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第二章

金貨を貰いました

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「で、お前はその変な液で倒したと」

「は、はい…」

「それはそんな危険なのかねぇ。どう見ても水にしか見えないんだけどねぇ」

 今、俺はギルドに尋問を受けていた。

「で、お前がこれでシーゴブリンを倒したと。本当に?」

 俺はシーゴブリンを倒してないと思われてるみたいだ。

「なんでそんな思うんですか?」

「俺たちはね、シーゴブリンを倒した人に大量の金貨を渡せって王様から言われて前もってギルドの金庫に保管してあるの。で、お前が倒して無いんならギルドの物になるんだよ。正直君が倒したか倒してないかなんてどうでもいいから倒したって言ってくれない?」

 なるほど。こいつ等は俺に向けた金をギルドの物にしようとしてる訳か。
 しかし俺もはいそうですか、と引き下がれない。
 あいにく俺は金に貪欲なのだ。
 それに今は金に困ってるし。

「で、倒したの?あんな化物を。どーせ倒してないんでしょ。」

 身近にいる魔物はゴブリン、コボルト、オーク、オーガ、あとたまに小龍しか居ないんだそうだ。
 そして、その中でもシーゴブリンは頭一つ飛び抜けてる、下手したら魔王や魔人の被害よりこっちの方が大変かもしれないとバルが教えてくれた。
 ならば、王からの報酬はいくら位になるんだろう。
 日本円で1億位になってんのかな。
 こっちの物価とか換算レートが分からないからどうなるか分からんけど。
 取り敢えずこういう時の為にアンモニアの予備は持っておくことだ。
「じゃ、そんな信じられないならその水を鼻の下に塗ってください。それで全て分かるはずです」

「ふん。こんなもの効果がある訳…っ!
ぎゃあぁぁあああ!水!水!顔を洗う水を…」

 そう言って部屋から飛び出して行った。
 ドアは開けっ放しだし、俺の尋問はどうなるんだろう。
 ま、金貨手に入るみたいだし、帰らないけどね。
 
 十数分後、別の男の人がやって来た。
 先程の男とは違う、気品があって清潔そうな人だ。

「こんにちは。僕はギルシュ・マクベーツ。ここのギルドでギルドマスターをやっている者だ。先程はうちの馬鹿が済まない。」

 ギルドマスターだった。
 って、なんでギルドマスターなんかが?

「シーゴブリンを倒した報酬金がこれだ。」

 そう言って、先程から気になっていた、ギルド職員らしき人達が10人がかりで、は支えている150リットルは有るズタ袋。
 それが机の横に運ばれる。

「これは、今すぐ貰ってくれて構わないんだが…ちょっと商談があって…」

 ほほう?でも俺って商売になる事やったっけ…

「先程の透明の水、100ミリリットルで良いからうちのギルドに売ってもらえないだろうか。」

 なんだ。そゆことね。
 
「王や重臣を他の地域に送る時、是非ゴブリン避けに使いたい。それに、先程のアイツがかなりの水で薄めてくれたが、それでも臭かった。鼻がいいはずのゴブリンにはもってこいなんだ。頼む。金額はそちらが決めて良い。売ってくれないか?」

 ま、金額決められるんならいいか。ただ一つの問題が…

「えーと、俺、この世界に連れて来られてからお金を触ってないんです。なので価値が分からなくて…金額は大体100ミリリットルで普通くらいの宿2泊分で良いですか?」

 正直、かなりふっかけてみた。
 大体、宿が1泊3000円くらいだとしても原価の6倍だ。
 もしアンモニア水がこの世界で流通しているならばこの価格じゃ通らない。
 あと、宿2泊で大体の金銭感覚を掴んでおきたいってとこもある。
 どっちみち、異常な価格だけど…
 通ったならまさに俺だけの特権だ。
 …ただ他の勇者たちよりレベルが自分だけ低い気もするけどね…
 そして、話していて、容量単位が同じなのが気になった。
 昔、地球から来た人が広めたのだろうか…
 
「分かった。それと、出来れば明後日早速大臣が隣の街に帰るので使いたいので、あるのならでいいが1000ミリリットル程度欲しいのだが…」

「いいですよ。」

「本当か!?では、今日の夜以降に頼む。色々と有難うな。ほんと君は不思議な力を持ってるね…

あ、忘れる所だった。これ、きみのチームのリーダーに渡しといて。」

 そう言って書類を渡すとギルドマスターは足早に去って行った。
 すると、この前ギルドに来た時、クエスト受付に立っていた人と同じ格好をした人が「お金はこの腕輪で触ってください」
と、腕輪を俺の腕に着ける。
 ベル達も着けていた気がする。
 クエストの時は流石に外してたけど。

