四季夢

書楽捜査班

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第2章

鐘の音

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しばらくすると3人が戻ってきた。

戻るなり夏が君が口を開く。

「春幸には結界を張っておいた…。しかしよ…この場所も酷い有様だな…冬の野郎は何考えてんだぁ?」

荒れ果てた景色を改めて見渡す。
まるで寒の戻りの様に風は冷たかった。

「大好きだった景色…消えちゃった…」

友愛は肩を落とし、礼々も軽く俯いた。
咲恵も気持ちが一気に重くなる。

「友愛の姉貴ぃ…そんな気を落とさないでくだせえ…!きっと元に戻す方法も見つかりますって!」

眩しい程の言葉。

「ありがとう、えんちゃん…弱気でいられないわね」

励ます炎心に友愛はブンブンと頭を振ってたから笑顔で応える。

弱気ではいられない。
咲恵もなんだか励まされた気がした。

「(絶対、助ける方法はあるはず。)」



「てかよ…まずはお前の話を詳しく聞かないとだな」

炎心の隣にいた夏が君は頭をかきながら咲恵を見た。

燃えるような瞳に見つめられ咲恵は息を呑んだ。








「ほほう!!そいつはすげえな!!」

友愛からおおまかな話を聞いた夏が君は高笑いをして手を叩いた。

「余程のお気に入りだったんだなぁあんた!」

「お気に入りって訳じゃ…」

咲恵は小声で否定をする。

「まぁ、春幸を殺したかどうかは別としてあんたもこの件には関わってるってわけか」

「咲恵は春が君を殺してないよ!殺したのは…」

友愛は口を膨らませ反論するとまた高笑いを始めた。

「あっはっはっ!なぁに、俺もこいつが殺したとは思ってねぇよ!」

その言葉に炎心もウンウンと頷く。

「ど、どうして!?…あっ…いや…」

思わず問いかけるが逆に怪しさを生んでしまったのではと咲恵はしどろもどろで小さくなった。

「どうしてだぁ…?んなもん直感だよ直感!!なぁ炎心!!」

「夏の旦那の言う通りですぁ!」

炎心も笑顔で頷く。


「はぁ…」

礼々は眉間にシワを寄せた。

「直感…って…」

咲恵も思わず突っ込む。

「それによ!話を聞いただけじゃぁあんたらの«それ»は痴話喧嘩みえてぇなもんだろ??」

「んな"っ!!!」

「ちっっっ!!!ちちちちちちちわ!?!?ちわ!?痴話!?!?」

咲恵は変な声が出て礼々は青ざめ壊れた人形の様に同じ言葉を繰り返した。

そして友愛はそうだったのかと言うような目で咲恵を見つめた。


「ぶぁ!!馬鹿な冗談はやめてください!!!!ガーミガミガミ…」

礼々はキイキイと怒り始めた。

「だっはっはっは!!とにかく!協力するぜ!春幸は俺のダチでもあるからな!それにまだ【心】が残ってりゃあアイツを起こせるさ!!」

それを聞いた咲恵、友愛、そしてガミガミ怒っていた礼々が目を見開いた。

「本当…!?本当に…!?!?」

炎心がうんうんと頷く。

「大丈夫っすよ!礼々の時もそう…もごごごっ!」

咄嗟に友愛が炎心の口を抑えた。

「(またっ!!)」

礼々の胸がザワついた。

「まぁ、あん時みたいにそう簡単にはいかねぇがな…」

そう言いながら夏が君は腕を組んでうーんと唸った。

「夏が君よ…私に一体何が…」

「あぶねぇ!!!」


何が起こったのか直ぐには分からなかった。
地響きのような音がしたかと思ったら横に倒れていた。
そして炎心が咲恵と友愛に覆いかぶさっていることに気がつく。

一体何が起こったのか。
心臓の鼓動が一気に速まる。

「あ~んら、避けちゃったの…?」

見えないが聞き覚えのない声が聞こえた。

「てめぇ!!何もんだ!?あぁ!?」

炎心が吼える。

「おいおい、随分と荒々しい挨拶じゃねーか」

夏が君の低い声。

「えぇ~?夏の貴方達にはピッタリの挨拶の仕方ではなくって?」

その言葉は嘲笑にも似ていた。

「つうちゃん……」

一緒に息を潜めていた友愛がポツリと呟いた。

「友愛…?」

咲恵が呼びかける。

友愛は既に覆いかぶさっている炎心から抜け出していた。

「あっ!友愛の姉貴!危ねぇっすよ!!あっ!あんたも…!」

咲恵も続いて抜け出す。

「なんの真似だ!!!」

「何って、夏が君がおっしゃる通り、挨拶に来たのよ礼々ちゃん♡」

カツカツと音を立てて近づいてくる男。

「えええいなんと無礼な!!!」

礼々や夏が君も無事だったようだが、見ると地面が崩れ瓦礫の山ができている。

「(これ…あいつがやったの…!?)」

「つうちゃん…」

「ふふ…友愛ちゃん、そんな顔しないの!折角の可愛いお顔が台無しよ?」

ある程度の距離を保って止まった男はグロスを纏った口元を引き上げ笑った。

「これ…つうちゃん達が…?」

友愛は益々不安げな、やはり信じたくないという懇願にも似た眼差しを向ける。

「ピンポーーン!大・正・解♡」

そんな眼差しを遮るような高揚した声。

「派手にやってくれたもんだなぁ。お前、冬の者か」

「お初にお目にかかります、夏が君。わたくしの名は艶鐘(つやがね)と申します。冬が君に仕える者でございます故、以後お見知りおきを」

打って変わって艶鐘という«男»は会釈を混じえながら丁寧に自己紹介をした。

「ははぁん。丁寧な紹介ありがとさん。ところでこれはお前ら冬がやったのか?」

口では笑っていても目は笑っていない。
夏が君の気迫が隠れきれていない。
もはや隠す気もない。

だが咲恵もその気迫にのめり込んでいた。

「そっ、私達がやったのよ。春の新緑、花々達。そして清適な気持ちになる素敵な場所。惜しい場所を失ったわね~…残念だわ」

まるで他人事のように語る艶鐘に夏が君はほほうと睨みを効かせ艶鐘を見る。


「どうして…」

「あんたが。あんた達が春幸を殺したの?」


恐る恐る聞く友愛とは違い、この状況に恐れながらも咲恵はハッキリと聞いた。

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