『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第十部

安達のミニチュア

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ブースの前では、

楽しそうにお客と話す安達がいた。

「じゃあ、又新作がでたら教えて頂戴ね」

婦人はにっこり微笑むと、

弥生達にお辞儀をしてブースを離れていった。

「楽しそうですね」

向井が声をかけると、

「俺のミニチュアをいつも買ってくれるの。

美しいって褒められちゃった」

安達が顔を赤くして興奮しながら話した。

「あっ、もしかしてそのお客さんに、

写真見せてもらわなかった? 」

シェデムが聞くと、

「見た! それでね。

ポップアップストアにも来るから、

ミニチュアを見せてって言われた」

安達が嬉しそうに言った。

「俺の柱時計と街灯が欲しいんだって」

「凄いじゃないですか。

もうファンがついて、

安達君も作家さんの仲間入りですね」

「ええ~」

向井の誉め言葉に恥ずかしそうな顔の安達に、

周りも笑顔になった。

「おっと」

首がカクンと揺れた三鬼に向井は抱きなおすと、

「チビ達はもうおねむだね」

とアートンも寝ている呉葉に笑った。

「道理で重いと思った」

ディッセもこんを抱えなおすと、

「今日の売り上げはどうだった? 」

と聞いた。

「安達君のミニチュアと、

真紀子さんと千乃のコラボで出した、

トートバッグも完売。

私と弥生ちゃんのも数点残して、

後は売れたからまずまずかな」

アンが笑った。

「そうそう。

冥王のシャカシャカはないのかって言われて、

ポップアップストアのカードを渡しておいた。

あれは凄い話題よね」

早紀も驚いたように笑った。

「最後までいる? 」

トリアが聞くと、

「とりあえずもう少し様子見て、

人の流れがないようなら片付けて終わりにする」

アンが言った。

「チビ達も寝ちゃったし、

俺達は帰るけど………………」

ディッセがそこまで言ってトリアを見る。

「ああ、三鬼は私が預かるから、

向井君は残って。安達君もいるし」

トリアが三鬼を受け取り、

アートンとディッセと一緒に帰って行った。

「俺、店番してようか? 」

黒谷が言い、

「いいの? 」

安達が嬉しそうに言うと、

向井の手を引いてブースを出て行った。

黒谷はそんな安達の様子を見て、

「安達君は向井さんにべったりだけど、

いつもああなの? 」

とシェデムを見た。

「ん………安達君は少し難しい子でね。

黒谷君なら話しても大丈夫かな。

あれでもだいぶ良くはなったのよ。

冥界に来た時は、

上手くしゃべることもできなかったし、

ネグレクトもあって、

今でもちょっと発作を起こすの」

「だから、安達君の時にはいつも誰かがいるんだ」

黒谷は納得したような顔になった。

「向井君には心を開いてくれたんで、

それ以来、親のようにくっ付いて歩いてる」

アンも笑った。

「ほら、向井君て一緒にいると、

なんだか安心するって言うか、

ホッとする、

そういうところあるでしょう? 」

真紀子も黒谷を見た。

「確かに。俺も初めて会った時から、

警戒心がなかったからな~」

そういって笑った。

「向井君にはいい迷惑かもしれないけど、

私たちにとっても向井君は、

なくてはならない存在になっちゃってるのよ」

早紀も笑顔になった。

「冥王も何かって言うと、向井君に聞いて、

向井君はどこ、向井君向井君て、

ウザいからね~」

シェデムも苦笑しながら腕組した。

「向井さんて、

どこか不思議な雰囲気を持った人ですよね」

弥生もそういうと、

「そうだ。私も少し見たいんだけど、

ここ任せてもいい? 」

と黒谷を見た。

「いいわよ。私も見てるから、

みんなで周ってきたら? 」

シェデムもそういうと振り返った。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

と真紀子は笑うと弥生達とブースを出た。

人の流れを見ていたシェデムが、

「こうやって見てると平和なのにね」

「ホント………」

黒谷も遠くを見ながら呟いた。
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