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結婚できないわたし
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「ええ! どうして……。どういうことだ!!」
家じゅうに響き渡るお父さまの怒声。
君子危うきに近寄らずっていうじゃない?
きょうは一日お父さまには近づかないことにしよう。
メイドのブラウンに身支度を手伝ってもらっている最中だ。どうしてこんなに服を着なくちゃいけないのかなあ。服なんか最低限着ていればいいのに。なんだったらブラウンのメイド服とかでいいのに。
動きやすそうでいいな。
わたしがじっと見ていたら
「ダメですよ。お嬢さまなんだから。公爵令嬢らしく、威厳を持って華やかに」
ブラウンがぴしゃりとわたしをたしなめた。
まあ、そうなんだけど。
こんな辺境の地の公爵家に誰も貴族の人なんか来ないし。誰も見てないって。辺境と言っても、正確に言うとここは交易の街なんだけどね。山と海に囲まれ、大きな川がながれていることから、王都の台所を担っているの。近隣外国との貿易の要にもなっているんだけど、王都からはちょっとというか、だいぶ遠いのよ。
わたしが不満そうにしていたのがばれたらしく。
「誰も見てないってことは誰かが見ているかもしれないってことなんですよ。そもそも、お嬢さまは王子の婚約者ですから、将来王太子妃になるわけですし。教育は……、魔法は長けていらっしゃいますが、マナーはそこそこ。それでもよそのお嬢さまよりも……」
ブラウンのお説教が始まった。ブラウンは教育係兼メイドで、私の小さいころからそばにいてくれる大切な存在。そして、お父さま、お母さまについでブラウンの意見には逆らえないのだった。昔から綺麗で、ピシッとしていたけれど、全然歳をとっているように見えないんだよね。
わたしがじっとブラウンの顔を見ていた。
「お嬢さま、お説教の内容をちゃんと理解してますか」
ブラウンのこめかみには怒りのマークが……。
「す、すいません。聞いてます。でもさ……、ブラウンって歳とらないの?」
ブラウンは私の質問に力が抜けたようで、大きなため息をついた。
「いいですか。お嬢さま。わたくしのことなど構わないでください。いまはお嬢さまの話です」
「はいはい。で、きょうはこのドレス?」
わたしはさっさと着替えてしまうことにした。
ブラウンはまた一つため息をついて、背中のボタンをしめてくれた。
生まれた時から、わたしは王子の婚約者でした。そういう習わしみたい。
詳しく言うと、貿易を中心に栄える王都の台所と呼ばれる領地の公爵家だから、公爵家に女子が生まれたら、王家はそこから妻を娶るという規則があって……。
自動的にわたしは生まれながら婚約者持ちになっちゃったのよね。ほら、よその国に寝返りされたら困るしってことよ。それなら血縁関係つくっとけっていう意味。
でも、わたし、お父さまとお母さまの本当の子ではないの。お父さまとお母さまは結婚してなかなか子どもに恵まれずにいたところ、うちの門のところに赤ちゃんが置いてあったんですって。
それがわたしです。わたしのことを守るように一緒にいたのが、私の部屋で、ででんと寝そべっているこの白いもふもふの犬マカミ。
当時はまだ小さかったらしいんだけど、今はとっても大きな犬になりました。わたしの親友兼ボディガード。
子どもが欲しくてしかたがなかったお母さまとお父さまは、それはそれはわたしのことを可愛がってくれて。
それでも、きっと今頃この子を捨てた親は後悔しているだろうって本当の親を探してくれていたのだけど見つからず……。わたしのことを養女にしてくれたの。
大丈夫、本当にお父さまとお母さまには愛されていて、大切にしてもらってるから、そっちの展開はないわ。
え? そんな展開ってなに?いやいや、こっちの話よ。わからないなら気にしないで。
で、そのうち、弟のフィリップが生まれたのだけど、わたしは弟ラブになり、お父さまもお母さまも私たち二人を分け隔てなく愛してくれているの。
弟のフィリップはね、ほんと見た目は愛らしい天使なのよ。可愛いの。青い目にふわっとした髪の毛。ああ、天使ってこんな感じって思うわよ。魔法薬の研究が好きみたい。頭もとってもいいの。
階段の手すりを滑り降りて大けがしそうになったところマカミに助けられたり、庭で寝転んで星を見続けていたら寝こけて風邪をひいたりと、小さいころの私はけっこう怒られました。
