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資産家令嬢誘拐事件
資産家令嬢誘拐事件11『決着』
しおりを挟む「今から面白いショーを見せてやるよ……」
犯人の不気味な声が響き渡る中、優斗の胸は高鳴っていた。美夏の命が、犯人の手の中にある。
優斗はどうにかして状況を打開しなければならないと心の中で叫んでいたが、目の前に立ちはだかる現実があまりにも重くのしかかっていた。
---
その頃、警視庁の捜査本部では、翔がモニターに映し出された映像の細部を解析していた。
佐伯の罪を暴露するネットライブの背後には、わずかに聞き取れる音声が混じっていた。
翔はその音に集中していた。
警察官や捜査官たちのざわめきも、今は聞こえていないかのようだった。
「……この音……何かが反響している……」
翔は音声データをさらに解析し、別荘の映像にかすかに聞こえていた複数の音を分析していた。
その音は、金属の衝突音や人々の足音のようなもので、特定の建物から聞こえてくるものだと推測できる。
都会のビルや工事現場にある特有の音だった。
「優斗……この音がカギだ。犯人は今、都心の建物に潜んでいるかもしれない」
翔はすぐに優斗に連絡を取り、彼の考えを伝えた。優斗も一瞬の希望を感じ取った。
「都心か……その場所は特定できそうですか?」
「まだだが、この音の反響から建物の構造を推測している。少し待ってくれ……」
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一方で、麗子班とSATも犯人の潜伏場所に突入するために動いていた。
翔の解析が進む中、麗子は緊張した面持ちで待機していた。
犯人がどこに潜んでいるかを特定できれば、一気に行動を起こせる。
「翔の解析が正しければ、犯人は近くに潜んでいる可能性が高い。今までの誘拐事件とは違う。なんとしても美夏ちゃんを助け出さないといけない……」
麗子は冷静さを保ちながらも、内心では焦りを感じていた。
美夏の命がかかっているという現実が、彼女の中で時間のプレッシャーを強くしていた。
---
その間、翔はついに音声解析を完了し、犯人の潜伏場所を特定する手がかりをつかんだ。
「課長、犯人の潜伏先が特定できました。犯人は新宿区にあるマンションの中にいる可能性が高い。音の反響から推測すると、5階部分に潜んでいると思われます。その中に一件、架空名義で契約された部屋があります。507号室です。」
「了解した。すぐに山口班に伝える」
課長はすぐに麗子に連絡を入れ、マンションの場所と犯人が潜んでいる可能性の高い部屋を伝えた。
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麗子班は、指定されたマンションに到着し、すぐに突入の準備を進めた。
慎重に進む捜査員たちは、犯人が潜んでいる5階に向かっていた。
「翔の情報が正しければ、ここに犯人がいるはずね……」
麗子は静かに捜査員に指示を出し、彼らと共に5階へと進んだ。
マンションの中は不気味な静けさに包まれていたが、捜査員たちは慎重に足を運んでいく。
「突入する」
ドアが静かに開けられ、捜査員たちは一斉に部屋の中に入った。
そこで見たものは、予想を超える光景だった。
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田中勝也が、部屋の片隅で拳銃を手に持ち、すでに自ら命を絶っていた。
「……遅かった……」
麗子はその姿を見て、一瞬息を呑んだが、すぐに冷静さを取り戻した。
田中の傍には一枚の紙切れが残されていた。
それは、彼の親が失踪したことに関連している内容だった。
「翔、田中勝也……彼が犯人だった。だが、自ら命を絶ったわ……」
麗子は無線を通じて状況を伝えたが、その声には虚しさがにじんでいた。
麗子はマンションの奥の部屋に向かった。
ドアの隙間から漏れる光に、美夏のかすかな気配を感じる。
慎重にノブを回し、ドアをゆっくりと開けると、そこには縛られた状態でぐったりしている美夏の姿があった。
彼女の目は不安に満ちていたが、麗子と目が合った瞬間、安堵の表情が浮かんだ。
「大丈夫、もう安全よ。」
麗子はすぐに駆け寄り、美夏の縄を解いた。
手早く彼女を支えながら、外へと導く。
「さあ、帰りましょう」
麗子は美夏を抱きかかえながら、慎重に部屋を後にした。
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その頃、翔はパソコンの画面越しに田中勝也の過去を確認していた。
彼の親、田中一夫は、かつて投資家であり、佐伯と取引をしていたが、突然失踪したまま行方がわからなくなっている。
それがこの事件にどのように繋がっているのか――さらに詳しく佐伯に確認する必要があった。
「ただ……もう一点、どうしても気になることがある……」
翔はまだ誰も気づいていない、この誘拐事件の一面を探ろうと試みていた。
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つづく
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