リモート刑事 笹本翔

雨垂 一滴

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キャンプ場連続殺人事件

キャンプ場連続殺人事件14『真実』

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 花守山キャンプ場の奥深く。静けさを裂くように、緊迫した空気が漂っていた。

 和也は囮である女性警察官の顔をじっと見つめ、その目には徐々に疑念が浮かび上がっていた。

「君は…本当に舞なのか?」
 和也の声が冷たく響く。

 その瞬間、彼の瞳が鋭く光り、彼の中で何かが弾けたようだった。

「あんた、舞じゃない…」

 和也は急に一歩後ろへ下がり、周囲を警戒し始めた。背中に冷たい汗が流れ、心臓の鼓動が早まる。

 目の前の女性は舞ではない、そして、何かがおかしいことに気づいている。

「動くな、和也!」
優斗が茂みから飛び出し、拳銃を構えながら叫ぶ。

麗子班の刑事たちも次々と姿を現し、和也を取り囲む。

 和也は一瞬、驚きと恐怖の入り混じった表情を浮かべる。

「違う…俺は違うんだ…」

 彼の声は震えていたが、その目には狂気が宿っていた。

「俺は…脅されてたんだ…俺は犯人じゃない!」

「何を言ってるの!」
 麗子が怒鳴り、和也に近づく。

「今さら何を…」

「違うんだ!俺はターゲットを呼び出す役目をしてただけだ! 逆らえなかった!」
 和也は後ずさりしながら叫ぶ。

 その声には本気で怯えたような響きがあり、翔の背筋に冷たいものが走る。

「まずは落ち着け。話を聞くから。真実を話せばいい。」
 優斗が慎重に言葉を選び、説得を試みる。

 だが、和也の目は焦点を失い、完全に恐怖に支配されていた。

「無理だ…俺はもう…終わりなんだ…!」

 和也は突然、身を翻し、山道の崖の方へと全力で走り出した。

「止まりなさい!」
麗子が叫びながら追いかけるが、和也の足は止まらない。

 崖の縁にたどり着き、彼は振り返って捜査員たちを見下ろした。

「奴は…奴は俺を必ず見つける…だから俺は…」
 和也は短い息を吐き、狂気じみた笑みを浮かべた。

「俺は自由になる…!」

 そして、その瞬間、和也は崖から身を投げた。

「やめろーッ!」
優斗の叫びが空気を裂く。

 だが、和也の体は宙を舞い、深い谷底へと消えていった。

 時間が止まったような静寂が、森の中に広がる。

 麗子はその場で立ち尽くし、和也が飛び降りた崖を見つめたまま動けなかった。

「まさか…」
 翔もリモート越しにその一部始終を見ていた。

 和也の最後の言葉が彼の頭の中で繰り返される。

「自由になる… アイツは誰かの駒だったのか…?」
 翔は深く息を吐きながら、思考を巡らせる。

 新たな謎が浮かび上がる中で、捜査はさらなる深みへと突き進んでいく。

 そして、和也の死は新たな幕開けを告げるかのように、闇の中に沈んでいった――。


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つづく


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