ」とうなずいた。

私とマカミはただひたすら歩いております。この辺の森はよくマジックポケットを広げるのに使っているところです。ブラウンはマジックポケットの中だし、しゃべる相手はマカミのみです。最初は鼻歌を歌っていましたが、レパートリーが無くなりました。

今度もう少し歌を覚えておこうと思います。自然の音は豊かですが、ちょっぴり寂しい……。

仕方がないので、薬草を見つけたらポイポイ摘んでいます。珍しい、マンゴドラの群衆や虫に寄生する苔など、黒い森入り口はなかなか面白い生態をしています。

需要は私以外なさそうですが、ハイキングマップとか作りたくなっちゃいました。

というのも、魔力が邪魔をして、黒い森の入り口周辺でさえ人が迷うと言われているからね。まあ、そんな怖いところ、普通の人は嫌がります。

今いる、入り口にほど近いこの辺りは、私はまだまだ大丈夫。怖い思いはまだしてません。ほんとうに魔物とかいるのかしらって疑っちゃいます。

一応この辺りも、ラッセル領のトラウデンにもっとも近い候補地の一つなんだけど……。

この辺りじゃ、領地開拓の証拠を求め、探しに来た王都の役人や教会関係者にすぐに見つかってしまうにちがいありません。

もし開拓したことが分かれば、すぐに税金、隠していたから罰金と言ってくるでしょ……。

開拓してすぐなんて、何も採れない、捕れない。何もないんだから、そんなの払えませんよ……。できるだけみんなの負担を増やしたくないから、領地開拓にでたからもっと貧乏って、あんまりよね。

だからこっそり開拓を進めなくてはいけないの。豊かになって余剰ができたら、町の発展のために、王や教会にお知らせしてもいいけどね。

教皇様やテンメル教会主なら、その辺の事情を分かってくれそうだけど……。でも、わかってくれる人ばかりじゃない。

教会は教皇派と副教皇派に割れているって言っていたし。油断できません。

王の動きも怪しいしね。

さて、予定としては、もう少し奥に進まないといけません。でも、もう午後を回ってしまいました。

マカミは全然疲れてなさそうで、ふさふさしっぽをフリフリしてます。あー、しっぽ触りたい……。でも、後にしますよ。自制です!

黒い森はウルア山とウメニ山が近いから、この辺の石も歩きながら気をつけて見ています。

たまにアメジストとか、ダイヤモンドの原石道に転がっていたりするの。びっくりでしょ。運がよければひと財産よ。ただし、土の塊で落ちていたりするから気をつけて。

基本的に見つけた人のものだからね。見つけたら、私のもの。
採掘権を買って、掘っているところだったら、お金を払って採掘しないとだめだけど、ここはただのラッセル領だからね。

このあたりくらいまでは植物採集家や鉱物ハンターたちが歩いていることがあるんだよね。だから先に拾われちゃってる可能性もあるんだけど……。

もしかすると、あの、黒い馬と黒い髪の人は植物採取に来ていたのかも。王家と契約していたとか?

町の周辺の、豊かな土地が終わると、黒い森がうっそうと続き、ウルア山、ウメニ山を含めエフェニア山、エシュルマ山脈と北へ山が続きます。

山は金やダイヤモンドなど資源にも恵まれているから、一旗揚げたい人は採掘権を買ったり、鉱物ハンターになったりして、お目当ての石を探すの。見つかった石は問屋に集められ、そこから町の職人のところへ回っていく。

トラウデンの職人は優秀で、繊細な彫り物や鋳物が有名で、工芸品としてよく出回っているよ。

「あ、ああ!」
サファイヤ見つけた! 子どもの手のひらサイズです。ちょっとだけ中を割ると、ほら! 青く輝いています。

こっちにはトパーズも。今日は豊作だな。
ああ、そうか! 黒い森がもう目と鼻の先だからだ。ちょっと森の奥に来ちゃったから……、ハンターたちも嫌がって近寄らない場所に来ちゃったのかも。

