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 優月は、その夜、いつものように、由紀也のベッドの上にいた。
 由紀也に触れられたくてたまらない。
 もう自分の想いをごまかすことができなかった。

(私、由紀兄さんを男として意識してる………。ああ、なんて恥ずかしいことなの……)

「優月、眠れない?」

 ゆったりと見つめてくる由紀也に、たまらない衝動を抱いてしまう。その唇にキスされたい。

(こんなわたし、気持ち悪いわ……)

「やっぱり、私、ソファで寝ようかしら」
「どうして?」
「私、おかしいの。何だかドキドキするわ、暑いせいね…………」
「もしかして、俺のことを意識してる?」

 自分の中のみだらな気持ちを的確に暴かれて、優月は急に惨めになる。

「………そう、そうよ……! でも、由紀兄さんが悪いんだわ……! 魅力的だもの………!」

 優月はベッドから降りた。寝室から逃げ出すために。
 そんな優月の背後で、ひどく優しい声がした。

「優月、俺だって優月をずっと意識しているんだよ」
「えっ……?」
「俺も優月を女性として見てる」

 優月の熱がカーッと高まり、もう歩けなくなった。へたへたと絨毯に座り込む。

(どういうことなの……?)

 ベッドのきしむ音がして、由紀也が背中に近づいてきた。優月を抱き上げると、ベッドに寝かせた。

「俺と優月とは血がつながっていない。俺を男として意識しているのなら、俺は嬉しい」

 由紀也は優月の頭を撫でながら言って聞かせるように言う。
 優月は理解が追い付かないものの、胸の鼓動が激しくなる。
 由紀也を見つめ返す目に、涙がにじんできた。

「優月がそうして欲しいと思うまで、俺は手を出さないから。さあ、寝よう。抱っこしてあげる」

 由紀也は包み込むように優月を抱いてきた。

(私は由紀兄さんを好きになっても良いってこと……?)

 それからずっと、優月は気がつけば、由紀也を目で追っている。由紀也と目が合えば、由紀也は笑みを返し、優月の胸が波打つ。
 一緒に寝るも、由紀也は、手を出してくることもない。しかし、二人の間には甘やかな空気が漂っていることは間違いがなかった。

(由紀兄さん、好き………。私の気持ちを由紀兄さんは受け止めてくれるの……?)

 もう優月の由紀也への想いは止まらなかった。
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