『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第七部

特別室の最期

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「そのあとに契約内容に目を通すように、

言われたと思いますが」

「こんなの形式上のもんだろうが」

「下界ではあなたもそうやって、

国民をだましてきたのでしょう。

ここを読んでください。

詳細な説明がされているはずです」

冥王がテーブルの紙に指を置いた。

「こんなもの私は認めん」

「困りましたね。ここから出なければ、

あなたはここで魂の死を迎えることになりますよ」

「なんとでもいえ。私はここから出んし、

今まで通り向井は私につけろ」

「それは無理というものです。

ここを出たくないならそれでもいいですが、

あなたも佐々木の最後を見たのではありませんか? 」

その言葉に大沢は初めて青ざめた。

「ここにいれば、最後は佐々木と同じ運命をたどります」

「だったら、何故死人の向井はここで暮らしているんだ。

私も同じ扱いにしたらいいだけだろう」

向井はここまで、

往生際が悪い霊を見たことがなかった。

冥王もあきれたように笑うと、

「選ばれし魂とあなたとでは、

質が違うんですよ。

冥界にはあなたのようなものも多くやってきますが、

ここまでいさぎ悪い人間を、

私は初めて見ました。

あなたのお父様ですら、

最後は地獄へと向かいました」

「親父と私では出来が違う」

「では、あなたとはここでお別れになります」

冥王が向井を連れて部屋を出ようとした。

「ま、待て。だったら息子の命を献上する。

それでも足りなきゃ、孫………いや、

甥の命をやる。それならいいだろう? 

おい!! 私はまだ死なんぞ!! 」

大沢が叫ぶのを無視して、二人は部屋を出た。

冥王は部屋に地獄の門番である底無しの獅子を放つと、

静かに扉を閉めた。

室内の様子は分からないが、

獅子に食われたであろうことは分かった。

特別室が消え、黒い空間が現れた。

獅子が冥王の所まで戻ってくると、

静かに姿を消した。

冥王が手のひらより光を放つと、

目の前の空洞が無くなり壁となる。

早紀が言ったブラックホールのような空間とは、

恐らくこのことなのだろう。

向井も驚き、冥王を見た。

「あの空間は何とつながっているんでしょう」

「さあ? 私にも分かりません」

冥王は知っているのかいないのか、

いつものようにそ知らぬふりをして微笑んだ。


――――――――


休憩室に行くと、

賑やかにみんなでパンケーキを食べていた。

「やっときた~」

チビ達が駆けてくると、

向井の手を引いて体を押した。

「パンケーキ美味しいぞ」

牧野も食べながら顔をあげた。

「もう、一人で食べすぎ」

弥生が注意するのも無視して、

パクパクと味の違うケーキを頬張った。

「なんですか。私は無視ですか」

冥王は不貞腐れながら部屋に入ると、

ソファーに座り、

箱を覗いてから、

バナナチョコのパンケーキを取り出した。

「向井はどれにする? 」

安達が生クリームと、

キャラメルたっぷりのケーキを食べながら聞いた。
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