もうしていませんよ、もう18歳だし。レディですから。
……そうね、いまはフィリップに木登りを教えてあげたり、魚つりを伝授したりはしてるけどね。弟に教えてあげてるだけだからいいよね。
婚約しているって言っても、わたし、一回も王子に会ったことないの。王都は遠いしね。
そもそも本当に結婚するのかしら。王子の絵は見ているのよ。うちの奥の部屋にありがたく飾ってあるの。ふだんはカーテンを引いて見えなくなってるけど。
それって、隠してるの?と思うかもしれないけど、ほら、畏れ多いじゃない? っていうことよ。そっちで解釈してね。
お父さまは私のことは嫁にいかなくてもいい、のんびりここでみんなと暮らせばいいって言っているし。
お母さまもわざわざ王太子妃にならなくても、ここで楽しく好きなことをして暮らせばいいわよという考え方なの。
王都に行って、貴族社会に揉まれなくても幸せはあるってことよ。もちろん、私が華やかでキラキラしている貴族社会に適しているなら、お父さまたちも快く送り出してくれたと思うけどね。
いや、結婚しなくていいって言うかな。会えなくなると寂しいって。
お父さまとお母さまが泣いて私を引き留める場面が容易に想像できるわ。
とはいえ、私は18歳。もうすぐ20歳よ。貴族の娘たちは15歳から18歳のころには結婚しているの。だから私、婚期を逃しつつあるといえるとおもう。たぶん、このままだと立派な独身になります。
それならそれで、私自身、別に結婚しなくてもいいかなって思っていて。
いや、相手が結婚したいっていうなら、するけどさ。結婚って一人でするものでもないし。王子がまだしたくないっていうなら、わたしが催促するのも変だよね。
はっきり言えば、王子がいなくても特に困ってないし、今結婚しなくてもいいかなって思うのよ。それに、ロマンスは本で楽しめれば十分よ。お父さまとお母さま、フィリップと離れるなんて、考えられないわ。
考え事しながら、適当に髪の毛をブラッシングしていたら、ブラウンにバレてたわ。
ブラウンの目が怖い。
ちゃんと真面目に髪の毛の手入れをします。はい。
わたしみたいな本好きとか嫌がる男性もいるでしょ。魔法好きとか、野外活動大好きとかとんでもないなんていう男性もいるよね。たぶん。まあ、都会の人とか。王都にいる……、例の、王子とかさ。
「うちの娘がどうして! 何を考えている」
お父さま、うるさい。一階のサロンにいるのだろう。窓が開いているのかもしれなかった。お父さまの怒鳴り声がわたしの部屋にまで聞こえてくる。
「何があったの?」
わたしは顔をしかめた。
「詳しくはわかりかねますが、今朝王都から早馬が到着しまして……。その件だと」
ブラウンは楽しそうに櫛とブラシを巧みに扱い、私の髪を結いあげる。
金色の髪はさらさらしていて、扱いづらいの。しかもロングだし。重いし。いつもブラウンにお願いして、髪の毛をなんとかしてもらっている。
お気に入りはバサバサしない後ろで一本にまとめたおばさん結びだけど、ブラウンが顔をしかめるので、ハーフアップスタイルが多い。
「お嬢さまはとってもおきれいなのに、髪の毛もお肌もいつもお手入れをさぼるから。社交界へデビューするときが楽しみです。腕によりをかけて誰よりも美しくして差し上げたいのに」
ブラウンはボソッとつぶやいた。
聞こえてますよ。ブラウンさん。わかってます。すいません。いつかそのうち社交界へ行きますからね。そのときまでお待ちください。あと、ちゃんとお手入れもするから。
私は視線を泳がせた。
「今日の服で木登りとかしないでくださいね。すぐ破けますからね。この生地、繊細なんですよ。わかってます? あ、でも、こっそり森に行くとかするなら、一声わたしにもかけてください。それからマカミを連れて行ってくださいね。危ないですから」
すっかり信用がない私。すでに森に行くのが前提にされている。
「いかないんですか?」
「行きます行きます。午後から行く予定です」
行動をすべて読まれている。そして、森でマジックポケットを広げているのをブラウンは知っているの。警戒されてるわ。恐るべし、ブラウン。
私はあわてて返事をした。
「魔法の練習するなら、防火用のエプロンかけてくださいね。火の始末はしっかりと。ちゃんとマジックポケットの練習室でやってくださいね。危ないですからね。手に負えないと思ったらすぐに連絡するんですよ」
ブラウンがかっと目を見開いて私を見つめるものだから、私はおもわず大きくうなずいた。