「こちらに触りながら硬貨に触れ、どれだけ入れたいか念じるとこの中に収納されます。そして、出す時も同様です。また、2連続でここの透明なのところを触れると今の残高が表示されます」

 凄いな。腕輪ATMだ。

「ですが…この量だと制限が掛かってしまうのでご手数掛けますがギルド銀行受付まで行ってもらえますか?」
「あ、はい。分かりました」

  俺は支持された通り受付に行こうとするのだが、重すぎて動かせなかった。
係の人達に手伝ってもらって受付に行くとベルが居た。
 ベルも15リットルはあるズタ袋を下げている。
「あ、陽和も貰ったの?私は金貨一枚だとなんか物足りなく感じるか…って何それ!そんなあるんなら金貨で貰っても良かったじゃん!」

 俺の持っている袋を指差してそう言った。
 そしてもうベルは受付を済ませたらしく、硬貨の袋を受付に置くと、袋ごと硬貨が消えた。そして、ベルが開いていた腕輪の画面には、
銀貨1057枚
 と書かれている。
 恐らく、57枚がもともと持っていた銀貨だろう。
 それに、ベルがとても嬉しそうにしている。

そして、俺の番になった。

「はい。ハルトさん。ギルドマスターから聞いてますよー。…にしても、この量だと受付の机に置けませんね…ちょっと手伝ってくれる人を呼んで来るので待っててください」

 受付のルリと書かれた名札の人が言った。
 二分後、数十人の人が集まり、袋を開ける。
 そうなのだ。袋は米のようにしっかりと閉じられていて、中の硬貨が出ないようになっている。
「それじゃ、開けますよー。皆、枚数間違えないでねー」

 そう言って、袋をバサッと開ける。
 すると、やはり大量の貨幣が飛ぶ。
 しかしそれはすべて

  金色に光っていた。

「「「「「え?」」」」」

 それを見ていた全員の声が重なる。
 そこにギルドマスターが来る。

「ああ、すまんな。」

 なんだ、間違えたのか、そう思い、そこに居た全員が胸を撫で下ろす。

「これじゃ、数えにくいよな。金貨6500枚で通してくれるか。」

 受付にそう言った。
 その場にいた全員が固まる。
 そして俺はあまりよく分からず、ずっとぼーっとして話を聞いていた。

   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇    

 俺はその後、アンモニア水を入荷し部屋に戻るとベルがいた。
 そしてベルは俺に話し始める
「あのねー陽和ねー金貨6500枚って凄い金額なんだよ~。ほんと~にね、王城が建てられるくらいの金額なんだよ~」

 ほうほう。
 ベルの話を聞くと、
 銅貨1000枚で銀貨1枚、
 銀貨1000枚で金貨一枚だという。
 そして、アイテム購入では、10円ガムが
銅貨1枚だったから、銅貨の価値は日本円にして10円なのだろう。
ならば、金貨は一枚で1000万円。
 するとベルも1000万も持っている事になるが、それよりヤバイのは俺だ。650億もの金額を異世界生活初めてすぐに持つ事になる。

「だからねー、こういう事があるとねー冒険者は豪華に使い過ぎちゃう事があるんだって~。だから、ちゃんと考えてね~」
 ベルの目が、かなり真剣だ。
 3日前あったばかりだが、この3日間でこんな目をしているのはシーゴブリンとの戦闘以来だ。
 恐らく、ベルは俺に宝くじの当選者を心配して声をかけるような事をしてくれてるんだと思う。
 そんな形でかなりの大金を手に入れた。


 しかし、本当に大変だったのはその夜だ。

 その夜、何故か分からないが王様に呼ばれた。

「陽和よ。何故自分が呼ばれたのか分からないであろう。…その、言い難いんじゃが、シーゴブリンを倒した事で褒賞も、貰っておるじゃろう。あのな、少しだな、王城の中では召喚者たちを良く思ってないものがおるのじゃ。そして、その人達が陽和を捕まえ、人質に勇者達の戦意を削ぐ計画をしているのを耳にした。なので、っ…王城から出て行ってくれないかの…」

 なるほど。理解した。ここは自分が楽になるように身を引くべきであろう。

「分かりました。」
「そうか。有難うな。では、祈里陽和の王城の出入り、勇者の連れを名乗る事、勇者との面会を只今30刻より禁ずる。早速城から立ち去れ。王城はお前の様な永久レベル1がいる場所では無い」
「え?」

 王様は一瞬笑顔を浮かべた後、生ゴミを見るかのような表情で言い切った。
 困惑してると衛兵に両脇を捕まれ外に放り出されてしまった。
 早く問題はつまみ出したかったんだろう。ただ、しかし、
 …どうしようか。
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