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跡継ぎは弟へ。だってわたしにはむかないもの
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「やはり、これ以上の教会税も領地税も払うのはきついな」
屋敷で過ごすいつものリラックスした服に着替えたお父さまは眉をひそめている。
そこ、皺になるよ、お父さま。イケオジの皺は素敵だからいいけど、でも老けて見えちゃうかもよ。
お父さまはお母さまの肩に手を置いた。
「あなた……」
お母さまはお父さまの手を握った。
お父さまはきょうも王都に行っていたみたい。かわいそうに、目の下に青黒いクマができている。お母さまは心配そうに見つめた。
ここのところ毎日王と教会に別々に呼ばれて、話し合いを進めているんだって。
私は王さまと教会と貴族政治は苦手。お父さまもお母さまもすごいと思う。
だから、可愛らしいけれど、少し腹黒い弟の方が公爵は向いていると思うのよ。でも、私が長女だから、私が継ぎたいなら私でもいいってお父さまもお母さまもフィリップも思っているみたい。
私が継いでいい理由として、君子危うきに近寄らずの性質が素晴らしいからってお父さまが言っていたけど。
なんかちょっぴり悪意を感じるのは気のせいかしら。
よく言えば、危機察知能力が高いってことかしら。
でも、領地をさらに発展させるとか、中央と一緒に政治に関わるとか、そんなは私にはできないと思うの。
だから、婚約破棄された今、なんとか自活の道を探らなきゃいけない。
王都へ行って研究所に入るか、うちの領地のどこかに研究所を建てるか。そのあたりが無難だと考えてる。お父さまに折を見て話そうとは思っているんだけど。
「もし教会税や領地税を今以上に払ったら、領地の運営に支障が出ると主張したが、あいつらは聞く耳を持たない。うちの領地で農作物の大不作が起きたらどうするつもりなんだ。品物が流通しなくなったら、王都はたちゆかなくなるだろうと言っているのに……。目先の金と権力に取りつかれている」
お父さまがはああああと大きく息を吐いた。
「そうですよ。教会も王も何を考えているのでしょう」
お母さまは慰めた。
「そうしたら、奴ら、なんて言ったと思う? 金を稼げる方法はいくらでもあるだろうだというのだ」
「まあ……」
お母さまもあきれ顔。
「王都に品物を送らず、他国への輸出を増やせってことだろうか。金がすべてと言うなら……。でもこの国のためにならないとわかっているのに自らそれをやるのは気が引ける」
お父さまは悲しそうにつぶやいた。
教会や王様が新たに徴収しようとしている税金って、ちょっとおかしいの。うちでは払えないわけじゃないけど、払っちゃうと冬の厳しい時期とか、変な病気がはやった時の町の体力がなくなってしまう。予備費とか医療費とかにあてる分がなくなるの。
食料も備蓄はしているから、教会や王へ納めることはできるけど、全部納めてしまったら飢饉が起きた時の対処ができなくなってしまう。
それに、教会や王の要求に屈したら、あと何度増税されるかわからない。
だからお父さまは必死に抵抗してる。
町の人たちもお父さまたちを応援してるけどやきもきしてるみたい……。相手が悪い。だって教皇様と王様だよ。どうにかならないものかねえ。
教皇様も王様も、絶対太っていて、背が低くって、極悪人面で油でテカったような顔をしているんだよ、きっと。
屋敷で過ごすいつものリラックスした服に着替えたお父さまは眉をひそめている。
そこ、皺になるよ、お父さま。イケオジの皺は素敵だからいいけど、でも老けて見えちゃうかもよ。
お父さまはお母さまの肩に手を置いた。
「あなた……」
お母さまはお父さまの手を握った。
お父さまはきょうも王都に行っていたみたい。かわいそうに、目の下に青黒いクマができている。お母さまは心配そうに見つめた。
ここのところ毎日王と教会に別々に呼ばれて、話し合いを進めているんだって。
私は王さまと教会と貴族政治は苦手。お父さまもお母さまもすごいと思う。
だから、可愛らしいけれど、少し腹黒い弟の方が公爵は向いていると思うのよ。でも、私が長女だから、私が継ぎたいなら私でもいいってお父さまもお母さまもフィリップも思っているみたい。
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なんかちょっぴり悪意を感じるのは気のせいかしら。
よく言えば、危機察知能力が高いってことかしら。
でも、領地をさらに発展させるとか、中央と一緒に政治に関わるとか、そんなは私にはできないと思うの。
だから、婚約破棄された今、なんとか自活の道を探らなきゃいけない。
王都へ行って研究所に入るか、うちの領地のどこかに研究所を建てるか。そのあたりが無難だと考えてる。お父さまに折を見て話そうとは思っているんだけど。
「もし教会税や領地税を今以上に払ったら、領地の運営に支障が出ると主張したが、あいつらは聞く耳を持たない。うちの領地で農作物の大不作が起きたらどうするつもりなんだ。品物が流通しなくなったら、王都はたちゆかなくなるだろうと言っているのに……。目先の金と権力に取りつかれている」
お父さまがはああああと大きく息を吐いた。
「そうですよ。教会も王も何を考えているのでしょう」
お母さまは慰めた。
「そうしたら、奴ら、なんて言ったと思う? 金を稼げる方法はいくらでもあるだろうだというのだ」
「まあ……」
お母さまもあきれ顔。
「王都に品物を送らず、他国への輸出を増やせってことだろうか。金がすべてと言うなら……。でもこの国のためにならないとわかっているのに自らそれをやるのは気が引ける」
お父さまは悲しそうにつぶやいた。
教会や王様が新たに徴収しようとしている税金って、ちょっとおかしいの。うちでは払えないわけじゃないけど、払っちゃうと冬の厳しい時期とか、変な病気がはやった時の町の体力がなくなってしまう。予備費とか医療費とかにあてる分がなくなるの。
食料も備蓄はしているから、教会や王へ納めることはできるけど、全部納めてしまったら飢饉が起きた時の対処ができなくなってしまう。
それに、教会や王の要求に屈したら、あと何度増税されるかわからない。
だからお父さまは必死に抵抗してる。
町の人たちもお父さまたちを応援してるけどやきもきしてるみたい……。相手が悪い。だって教皇様と王様だよ。どうにかならないものかねえ。
教皇様も王様も、絶対太っていて、背が低くって、極悪人面で油でテカったような顔をしているんだよ、きっと。
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