ちょっと前にね、最大魔法量でどれくらい火が出るか試したら、森の一部が燃えちゃってね。焦ったわ。
ほら、限界を知るのは大事っていうじゃない? だから限界を調べていたんだけどさ。
ところが、最大魔法量を使っちゃった後だから、すっからかんで……、どんどん延焼しちゃうし。このまま森も家も燃やしたらどれだけ怒られるかわからないって状態になりまして……。
ふと、フィリップがやけどをしたらどうしよう。オーマイエンジェルが! これはまずいと気が付いたの。
そう思ったら、体の奥底からパワーが湧いてきて……。なんとか水魔法で消し止めました。
そしてお父さまとお母さまとブラウンとマカミに怒られました。セバスにはものすごーいジト目で睨まれました。ちーん。
「アリス……。お前の探求心はだれにも止められないだろう。でも、人に迷惑をかけてはいけないよ。アリスの魔法量は多いからねえ」
お父さまは頭をかかえてます。
「何かやらかしたら早めに連絡しなさい。その魔法はなんのためにあるの。手に負えないとわかったら大人を呼ぶのよ」
お母さまは呆れたように申しておりました。
はい、大変申し訳ございません。言い訳のしようがありません。
さすがに私もシュンとうつむいた。
数日後。青い顔をしたお父さまはマジックポケットをわたしにくださったの。
「うわぁ!」
わたしは歓喜の声を思わずあげた。
「領地が火の海で、ラッセル家おとりつぶしとかは避けたいからな」
お父さまがボソっと呟いてますが、聞こえなかったことにしましょう。
このマジックポケットってすぐれもので……。いわゆる空間魔法の魔道具ってやつなんだけど。空間にポケットをつくる道具で、何でもない空気の中に違う世界の空間をつくることができて、その中になんでも入れることができるの。防火、耐水、暴風もばっちりだし。実は人間も入れちゃうんだよ。
広い空間を作って、魔法の練習場にすれば、誰にも迷惑をかけない。私みたいな底なしの魔法量をもっていて、魔法の練習大好きってひとにはピッタシ。
ただ、むちゃくちゃ高いのよ、これ。よく買ってくれたなぁ。
お父さま、ありがとう!
じっと見つめていたら、お父さまは私の頭を撫でてくれた。
さっそく魔法練習場を作り、その奥には自分だけの図書館を作ったんだ。本は耐火と防水の魔法を最大限かけてあるよ。
1年位前だったかな。本を読むのが好きで、片っ端から読むものだから、本の重みで屋敷の書斎の床が抜けちゃったんだよね。
ははは。今は書斎も修復されて、お父さまと限定された本しか置いてないよ。
マジックポケットには私の趣味の本も置き放題。もうパラダイス。魔法関係の本だけでなくて、ロマンス系の本も部屋に大量に隠していたから、マイ図書館にお引越しさせた。
「なぜなんだ! アリスのどこが悪いんですか」
お父さまがデッドヒートしている。なんか嫌な予感。いつも冷静なのに。
「こんなにうちの娘は可愛いのに!」
それ、王都からの使者にいう?
王都からの使者って、もしかして、王家のこと?
私は聞き耳を立てた。
「お嬢さま、はしたないですよ」
「だって……。私のことみたいだし、気になるんだもの」
「淑女なら動揺せず、涼しいお顔をなさらないと」
ブラウンは横目でちらりと私を見た。
ううう。そうなんだけどさ。わたしだって、涼しい顔なんて、やればできるもんね。すまし顔をつくってみせた。ほらね。できた。
「こっちこそ、お断りだ!」
お父さまはブチ切れている。使者を追い払っているようだ。ドアをバンと開ける音がした。
お母さまは使者がうちの屋敷から出て行くのを見送っている。
私がバルコニーからのぞいていたら、お母さまに見つかった。お母さまの顔が怖い。心の底まで冷えちゃうよ。鬼の形相ってあんな感じなんだろうか。
お母さまは手で中に入っていろと合図した。
私は肩をすくめて部屋の中に戻る。
「奥様に怒られたでしょ」
ブラウンはにこりと微笑んだ。
マカミはあくびをしている。
私は「はあ」とため息をついた。
「アリス! アリス!」
お父さまが私を呼んだ。お父さまが執事を使って、私を呼びに来ないのは珍しい。
私が屋敷をうろうろしていて、聞いていたというのを知っているのもあるだろうけど。やっぱりなにかあったんだと思う。
「はい、ただいま」
私は階段を駆け下りた。レディは急いでいても、もう手すりを滑ることはしないのです。
お父さまはホールまで来ていて、私が階段を下りてくるのを待っていてくれた。いや、監視していた?
「アリス、すまない」
お父さまはわたしに頭を下げた。
ええ? どういうこと?
