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第七部
18年前の殺人
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自分達の身の振り方も多様化され、
人間の道徳も顕著に違いが出ていた。
だったら残りの人生は、
自分の価値観にあった場所で、
静かに暮らしたいと考えてもおかしくはない。
誰も住みたがらない古い団地を借り、
ゆったり暮らす家族もいれば、
老人も若者もひとり者もいる。
それが姥捨て山の実情なのだが、
中央の人間には興味もない事なので、
彼らを笑いの種にする芸人や、
動画アーティストに沸いていた。
「あの日、
災害テントの中で多くのものが治療を受けていた。
特に怪我が酷く移動が困難なものが多く、
運ばれてきていた。
私も頭を強く打っていて意識不明の状態だった」
老人は当時を思い出すように話した。
十八年前――――
倒壊から免れた学校の体育館と校庭に、
幾つもの野外テントが張られていた。
元気なものは体育館で治療と食事が配られ、
重傷者はテントに運ばれていた。
医者とボランティアが右往左往している足音と声を、
寝ていた三田は遠のく意識の中で聞いていた。
彼らがいなくなると、
今度は数人の男たちがやってきて、
何かをしゃべりながら動く音が聞こえてきた。
三田は重い瞼を何とか開き、
その声がする方を見ると、
そこには吉沢の姿があった。
誰かと電話で話しながら、男たちに指示を出している。
三田の頭が少しずつ動き出してくると、
その光景に震えが止まらなくなった。
「何を見たんですか? 」
水沢が三田に顔を近づけた。
「あ、あいつらは怪我人を次々にさらっていった」
三田は当時を思い出し体が震えた。
「十人………いや二十人? そういっていた」
三田は天井を見つめた。
「とりあえず生贄は二十もあればいい。
時間がないんだ」
「暴れないように眠らせろ」
「どうせすぐに処分するんだ。
多少怪我が酷くなったところで問題ない」
男たちは小声で話しながら、
事務処理をするように人間を運んでいった。
その会話に三田は体が硬直し、
瞳が閉じられなくなった。
それを一人の男に見られた。
「ん? お前………」
男たちが三田に気づき、
「何人増えようが構わん。
そいつも連れて行け」
男が近づいてくるのを何とかかわそうと、
三田は近くにあったステンレスの棚を、
やっとの思いで掴み倒した。
途端に大きな音が響き渡り、
「どうしました? 」
と医師とボランティアが、
走ってくる足音が聞こえてきた。
「もういい。すぐに出るぞ」
男たちは最後の人間を抱えると、
舌打ちをし、その場を離れていった。
遠くの方で車の音が聞こえるのを最後に、
三田は気を失った。
「本当にそこにいたのは吉沢だったんですか? 」
水沢は信じられない思いで聞いていた。
いくらなんでも政府が人をさらうなんて………
人間の道徳も顕著に違いが出ていた。
だったら残りの人生は、
自分の価値観にあった場所で、
静かに暮らしたいと考えてもおかしくはない。
誰も住みたがらない古い団地を借り、
ゆったり暮らす家族もいれば、
老人も若者もひとり者もいる。
それが姥捨て山の実情なのだが、
中央の人間には興味もない事なので、
彼らを笑いの種にする芸人や、
動画アーティストに沸いていた。
「あの日、
災害テントの中で多くのものが治療を受けていた。
特に怪我が酷く移動が困難なものが多く、
運ばれてきていた。
私も頭を強く打っていて意識不明の状態だった」
老人は当時を思い出すように話した。
十八年前――――
倒壊から免れた学校の体育館と校庭に、
幾つもの野外テントが張られていた。
元気なものは体育館で治療と食事が配られ、
重傷者はテントに運ばれていた。
医者とボランティアが右往左往している足音と声を、
寝ていた三田は遠のく意識の中で聞いていた。
彼らがいなくなると、
今度は数人の男たちがやってきて、
何かをしゃべりながら動く音が聞こえてきた。
三田は重い瞼を何とか開き、
その声がする方を見ると、
そこには吉沢の姿があった。
誰かと電話で話しながら、男たちに指示を出している。
三田の頭が少しずつ動き出してくると、
その光景に震えが止まらなくなった。
「何を見たんですか? 」
水沢が三田に顔を近づけた。
「あ、あいつらは怪我人を次々にさらっていった」
三田は当時を思い出し体が震えた。
「十人………いや二十人? そういっていた」
三田は天井を見つめた。
「とりあえず生贄は二十もあればいい。
時間がないんだ」
「暴れないように眠らせろ」
「どうせすぐに処分するんだ。
多少怪我が酷くなったところで問題ない」
男たちは小声で話しながら、
事務処理をするように人間を運んでいった。
その会話に三田は体が硬直し、
瞳が閉じられなくなった。
それを一人の男に見られた。
「ん? お前………」
男たちが三田に気づき、
「何人増えようが構わん。
そいつも連れて行け」
男が近づいてくるのを何とかかわそうと、
三田は近くにあったステンレスの棚を、
やっとの思いで掴み倒した。
途端に大きな音が響き渡り、
「どうしました? 」
と医師とボランティアが、
走ってくる足音が聞こえてきた。
「もういい。すぐに出るぞ」
男たちは最後の人間を抱えると、
舌打ちをし、その場を離れていった。
遠くの方で車の音が聞こえるのを最後に、
三田は気を失った。
「本当にそこにいたのは吉沢だったんですか? 」
水沢は信じられない思いで聞いていた。
いくらなんでも政府が人をさらうなんて………
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