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第2章
警告Ⅲ
しおりを挟むしばらく流れる沈黙。
誰もが放心状態で言葉が出ない中伝轟は大きなため息をつき、ドカッとその場にあぐらをかいて座った。
「ったく…厄介な季節だな冬ってのは。」
顔を歪ませ頭を搔く。
炎心はとても浮かない表情でその言葉を聞いている。
「……」
友愛も礼々も複雑な顔で黙りこくる。
無理もない、と咲恵は思っていた。
「(冬と春って仲が良かったんだね…特にあの艶鐘って奴と友愛は相当…)」
そう思うと胸が痛くなった。
突然敵同然で現れた艶鐘は
春幸殺しに関与したであろう趣旨の話を嬉しそうに話していた。
それでも友愛は艶鐘に敵意を向けられなかった。
だが何より咲恵が気になったのは艶鐘であった。
「んで、お前さん。なかなかやるじゃねぇか!!しかもよぉ!おもしれぇ武器じゃねえか!」
打って変わって伝轟が感心の目を咲恵に向ける。どこをどう見てもハリセン。
先程まで繰り広げられていた考え事はパッと消えた。
「私にも何が何だか…でも…」
咲恵はゆっくりと視線を自分が持っているハリセンに向ける。
「(あぁ…)」
突然現れた光に
懐かしさを覚えた。
あれは確かに…
「あぁ、あいつには感謝しなきゃな」
まるで見透かしたような伝轟の言葉。
「(春幸っ…!!!)」
その言葉に鼻がツーンとなる。
出そうになるものを必死に抑える為歯を食いしばった。
「(いくらなんでももう泣きすぎ…我慢しろ!!)」
自分に言い聞かせる。
「恐らくだが、欠片か何かじゃねぇか?春幸の【心】の。」
「「春が君の!?」」
礼々と友愛が大きな声で反応する。
「人間にはまず武器なんてもんは召喚できん。俺らの武器は昔居た神々がもしもの時用に備えてくれたモンだからな。」
「そうなんすか!…じゃあ俺にも武器が…!!」
炎心は心が晴れたように伝轟の話を聞いた。
「んで、そいつを召喚するには自分自身で闘う理由を見つけなきゃなんねえんだわ…礼々、お前の武器は確かに『不完全』だ。」
「不完全…」
礼々がポツリと呟く。
結局礼々が持っていた剣は凍ったまま。
「私全然気が付かなかったけど…いつ礼々は武器を召喚したの?」
友愛が礼々に聞く。
「……春が君が死んで…助けられなかった怒りでいっぱいで…あいつ(咲恵)が殺したんだと思った瞬間だった。」
「ほう…まぁ、それがお前の闘う理由だったんだろうが…ちぃとばかしピントがズレてたんだろうよ」
「ズレ…か…」
礼々は納得したように言葉を漏らした。
その姿を見た伝轟はそれ以上何も言わなかった。
「話を戻すが、とにかく人間が武器を召喚するなんてありえねぇんだ。」
「うん…」
「だが、お前さんは闘う理由を見つけた。それに反応したのが春幸の【心】の欠片だろう。俺が言えるのはここまでだ…後はよう分からん!!!!」
ハッキリ断言。
「分からんが、あいつが助太刀したのは確かだ。」
そんな姿になってまでも…
「春幸…」
「春が君と呼べ…」
礼々がすかさず言葉を挟む。
「てことで春幸連れて俺ん所に行くぞ。」
「俺んとこ…?」
咲恵は首を傾げる。
「夏はここよりずっと暑い、覚悟しろよ?」
伝轟はそんな咲恵を見てニヤリと笑った。
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