「どうしたの? お父様」
「婚約が破棄された」
「はあ?」
わたしは思わず声を出した。
「だから、王子がお前との婚約を破棄した」
「はあ、そうですか」
なんだ、そんなことか。驚いたけどほっとしちゃったわ。会ったことないのに断られるとか、失礼だなとは思うけど。まあ、仕方ないかな。
「そうですかってお前。うちのアリスを傷モノにしたんだぞ」
いえ、傷一つついてません。大丈夫です。結婚しないだけですから。
「そうですよ、うちのアリスが。こんなにかわいいのに、何が不満というのですか」
お母さまは涙目だ。
お母さま、泣かないで。そんなにショック受けてないから。びっくりしただけよ。
「よくわからない。ただ、婚約を破棄してほしいと」
「どういうことなんでしょう。詳しく聞かないと納得いかないですわ」
お母さま、綺麗な顔にしわが寄ってますよ。美人台無しですよ。そして、美人が怒るとすっごく怖いんですよ。知ってますか?
お母さまはわたしを抱きしめた。
「かわいそうに。震えてますわ」
いえ、ぜんぜん。ふるえてなんかいません。ちょっとショックですけど。震えているのはお母さまの方で。お母さま、怒りでプルプルしてるじゃないですか。
「ああ、納得できない。うちのアリスを傷つけるなんて」
お父さまは顔を真っ赤にしている。イケメンが台無し。普段はシュッとした爽やかなイケメン。いや、イケオジかな。イケオジ台無し。
「お姉さまがどうかしたのですか」
うちの天使が心配して部屋から出てきた。
「フィリップ~」
私が愛の抱擁をしようとしたら、かわされた。
最近すばしっこいんだよね、さすが10歳。負けないもんね。
フィリップの後ろをとると、私はフィリップを後ろから抱きしめ、フィリップの頭に自分の頬をすりすりした。
「お姉さま、重い」
フィリップはあきらめたように言う。
「ああ、アリスの婚約が破棄されたんだ」
フィリップの目がキランと光った。
「お姉さまの? どうして? 見た目はとっても綺麗なのに。王子の目は節穴か。魔法量はこの国一あるというのになあ。王子はバカじゃないのか。この国の台所を支えるラッセル家を敵に回したいのか」
ぶつぶつつぶやいている。
えっと、ディスられてる? 慰められている? ううん?
お父さまとお母さま、フィリップはショックを受けているみたい。
まあ、私だってちょっとはへこんでいるのよ。だって、王子の婚約者にふさわしいようにって、それなりに教育を受けていたのよ。
ブラウンの厳しい指導、教育……。あの、つらい日々をわたしに返して。
図書室にこもる時間を減らしてまでがんばったのに。魔法レッスンを削ったのに。
王子といっても会ったこともないし、婚約破棄されても全然痛くも痒くもないわ。でも、王子だって私に会ったことがないわけじゃない? それなのに婚約破棄ってひどくない?
もしかして、火事を起こしたのがばれたかしらね。ラッセル公爵家のアリスは変人って噂になっちゃったとか。
ありえるわあ。まあ、しかたないわね。
お父さまとお母さまは怒っているけど。愛のない結婚も嫌だし、愛人をつくられるのもいやだしねえ。
王家との婚約破棄、ありがとうってことかな。これで私の人生、ゆっくりできるってもんよ。魔法を極め、いろいろ試したいんだよね。
私がニヤニヤしていたら、ブラウンがキッとにらんできた。
すいません。
「王子と婚約破棄の後、だれがうちの娘と結婚するって言うんだ。もうアリスは18歳なんだぞ」
お父さま、アリスは結婚しなくていいって言ってませんでしたか?
親の心は複雑なんですねえ。
「王子と同じくらいの方でないと、嫁にやれませんもの。困ったことになったわ」
お母さま、うちにいていいって言ってませんでしたか?
「そうだな。それともアリス、公爵家を継ぐか?」
お父さまに言われ、わたしはぶんぶんと首を横に振った。
「滅相もありません。公爵家はフィリップに」
私は顔をこわばらせながら笑みを浮かべた。
フィリップは心の底から残念そうだ。チッと言ったよね? 聞こえたよ、フィリップ。
私よりフィリップの方がネコかぶるのも上手だし、頭もいいし、領地経営とか、貿易交渉とか、貴族社会とのやりとりとか向いていると思うんだよね。
私、とりあえず魔法研究がしたいし。ずっと魔法研究だけがしたい。
だから結婚できなくても、いいかな。
ちらっとお父さまとお母さまとフィリップを見ると、お父さまたちは大きなため息をついた。
え? 結婚できなくてラッキーって思ってることばれちゃった?
