『アンダーワールド』冥王VS人間～魑魅魍魎の戦が今始まる～

八雲翔

文字の大きさ

大中小

378 / 631

第十部

牧野レッドカード

しおりを挟む

「ヴィヴィが権利を持つことを知るから。

下界でも人間が多くの事を教え込んで、

更にはネット上に広がるあらゆるものを、

振り分けてチップに組み込んでる。

今、下界で起こっている暴動も、

人間が持つ権利を自分達にもと、

書き換えを行っているから、

情報が錯乱してるんだよ。

これを意思と呼ぶならそうなんだろうね」

「人間は自分達が、

最も賢いと思いがちなんですよ。

考えたらこの地球に住むのは、

人間が多いんですから当然です。

更にその人間同士が、

自分達が一番だと争いを始めるから、

戦争もなくならないんです」

向井もため息をついた。

冥王も同じようなことを言っていたな。

アートンは向井を見ると、

「昔からＡＩに限らず、

悪影響から、

弱者を保護しようという活動はあったんだよ。

だけど、どんな場所にもその裏には、

負が渦巻いている。

俺達は人間じゃないから、

死んだ後の魂を守ることしかできない」

「冥界はそういう場所だからね」

エナトも小さく笑った。

――――――――

冥界に戻ると、

チビ達が出迎えに来た。

「マキちゃんももうかえってるよ～」

「早いね。そんなに酷い状態じゃなかったのかな」

エナトはそういうと、

「ヴァン達は？　」

と聞いた。

「まだ～」

「二か所ですからね。もう少しかかるかな」

向井が言うと、

「マキちゃんがおやつをつれてこいっていったよ」

こんが見上げて言った。

「全く、牧野君はレッドカードだな」

新田は深く息を吐くと、

「おやつにしよう」

とチビに笑いかけ箱を持ち上げた。

「おやつ？　」

カウンターからセイも出てくると、

「行こう行こう」

とチビと新田と楽しそうに歩いていった。

「牧野君はたまには、

自分がおやつを買ってと思わないのかな」

アートンがあきれたように笑った。

「無理無理。牧野君は洋服に使っちゃうから」

エナトが手を振って笑った。

「確かに着るものや、

アクセサリーのこだわりは煩いけど、

あのデニムやパーカーそんなに高いの？　」

「聞いたら驚きますよ」

アートンの言葉に向井は笑った。

休憩室に行くと弥生達いつものメンバーが、

楽しそうに話していた。

「ビーネンシュティヒなんて珍しいわね」

弥生が箱を覗いて言った。

「何？　そのビーネンなんとかって？　」

早紀が聞いた。

「坂下君にお薦めされたパン屋さんで、

帰りにちょっと寄って買ってきました。

フロランタンのようなケーキです」

「たべたい～」

チビ達がのぞいて跳ねる。

「分かったから、今カットしようね」

弥生は笑ってカウンターに来ると、

「チビ達にはさらに小さくしよう」

とケーキナイフを入れた。

「チビもいるから、

バニラチョコレートにしようか」

新田が言うと向井がカップを並べた。

ケーキとドリンクを用意して、

テーブルに戻ると、

アン達が楽しそうにプリントを見ていた。

しおりを挟む