婚約破棄されましたが、もふもふと一緒に領地拡大にいそしみます

百道みずほ

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うちの教育方針

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「いやあ、僕も森に行く。お姉さまとマカミと遊ぶ。ううん、魔法の練習する~」
フィリップが主張したけど、速攻でお父さまとお母さまとセバスに却下された。

フィリップは現在勉強の時間です。
頑張って! 未来の公爵様。
森になんか生えていたら、お土産に持ってきてあげるからね。

今の時期生えているものって何だろう。
おやつになるものがいいよね。

どんぐりとか? あれ、あく抜きが面倒なんだよね。
やっぱりベリー系だろうか。その辺に生えているキノコとか? 

この土地は神々に愛されている土地で、魔物はほとんどいない。いてもマカミのような守護神が追い払ってくれる。平和を重んじる民を守ってくれているのだ。

マカミの背中にしがみつくと温かくて気持ちがよくなってきた。ぽかぽか陽気でうっかり途中何度か気を失い、落ちそうになりながら、いつもの小高い丘に到着。

「ありがとう」
私はマカミの首に抱き着いた。

私は多分生まれた時から魔法量が多かったみたい。だいたい王家、貴族はもともと体内魔法量は多いって言われているんだけど、私は2歳の頃にはすでに王家と同じ魔法量を持っていたらしいの。

小さいころから習ってない魔法を適当に操りながら遊んでいたらしいんだけど、それって本当に危ない。使い方が分からず、暴発しちゃうと本人だけでなく周囲も危険にさらすことになる。
だから、言葉を覚えると同時に魔法のレッスンが始まったのでした。

「神にもらったギフトがあるのだからしっかり使えるようにならないといけません」
お母さまが優しく微笑んだのを覚えている。

そうそう、私を拾ってくれた頃、ブラウンもうちにやってきたらしい。メイドのブラウンは何をやらせても優秀で……。魔法学校も首席で卒業、マナーもダンスもばっちりできて、おまけに炊事洗濯掃除もできちゃう。どうしてブラウンがメイドをしているのかが不思議なんだけどね。

お父さまとお母さまはやりたいことはとことんやれという教育方針。やりたいことが才能で、才能の芽は育てるべしというみたい。

ブラウンに基本的なことを教わると、国内の魔法学校の先生を呼び寄せて、私に魔法を教えてもらっていた。

火、水、土、風、光の魔法などいろんな魔法を学び、夢中になって復習(遊び)していたら、ある日ぶっ倒れた。

ほんと、使い過ぎってダメよね。でも、子どもってコテって寝るまで遊ぶじゃない? あんな感じだったみたい。

毎日毎日限界量を使っていたら、ますます魔法量が増えちゃった。今はたぶんこの国で一番の魔法量みたいよ。非公式だけど。

王家より魔法量が多いって表ざたにすると面倒だからと言う理由でお父さんとお母さまは隠しているの。悪いことではないけど、王家や教会がだまっちゃいないだろうってことみたいよ。戦争に利用しようとか考えられても困るし。

国内にある初級魔法を6歳で、中級魔法を9歳で、上級魔法を12歳でマスターして、究極魔法も完ぺきにしたので、いまは究極魔法を超えるものがないか研究中。

あとね、いろんな国の魔法に興味があるの。だから世界中の魔法書を片っ端から取り寄せてるのよ。ほんと魔法っていろいろある。おそらく文化的な背景や宗教的な背景とかも関係すると考えます。

そして書斎を崩壊させたにつながるわけです。すいません。反省してます。

この前のボヤ騒ぎで、お父さまからマジックポケットをプレゼントされたので、もう大丈夫。心配無用よ。

このマジックポケットの中には自分だけの図書館と魔法の実験場がある。そのうちキッチンとか、ソファくらいは持ち込みたい。野望です。

マジックポケットはセキュリティ対策もしていて、マカミとわたしは所有者として普通に入ることができるけど他の人は許可がないと入れないようになっている。

マジックポケットってすんごい高価で、国家予算1年分とかするんだって。だから大事に使います。

お父さま、ありがとう。アリスは精進します。いつか親孝行するからね。待っててね。


毒キノコとかフィリップは面白がって研究したがるだろうけど、絶対お父さまたちに私が怒られるからやめておこう。
無難なものにするか、ウケ狙いにするか迷うわ。

私はマカミを連れて森へやってきた。マカミの毛が太陽に照らされて、ふかふか倍増。ああ、あそこで寝たい。魔法の練習より先にお昼寝もいいよね。ほら、今日は婚約破棄されてショックだったから。

