リモート刑事 笹本翔

雨垂 一滴

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キャンプ場連続殺人事件

キャンプ場連続殺人事件12『張込』

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 翔はパソコンの前に座り続けていた。

 ここ二日間、ほとんど徹夜の状態でモニターに目を凝らしている。

 犯人の動きを追うため、自然に関する女性のアカウントをマークするプログラムを稼働させ、異常な動きを待っていた。

 目は赤く充血し、疲労が溜まっているが、彼の集中力は途切れることなく続いていた。

 その作業はまさにリモート張り込みとも言えた。

 そして、ついにその時が来た。

「これだ…!」

 翔は画面に浮かび上がった一つのコメントに目を奪われた。

 ある捨てアカウントが、桜井舞の投稿に対して「今日、花守山キャンプ場でお会いしましょう」と書き込んでいた。明らかに怪しいメッセージだ。

 翔は即座に優斗に連絡を入れた。
「優斗、犯人が動いた。桜井舞に接触している。花守山キャンプ場で待ち合わせのようだ。」

 優斗の声がすぐに返ってくる。
「了解。課長に報告する。」

 優斗からの報告を受けた課長は即座に対応に移った。

「緊急配備をかける!全員、すぐに準備だ!花守山キャンプ場に急行する!」

 捜査本部は一気に慌ただしくなり、刑事たちが次々に出動準備を整えていく。

 一方、別の取調室では、山口麗子が佐藤剛への取り調べを続けていた。

 だが、その最中に捜査本部が急に慌ただしくなったことに気づく。

 彼女は不審に思い、近くにいた刑事に声をかける。

「一体何があったの?」
 麗子が尋ねると、刑事がやや緊張した様子で答えた。

「翔さんが、SNSでホシが動いたことを突き止めました。どうやら、花守山キャンプ場で待ち合わせをしているようです。」

「なんですって…?」
 麗子の顔が一瞬強ばる。

 取り調べ中にSNSで犯人が接触していたとは、彼女の取り調べが無駄だったことを示している。

 彼女は恥をかかされたように感じ、翔に対して一層の敵対心を燃やした。

「くそ、またあの男に出し抜かれたか…!」



 その頃、翔は桜井舞に直接連絡を入れていた。

 電話越しに、桜井の安全を確保するための準備を進める。

「桜井さん、あなたに接触してきた人物について詳しく話していただけますか?」
 翔は慎重に言葉を選びながら尋ねる。

「ええ、彼から名刺をもらいました。ちょっと待ってください…」
 桜井はスマホで撮った名刺の画像を送ってくる。

 翔が画像を確認すると、そこには樹葉のマークがはっきりと印刷されていた。

「このマーク…間違いない。」
 翔は思わず小さくつぶやいた。

「桜井さん、その男との待ち合わせには行かないでください。私たちが代わりに対応します。警察がすぐに行きますので、安心してください。」

「わかりました…でも、私、大丈夫ですか?」

 桜井の声には不安が滲んでいたが、翔の言葉に従う覚悟が感じられた。

「大丈夫です。我々警察が必ず守ります。」
 翔は強く言い切った。

 全ての準備は整った。
 後は、犯人が現れるのを待つだけだ。

 捜査本部の緊張感が高まる中、翔の心は冷静でありながらも、内に燃える闘志が宿っていた。

 ホシを追い詰めるための最後の準備が整った今、彼らは決戦の時を待っている――

 犯人との対決の日は、すぐそこまで迫っていた。


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つづく


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