『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第九部

ちまきと柏餅

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キッチンまでの道のりをパトロールしながら、

ゆっくり歩いていく。

中央は今だ黒い雲で覆われており、

悪霊になりかかると、

牧野が除去に出かけていく。

この国は冥界から見ると、

モグラたたきの穴のように、

澄んだ丸と濁った丸で分けられてしまっているのが、

よくわかる。

澄んだ丸の区域は犯罪も少なく、

日常が戻りつつあるが、

濁った区域はやはり犯罪が増えていた。

大沢帝国崩壊から、

嘘ホントが入り混じり、

陰謀論が世を騒がしていた。

そこにAIとマスコミが加わることで、

情報が錯綜し、

人々の負も蔓延していた。


二人がキッチンに着くと、

黒谷がネットニュースを見ながら待っていた。

「おっ、来たね」

黒谷が椅子から立ち上がった。

「ニュースですか? 」

「ん? まぁね。

この先どうなるかわかんないし、

ニュースもSNSも胡散臭いし、

俯瞰で見て総合的に判断しないと、

情報に振り回されちゃうだろ」

「ふぅ~ん」

安達が首を傾げてニュース画面を見た。

「これは………嘘。これは………AI

………本当のニュースは………

これ、今日動物園で、

ライオンの赤ちゃんが生まれたって。

可愛いね」

安達が画面から顔をあげて笑った。

「えっ? 安達君てそんなことも分かるの? 」

驚く黒谷に、

「安達君は冥界の中でも特別なんですよ。

何か気になることを確かめたかったら、

安達君に聞くのが一番かもしれませんよ」

向井が説明した。

「それはいいことを聞いたぞ」

黒谷が笑った。

「でも、全部は教えられないよ」

「なんでさ」

「冥王から国の未来を決めるのは国民だから、

全部は話しちゃいけないって」

「そういう事か」

安達の話に黒谷も口を突き出して、

眉をしかめた。

「未来が全部わかってしまったら、

つまらないでしょ」

「もし、破滅の未来しか待ってないなら、

聞かないほうが幸せだな」

向井の言葉に黒谷もため息をついた。

「そういう事です。で、お弁当は、

この箱ですか? 」

向井がテーブルに置かれた蓋つき番重を見た。

「そうそう。それ。安達君、蓋開けて見な」

黒谷が言った。

安達が蓋を開けると、

「わあ~可愛い。これ何? 」

笑顔で向井と黒谷を見た。

見ると鯉のぼりが描かれた小箱が並べられていた。

「それね。業者が売れ残った文箱を、

安く譲ってくれてね。

鯉のぼりだから時期が過ぎたら、

置き場所にも困るって言うんで、

利用したの。いいでしょ」

「みんな喜びますよ。食べ終わったら、

物入れにも使えるし」

向井も笑顔で黒谷を見た。

「喜んでもらえて良かったよ。

安達君の顔を見ても、

ちびちゃんたちが喜ぶ顔が浮かぶね」

夢中になって見ている安達に、

二人は笑った。

「中身はね。ちまきになってる。

あと柏餅も入れたから」

「ちまきと柏餅? 」

安達が首を傾げて振り返る。
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