家じゅうに響き渡るお父さまの怒声。
君子危うきに近寄らずっていうじゃない?
きょうは一日お父さまには近づかないことにしよう。
メイドのブラウンに身支度を手伝ってもらっている最中だ。どうしてこんなに服を着なくちゃいけないのかなあ。服なんか最低限着ていればいいのに。なんだったらブラウンのメイド服とかでいいのに。
動きやすそうでいいな。
わたしがじっと見ていたら
「ダメですよ。お嬢さまなんだから。公爵令嬢らしく、威厳を持って華やかに」
ブラウンがぴしゃりとわたしをたしなめた。
まあ、そうなんだけど。
こんな辺境の地の公爵家に誰も貴族の人なんか来ないし。誰も見てないって。辺境と言っても、正確に言うとここは交易の街なんだけどね。山と海に囲まれ、大きな川がながれていることから、王都の台所を担っているの。近隣外国との貿易の要にもなっているんだけど、王都からはちょっとというか、だいぶ遠いのよ。
わたしが不満そうにしていたのがばれたらしく。
「誰も見てないってことは誰かが見ているかもしれないってことなんですよ。そもそも、お嬢さまは王子の婚約者ですから、将来王太子妃になるわけですし。教育は……、魔法は長けていらっしゃいますが、マナーはそこそこ。それでもよそのお嬢さまよりも……」
ブラウンのお説教が始まった。ブラウンは教育係兼メイドで、私の小さいころからそばにいてくれる大切な存在。そして、お父さま、お母さまについでブラウンの意見には逆らえないのだった。昔から綺麗で、ピシッとしていたけれど、全然歳をとっているように見えないんだよね。
わたしがじっとブラウンの顔を見ていた。
「お嬢さま、お説教の内容をちゃんと理解してますか」
ブラウンのこめかみには怒りのマークが……。
「す、すいません。聞いてます。でもさ……、ブラウンって歳とらないの?」
ブラウンは私の質問に力が抜けたようで、大きなため息をついた。
「いいですか。お嬢さま。わたくしのことなど構わないでください。いまはお嬢さまの話です」
「はいはい。で、きょうはこのドレス?」
わたしはさっさと着替えてしまうことにした。
ブラウンはまた一つため息をついて、背中のボタンをしめてくれた。
生まれた時から、わたしは王子の婚約者でした。そういう習わしみたい。
詳しく言うと、貿易を中心に栄える王都の台所と呼ばれる領地の公爵家だから、公爵家に女子が生まれたら、王家はそこから妻を娶るという規則があって……。
自動的にわたしは生まれながら婚約者持ちになっちゃったのよね。ほら、よその国に寝返りされたら困るしってことよ。それなら血縁関係つくっとけっていう意味。
でも、わたし、お父さまとお母さまの本当の子ではないの。お父さまとお母さまは結婚してなかなか子どもに恵まれずにいたところ、うちの門のところに赤ちゃんが置いてあったんですって。
それがわたしです。わたしのことを守るように一緒にいたのが、私の部屋で、ででんと寝そべっているこの白いもふもふの犬マカミ。
当時はまだ小さかったらしいんだけど、今はとっても大きな犬になりました。わたしの親友兼ボディガード。
子どもが欲しくてしかたがなかったお母さまとお父さまは、それはそれはわたしのことを可愛がってくれて。
それでも、きっと今頃この子を捨てた親は後悔しているだろうって本当の親を探してくれていたのだけど見つからず……。わたしのことを養女にしてくれたの。
大丈夫、本当にお父さまとお母さまには愛されていて、大切にしてもらってるから、そっちの展開はないわ。
え? そんな展開ってなに?いやいや、こっちの話よ。わからないなら気にしないで。
で、そのうち、弟のフィリップが生まれたのだけど、わたしは弟ラブになり、お父さまもお母さまも私たち二人を分け隔てなく愛してくれているの。
弟のフィリップはね、ほんと見た目は愛らしい天使なのよ。可愛いの。青い目にふわっとした髪の毛。ああ、天使ってこんな感じって思うわよ。魔法薬の研究が好きみたい。頭もとってもいいの。
階段の手すりを滑り降りて大けがしそうになったところマカミに助けられたり、庭で寝転んで星を見続けていたら寝こけて風邪をひいたりと、小さいころの私はけっこう怒られました。
もうしていませんよ、もう18歳だし。レディですから。
……そうね、いまはフィリップに木登りを教えてあげたり、魚つりを伝授したりはしてるけどね。弟に教えてあげてるだけだからいいよね。
