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第1章
宝石Ⅲ
しおりを挟む「そんなことしたら、春が君が許さないよ」
砕けた笑いを見せながら言う。
「だって、咲恵は春が君の大切な人だから…」
「私が…大切な…」
「そう!!実は友愛は春が君から咲恵の話をいっぱい聞いていたのだ!!」
人差し指をピッと出して得意気に話す。
「いつもね、春が君は優しい笑顔を皆に向けてくれてたんだ。でもね、咲恵の話をする時は本当に色々な表情をするの。ある時は嬉しそうに、ある時は心配そうに…何百年も一緒なのに見たことない表情ばかり…見てるとこっちまで嬉しくなってね」
「……」
「そんな姿を見て、あぁ、大切な存在ができたんだなぁってまた嬉しくなって…ずっと見守りたかったし、春という季節がもっと素敵になりそうだなって思ったの。」
段々と独り言のように話す友愛。
「あの時も…初めて寂しそうに笑う姿を見たわ。彼は大丈夫と言っていたけど…」
「…だから…そんな顔をさせてしまった私は…」
あの時がどの時か…咲恵には痛い程に分かり、
唇を噛み締める。
「だから、仲直りしてほしくって…」
予想もしなかった言葉に えっ? と言葉を漏らした。
「友愛ね、また春が君の嬉しそうな笑顔を見たいんだ~」
「お前また…」
礼々が片手で顔を覆った。
「私も春が君が死んでしまった時一瞬考えたけど…それはないって思ったし…それに咲恵は春が君を見て『こんなの望んでない~』て言ってた。咲恵はさ、どんな事を望んでたの?」
優しく友愛が問い掛ける。
「私は……」
どんな些細なことに耳を傾けてくれた
踏み出せない1歩を出せるように背中を押してくれた
私という存在を認めてくれた
「春幸に…お礼が…言いたかった」
涙がとめどなく流れる。
こんなに泣いたことがあるだろうか。
自分自身でもそう思うほどに涙が止まらなかった。
「うん」
その答えを聞いた友愛が咲恵を抱きしめた。
「その望み、叶えよう?」
「叶え…たい…」
「うん、うん…」
しばらくそのまま友愛に身を預けた。
「全く…あいつ…言ってることがめちゃくちゃだ…俺はどうなっても知らんっ!!」
そうブツブツと呟きながらそっとその場から離れた。
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