あれ、なんか黒いものが動いている。魔物?
目を凝らしていると、マカミがフンと鼻を鳴らした。

気にしなくていいってことかな。
もぞもぞしてるけど。
あれ、黒い馬じゃない? 名馬っていわれている、黒い馬に似てる。まさかね。こんなところに名馬のブラックナイトがいないわよね。

繁みばかり気にしていたら、マカミに上に乗れと言われた。ごめん、ごめん。
マカミがいるのに魔物が寄ってくるはずはない。
マカミは守護神だからね。寄ってくるなら、守護神級の魔物。それってやばいやつじゃん。といっても、そうそうそんな奴はいない。

「マジックポケット」
空間を撫でると、私とマカミを認識し、空間に割れ目ができる。

失敗すると、ちょっと高い位置にできるので、ちゃんと割れ目ができる位置を設定するのがコツよ。

許可なく所有者以外が入ると、どこかの空間に迷い込んでしまうって言われているので、取り扱い注意。

お父さま、お母さま、フィリップくらいは登録してあるので、大丈夫だけどね。

フィリップがこの空間から、この世界からいなくなっちゃったら……。想像するだけでぞおっとするわ。

例え。道の真ん中に知らないドアがあっても、勝手に入ってはいけません。ろくなことにならないからね。

さて、今日も究極魔法の研究をしましょう。現在マイブームは風魔法。これを応用して何かできないか考えている。

究極魔法って、それだけで最強なんだけど、現実に使えないって良くないと思うのよ。

だって、究極魔法を使う時って、巨悪と闘ってるときとか、超危険な時でしょ。それなのに、さあ、いまからすっごく難しい魔法をやりますよって、成功率低くない?

毎日ちょっとでもいいから究極魔法を使い、成功率を完璧に100パーセントにする。そしていざと言う時に絶対勝利に導くってほうがいいと思うのよ。

「たしかに理想としては正しいが……」
お父さまに話したら、渋い顔。

「究極魔法って言うのは魔法量がとんでもなく消費されてしまうもので、毎日そんなに魔法を消費していたら、アリスはまたぶっ倒れるのではないか」
お父さまは心配そうに私を見た。

「そ、そう? そうなんだ」
私は少し考える。
自分の手をじっと見る。うーん、究極魔法を十回くらいは今でもできそうなくらい魔法量はあるし。大丈夫だよ。心配無用。ぶっ倒れても、寝れば回復するし。

「それに、究極魔法を毎日やっていたら、この街が壊れるのではないか」
お父さま、ごめんなさい。火事を起こしたことをいっている? もうしません。


「大丈夫。私がマジックポケットの中で毎日練習するから。もし究極魔法の実用化ができたら、お父さま、見てくれる?」
上目遣いでお父さまをみる。

「わかったよ、アリス。でも、その心意気だけで充分だ。ケガをするなよ。そしてケガを誰かにさせるなよ」
お父さまは顔をひきつらせていた。

「アリス、これ以上燃やしたりしたらダメよ。洪水とか暴風とかもよ。みんなに迷惑かけるのは禁止よ。いい? そんな可愛い顔を作っても騙されません」

お母さま、顔が怖いです。そんなこと、アリスがするわけないじゃないですか。ちゃんと安全配慮いたします。期待して待っててね。そして実用化してお金を稼いで見せましょう。婚約破棄されたし、目指すは職業婦人かな。

というわけで、私の研究は究極魔法の実用化です。

辺りを見回し、人気のいないことを確かめると、私とマカミは割れ目の中へ入っていった。最後にちらっと黒い影が見えた気がしたけど……、マカミが無視しているので大丈夫だろう。変なの。もし帰りにもあの馬がいたら、うちに連れて帰ってあげよう。それで、お腹いっぱいにしてあげて、うちの子にしちゃおう。


今日の研究を終えて、マジックポケットからでてきたら、黒い馬はいなかった。
「はあ」
残念そうにしていたら、マカミに怒られた。ヤキモチ? 可愛いやつめ。
マカミにぎゅっと抱きつくと、マカミは満足そうにしている。
マジックポケットのあたりには、いくつかの足あとが……。
誰? 何もの? 私とマカミに近づくって……、何も知らないのかしら。この辺に住んでいる人ではないってこと?




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