婚約しているって言っても、わたし、一回も王子に会ったことないの。王都は遠いしね。
そもそも本当に結婚するのかしら。王子の絵は見ているのよ。うちの奥の部屋にありがたく飾ってあるの。ふだんはカーテンを引いて見えなくなってるけど。
それって、隠してるの?と思うかもしれないけど、ほら、畏れ多いじゃない? っていうことよ。そっちで解釈してね。
お父さまは私のことは嫁にいかなくてもいい、のんびりここでみんなと暮らせばいいって言っているし。
お母さまもわざわざ王太子妃にならなくても、ここで楽しく好きなことをして暮らせばいいわよという考え方なの。
王都に行って、貴族社会に揉まれなくても幸せはあるってことよ。もちろん、私が華やかでキラキラしている貴族社会に適しているなら、お父さまたちも快く送り出してくれたと思うけどね。
いや、結婚しなくていいって言うかな。会えなくなると寂しいって。
お父さまとお母さまが泣いて私を引き留める場面が容易に想像できるわ。
とはいえ、私は18歳。もうすぐ20歳よ。貴族の娘たちは15歳から18歳のころには結婚しているの。だから私、婚期を逃しつつあるといえるとおもう。たぶん、このままだと立派な独身になります。
それならそれで、私自身、別に結婚しなくてもいいかなって思っていて。
いや、相手が結婚したいっていうなら、するけどさ。結婚って一人でするものでもないし。王子がまだしたくないっていうなら、わたしが催促するのも変だよね。
はっきり言えば、王子がいなくても特に困ってないし、今結婚しなくてもいいかなって思うのよ。それに、ロマンスは本で楽しめれば十分よ。お父さまとお母さま、フィリップと離れるなんて、考えられないわ。
考え事しながら、適当に髪の毛をブラッシングしていたら、ブラウンにバレてたわ。
ブラウンの目が怖い。
ちゃんと真面目に髪の毛の手入れをします。はい。
わたしみたいな本好きとか嫌がる男性もいるでしょ。魔法好きとか、野外活動大好きとかとんでもないなんていう男性もいるよね。たぶん。まあ、都会の人とか。王都にいる……、例の、王子とかさ。
「うちの娘がどうして! 何を考えている」
お父さま、うるさい。一階のサロンにいるのだろう。窓が開いているのかもしれなかった。お父さまの怒鳴り声がわたしの部屋にまで聞こえてくる。
「何があったの?」
わたしは顔をしかめた。
「詳しくはわかりかねますが、今朝王都から早馬が到着しまして……。その件だと」
ブラウンは楽しそうに櫛とブラシを巧みに扱い、私の髪を結いあげる。
金色の髪はさらさらしていて、扱いづらいの。しかもロングだし。重いし。いつもブラウンにお願いして、髪の毛をなんとかしてもらっている。
お気に入りはバサバサしない後ろで一本にまとめたおばさん結びだけど、ブラウンが顔をしかめるので、ハーフアップスタイルが多い。
「お嬢さまはとってもおきれいなのに、髪の毛もお肌もいつもお手入れをさぼるから。社交界へデビューするときが楽しみです。腕によりをかけて誰よりも美しくして差し上げたいのに」
ブラウンはボソッとつぶやいた。
聞こえてますよ。ブラウンさん。わかってます。すいません。いつかそのうち社交界へ行きますからね。そのときまでお待ちください。あと、ちゃんとお手入れもするから。
私は視線を泳がせた。
「今日の服で木登りとかしないでくださいね。すぐ破けますからね。この生地、繊細なんですよ。わかってます? あ、でも、こっそり森に行くとかするなら、一声わたしにもかけてください。それからマカミを連れて行ってくださいね。危ないですから」
すっかり信用がない私。すでに森に行くのが前提にされている。
「いかないんですか?」
「行きます行きます。午後から行く予定です」
行動をすべて読まれている。そして、森でマジックポケットを広げているのをブラウンは知っているの。警戒されてるわ。恐るべし、ブラウン。
私はあわてて返事をした。
「魔法の練習するなら、防火用のエプロンかけてくださいね。火の始末はしっかりと。ちゃんとマジックポケットの練習室でやってくださいね。危ないですからね。手に負えないと思ったらすぐに連絡するんですよ」
ブラウンがかっと目を見開いて私を見つめるものだから、私はおもわず大きくうなずいた。
ちょっと前にね、最大魔法量でどれくらい火が出るか試したら、森の一部が燃えちゃってね。焦ったわ。
