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第2章
鐘の音Ⅲ
しおりを挟む「これ?ふふ…武器よ、武器。あら、貴方達はまだ出していないのね?あら…?礼々ちゃんはもうGET済みなのね??お利口さんだこと…」
馬鹿にしたように笑う。
礼々は鞘から静かに剣を抜く。
しかし顔は強ばっていた。
「お、お前も持ってんのかよ!!!夏の旦那も持ってないのに!!どっから出したんだ!?」
「うるさい!!気づいたら…そこにあっただけだ!!!」
「す、すげぇ!!旦那ぁ、俺達にはあれ無いんですか!?」
「………」
夏が君は押し黙ったままただその光景を見ていた。
「でもね…礼々ちゃん、【完全体】じゃないのね…」
ペロリと舌舐めずりをしたかと思うと、
猛烈な速さで礼々に迫った。
「そんな未完成な武器じゃなんにも!!守れない!!わよっ♡」
数メートル先で鞭を振り下ろす。
礼々は咄嗟に剣を盾にしたがそれを狙っていたかのように鞭が音を立てて剣に巻きついた。
その瞬間、細かい粒子のような結晶が舞う。
その時には鞭は剣から離れ艶鐘の元へ戻っていた。
「(結晶…!)」
咲恵がその結晶が雪で出来たものだと分かるのには時間はかからなかった。
その結晶は吸い込まれるように剣にまとわりつく。
みるみると結晶は肥大化し、剣を包み込んだ。
まるで花が咲いた様に。
「な、なんだ…」
唖然として変わり果てた剣を見る礼々。
「なに…あれ…」
「おい!!礼々!!避けろ!!!」
夏が君が叫んだが時は既に遅く。
目の前まで迫ってきた艶鐘が礼々の腹部へ蹴りを入れる。
その衝撃は並行を保たせたまま礼々を吹き飛ばした。
その先には枯れかかった大木達がそびえ立っているか。
「礼々!!!!いやぁぁぁ!!」
友愛の悲鳴が響き渡る。
「…!!!!!」
咲恵は見慣れないその光景に両手で顔を覆う。
何かがぶつかり大木の粉砕され、崩れていく音が耳に入る。
「(嘘でしょ…??)」
恐怖で身体が動かない。
覆った両手を離せない。
「あらら…んもぅ…」
艶鐘は不満そうに呟いた。
「ったく…マジにやりあわなきゃいけねえのか…」
<遠く>から夏が君の声が聞こえる。
咲恵は恐る恐る覆っていた手を解く。
大木は無残にも崩れ落ち見る影もない。
が、礼々は無事だった。
夏が君がのびた礼々を小脇に抱えている。
「よかっ…た…」
ストンと力が抜けた様に友愛は座り込んだ。
夏が君はそっと礼々を脇から下ろした。
「その通りです♡今は本気でやり合われた方が良いかと。」
「あぁ、言われなくてもそうするさ…」
夏が君の雰囲気が変わる。
目には見えないがまるで炎に包まれているかのようである。
「まさか使うとは思わなかったが…。」
右手の平を大きく開いたかと思うと、すでに【それ】は握られていた。
「うおおおおおお!!!!???旦那のおおおお!?!!武器だぁぁあ!!!!」
炎心が興奮した様子で吠えた。
「夏を起こす者、この伝轟(でんごう)の【轟焔】に潰されたくなきゃぁさっさと帰り支度をするんだな」
恐らく彼の倍近くはある大きさの、ハンマーにも似た【轟焔】と呼ばれた武器。
「あぁ、素敵…ゾクゾクするわ…その大きさ…」
艶鐘は身悶えながら轟焔を見つめる。
「だろぉ?」
夏が君、伝轟はニカッと笑った。
が、少し離れたところにいる友愛の方へ目をやる時には真顔に戻っていた。
「友愛、すまねぇな。少しここで暴れさせてもらう。こいつを頼んだぜ」
友愛は何も返事を返さなかったが頷き、重い腰を上げ礼々に駆け寄った。
咲恵と炎心もその流れで2人に駆け寄る。
その時に始まっていた。
既にいた場所から飛び、空中でお互いが交わるX地点を目指す。
距離が縮まっていく。
艶鐘は轟焔を目掛け鞭を振るったが轟焔に触れようした瞬間弾かれた。
「あらま」
轟焔を掴もうとした鞭の先端部分からは焦げた臭いと湯気が上がっていた。
「そう簡単には掴ませんよ!!!」
伝轟は轟焔を縦に持ち艶鐘と接触することなくそのまま垂直に落ちた。正確には地面に轟焔を打ち付けた。
縦に揺れる地面は円形に崩れる。
半径約4mほどだろうか。
立っていられないほどの強い揺れ。
咲恵達はよろめき思わず立膝をついた。
「(立っていられない…!!)」
その崩れた勢いで生まれた爆風が着地しようとしていた艶鐘を捕らえた。
「ぐっ…」
思わず口から漏れる声。
爆風は炎を見に纏い艶鐘に絡みつく。
「(す、すごい…)」
咲恵は息を飲んだ。
その横で友愛の顔は青ざめていた。
そのまま爆風と共にバランスを崩した艶鐘が叩きつけられる形で地面に落ちた。
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