目の前に見える、あっち側は黒い森です。
これからは気をつけて進まないとね。

きょうはこの辺りでやめておこうかな。
地図を見ると、この先は黒い森の始まりです。

もうすぐ日が落ちるし、今日寝る場所を探したほうがいいかもしれない。

「きょうは寝る場所を探そうか」
マカミも賛成みたい。うなずいていた。

「寝るとしたら……、どの辺がいいんだろう」
森の中は静かです。葉が風になる音しかしません。夕日が差し込んできています。

食料はあるし、水もあるので、安全性だけを考えれば……。ここでいいかもしれません。

マジックポケットを開くと、ブラウンが飛び出してきました。

「アリス様、今日の行程はおしまいですか?」
「うん、ここで野営しようと思うけど……」
ブラウンはあたりを見回した。

森の中だけど、見通しもよさそうだし。敵が来るとは思わないけど、来てもすぐに分かりそうだし。

「そうですね、いいかもしれません。寝るときはマジックポケットにしてくださいね。私は少し様子を見に、散歩に行ってきます。アリス様は少し休んでいてください」

「ありがとう。そうそう、この辺にいいものが落ちてるかも。鉱物ハンターもあきらめて来ない地域になってるみたいで……。さっきサファイアとトパーズを拾ったよ」

「ふふふ。よかったですね。じゃ、わたしも下を向いて歩いてきます。それにいい季節ですからね。キノコとか食べられる木の実とかあるかもしれませんね」
ブラウンは楽しそうに散策の準備を始めました。

私はマジックポケットの中からお茶を入れる道具を取り出して、お茶の準備です。

マカミもごろりと地べたに横になろうとしていたのですが、目の端でその姿をとらえたブラウンはマカミをマジックポケットの中に追い立ててました。

「ほらほら、真っ白いふわふわの毛が汚れちゃうから、中に入ってから休んで」

ブラウンに背中を撫でられ、マカミはのっそりと歩き出しました。

おやつを取りにマジックポケットの中をのぞいたら、マカミはブラウンから貰ったおやつを食べながら、のんびりゴロゴロしておりました。

もふもふがくつろいでいる姿は……癒されますなあ。

「きゃー」
散歩に行ったばかりのはずのブラウンの悲鳴が聞こえました。

「大丈夫?」
私は声のする方へ急ぐと、黒い馬がブラウンの肩に顔を摺り寄せていた。ううう。あれってまさか……!

「あ、ブラックナイト(仮)」
私、目が輝いちゃいますよ。ブラウン、でかした! さすがです。

「アリス様、この馬、なんとかしてください」
馬の鼻が近づいてきたので、ブラウンは困惑した様子です。

毛並みは艶々。筋肉の筋も美しい。
ああ、うっとりしちゃう。

「この馬、魔力があるブラックナイト(仮)だよ」
「アリス様……? どうでもいいですから、そういうの。うわあ、どうしてくっついてくるの?」
ブラウンは馬に追いかけられてくるくると回っています。

「ねえ、この馬、餌付けとかできないかな」
「ええー」
ブラウンは渋い顔です。

「どうして、いいじゃない? この馬、すっごくかっこいいし」
私はブラックナイト(仮)を撫でまくってます。いい手触りです。

ブラウンが右に行けば右、左に動けば左と、ピッタリとブラックナイト(仮)がついていくので、ブラウンはキャーキャー言っています。

「もう、アリスさま、なんとかして」
「仲良しでいいな。うらやましい」
思わず恨みがましく見ちゃいます。

ブラックナイト(仮)の背中を撫でていたら、いくらかブラックナイト(仮)も落ち着いたみたい。でも、顔はブラウンの方を向いてます。

私よりもブラウンが好きって態度が明らかなんですけど。ちょっと、傷ついちゃうわよ。


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