ほら、限界を知るのは大事っていうじゃない? だから限界を調べていたんだけどさ。
ところが、最大魔法量を使っちゃった後だから、すっからかんで……、どんどん延焼しちゃうし。このまま森も家も燃やしたらどれだけ怒られるかわからないって状態になりまして……。
ふと、フィリップがやけどをしたらどうしよう。オーマイエンジェルが! これはまずいと気が付いたの。
そう思ったら、体の奥底からパワーが湧いてきて……。なんとか水魔法で消し止めました。
そしてお父さまとお母さまとブラウンとマカミに怒られました。セバスにはものすごーいジト目で睨まれました。ちーん。
「アリス……。お前の探求心はだれにも止められないだろう。でも、人に迷惑をかけてはいけないよ。アリスの魔法量は多いからねえ」
お父さまは頭をかかえてます。
「何かやらかしたら早めに連絡しなさい。その魔法はなんのためにあるの。手に負えないとわかったら大人を呼ぶのよ」
お母さまは呆れたように申しておりました。
はい、大変申し訳ございません。言い訳のしようがありません。
さすがに私もシュンとうつむいた。
数日後。青い顔をしたお父さまはマジックポケットをわたしにくださったの。
「うわぁ!」
わたしは歓喜の声を思わずあげた。
「領地が火の海で、ラッセル家おとりつぶしとかは避けたいからな」
お父さまがボソっと呟いてますが、聞こえなかったことにしましょう。
このマジックポケットってすぐれもので……。いわゆる空間魔法の魔道具ってやつなんだけど。空間にポケットをつくる道具で、何でもない空気の中に違う世界の空間をつくることができて、その中になんでも入れることができるの。防火、耐水、暴風もばっちりだし。実は人間も入れちゃうんだよ。
広い空間を作って、魔法の練習場にすれば、誰にも迷惑をかけない。私みたいな底なしの魔法量をもっていて、魔法の練習大好きってひとにはピッタシ。
ただ、むちゃくちゃ高いのよ、これ。よく買ってくれたなぁ。
お父さま、ありがとう!
じっと見つめていたら、お父さまは私の頭を撫でてくれた。
さっそく魔法練習場を作り、その奥には自分だけの図書館を作ったんだ。本は耐火と防水の魔法を最大限かけてあるよ。
1年位前だったかな。本を読むのが好きで、片っ端から読むものだから、本の重みで屋敷の書斎の床が抜けちゃったんだよね。
ははは。今は書斎も修復されて、お父さまと限定された本しか置いてないよ。
マジックポケットには私の趣味の本も置き放題。もうパラダイス。魔法関係の本だけでなくて、ロマンス系の本も部屋に大量に隠していたから、マイ図書館にお引越しさせた。
「なぜなんだ! アリスのどこが悪いんですか」
お父さまがデッドヒートしている。なんか嫌な予感。いつも冷静なのに。
「こんなにうちの娘は可愛いのに!」
それ、王都からの使者にいう?
王都からの使者って、もしかして、王家のこと?
私は聞き耳を立てた。
「お嬢さま、はしたないですよ」
「だって……。私のことみたいだし、気になるんだもの」
「淑女なら動揺せず、涼しいお顔をなさらないと」
ブラウンは横目でちらりと私を見た。
ううう。そうなんだけどさ。わたしだって、涼しい顔なんて、やればできるもんね。すまし顔をつくってみせた。ほらね。できた。
「こっちこそ、お断りだ!」
お父さまはブチ切れている。使者を追い払っているようだ。ドアをバンと開ける音がした。
お母さまは使者がうちの屋敷から出て行くのを見送っている。
私がバルコニーからのぞいていたら、お母さまに見つかった。お母さまの顔が怖い。心の底まで冷えちゃうよ。鬼の形相ってあんな感じなんだろうか。
お母さまは手で中に入っていろと合図した。
私は肩をすくめて部屋の中に戻る。
「奥様に怒られたでしょ」
ブラウンはにこりと微笑んだ。
マカミはあくびをしている。
私は「はあ」とため息をついた。
「アリス! アリス!」
お父さまが私を呼んだ。お父さまが執事を使って、私を呼びに来ないのは珍しい。
私が屋敷をうろうろしていて、聞いていたというのを知っているのもあるだろうけど。やっぱりなにかあったんだと思う。
「はい、ただいま」
私は階段を駆け下りた。レディは急いでいても、もう手すりを滑ることはしないのです。
お父さまはホールまで来ていて、私が階段を下りてくるのを待っていてくれた。いや、監視していた?
「アリス、すまない」
お父さまはわたしに頭を下げた。
ええ? どういうこと?
「どうしたの? お父様」
「婚約が破棄された」
「はあ?」
わたしは思わず声を出した。
「だから、王子がお前との婚約を破棄した」
「はあ、そうですか」
なんだ、そんなことか。驚いたけどほっとしちゃったわ。会ったことないのに断られるとか、失礼だなとは思うけど。まあ、仕方ないかな。
「そうですかってお前。うちのアリスを傷モノにしたんだぞ」
いえ、傷一つついてません。大丈夫です。結婚しないだけですから。
「そうですよ、うちのアリスが。こんなにかわいいのに、何が不満というのですか」
お母さまは涙目だ。
お母さま、泣かないで。そんなにショック受けてないから。びっくりしただけよ。
「よくわからない。ただ、婚約を破棄してほしいと」
「どういうことなんでしょう。詳しく聞かないと納得いかないですわ」
お母さま、綺麗な顔にしわが寄ってますよ。美人台無しですよ。そして、美人が怒るとすっごく怖いんですよ。知ってますか?
お母さまはわたしを抱きしめた。
「かわいそうに。震えてますわ」
いえ、ぜんぜん。ふるえてなんかいません。ちょっとショックですけど。震えているのはお母さまの方で。お母さま、怒りでプルプルしてるじゃないですか。
「ああ、納得できない。うちのアリスを傷つけるなんて」
お父さまは顔を真っ赤にしている。イケメンが台無し。普段はシュッとした爽やかなイケメン。いや、イケオジかな。イケオジ台無し。
「お姉さまがどうかしたのですか」
うちの天使が心配して部屋から出てきた。
「フィリップ~」
私が愛の抱擁をしようとしたら、かわされた。
最近すばしっこいんだよね、さすが10歳。負けないもんね。
フィリップの後ろをとると、私はフィリップを後ろから抱きしめ、フィリップの頭に自分の頬をすりすりした。
「お姉さま、重い」
フィリップはあきらめたように言う。
「ああ、アリスの婚約が破棄されたんだ」
フィリップの目がキランと光った。
「お姉さまの? どうして? 見た目はとっても綺麗なのに。王子の目は節穴か。魔法量はこの国一あるというのになあ。王子はバカじゃないのか。この国の台所を支えるラッセル家を敵に回したいのか」
ぶつぶつつぶやいている。
えっと、ディスられてる? 慰められている? ううん?
お父さまとお母さま、フィリップはショックを受けているみたい。
まあ、私だってちょっとはへこんでいるのよ。だって、王子の婚約者にふさわしいようにって、それなりに教育を受けていたのよ。
ブラウンの厳しい指導、教育……。あの、つらい日々をわたしに返して。
図書室にこもる時間を減らしてまでがんばったのに。魔法レッスンを削ったのに。
王子といっても会ったこともないし、婚約破棄されても全然痛くも痒くもないわ。でも、王子だって私に会ったことがないわけじゃない? それなのに婚約破棄ってひどくない?
もしかして、火事を起こしたのがばれたかしらね。ラッセル公爵家のアリスは変人って噂になっちゃったとか。
ありえるわあ。まあ、しかたないわね。
お父さまとお母さまは怒っているけど。愛のない結婚も嫌だし、愛人をつくられるのもいやだしねえ。
王家との婚約破棄、ありがとうってことかな。これで私の人生、ゆっくりできるってもんよ。魔法を極め、いろいろ試したいんだよね。
私がニヤニヤしていたら、ブラウンがキッとにらんできた。
すいません。
「王子と婚約破棄の後、だれがうちの娘と結婚するって言うんだ。もうアリスは18歳なんだぞ」
お父さま、アリスは結婚しなくていいって言ってませんでしたか?
親の心は複雑なんですねえ。
「王子と同じくらいの方でないと、嫁にやれませんもの。困ったことになったわ」
お母さま、うちにいていいって言ってませんでしたか?
「そうだな。それともアリス、公爵家を継ぐか?」
お父さまに言われ、わたしはぶんぶんと首を横に振った。
「滅相もありません。公爵家はフィリップに」
私は顔をこわばらせながら笑みを浮かべた。
フィリップは心の底から残念そうだ。チッと言ったよね? 聞こえたよ、フィリップ。
私よりフィリップの方がネコかぶるのも上手だし、頭もいいし、領地経営とか、貿易交渉とか、貴族社会とのやりとりとか向いていると思うんだよね。
私、とりあえず魔法研究がしたいし。ずっと魔法研究だけがしたい。
だから結婚できなくても、いいかな。
ちらっとお父さまとお母さまとフィリップを見ると、お父さまたちは大きなため息をついた。
え? 結婚できなくてラッキーって思ってることばれちゃった?
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