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第七部

影鰐の結界

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地震学者からの見解では、

メカニズムからみても沈没することはないというが、

プレートの沈み込み、盛り上がりの繰り返しから、

列島が分裂、

あるいはそれぞれの土地が沈没する危険性は高いという。

なんとしてでも、儀式を行わなければ………………

吉沢はゆっくりと顔をあげた。



吉沢達がリゾート予定地に現れる数時間前、

向井達は団地に来ていた。

向井の手には影鰐の入った小瓶がある。

土地に入ると赤姫が姿を現した。

「そろそろ来る頃だと思っておった」

アートンが辺りを見回すと、

「姫はかなり浄化をしてくれているんですね。

不浄の土地なのに穢れがない」

感謝するように赤姫を見た。

「ふん。私だってこの土地にいるのは辛い。

自分の為にも浄化しておる」

「ここに吉沢は現れましたか? 」

向井が聞くと、

「今のところ結界が効いているのか、

姿は見せんな」

赤姫が言った。

「今日は黒谷と玲子も、

キッチンカーで販売に行った。

何かやりたいならあいつがいないほうが、

やりやすいであろう? 」

「そうですね。では、今のうちに、

新たな結界を張りましょうか」

向井は言うと小瓶と霊玉を取り出した。

「影鰐の出番か」

赤姫が言った。

「この土地には怨みの念が渦巻いておる。

当の本人の影が半面と言えども植え付けられれば、

あやつがここに足を踏み入れた後は………」

「それも彼奴の罪だからね」

ディッセも赤姫を見ると、

冷たい笑みを浮かべた。

「じゃあ、この空間にベールをかけるよ。

悪霊が入らないようにするだけで、

住民には問題ないから」

ヴァンはそういうと式神を出し、

浮遊する悪霊をすべて始末させ、

上から虹のベールをかけるように、

空間を囲んだ。

「ほお~綺麗じゃの~」

赤姫がほほ笑む。

向井はそれを見て霊玉に言霊を放ち、

瓶に入った影鰐を吸い込ませた。

玉がよどんだ濁りを見せる。

「それを見ただけで、

邪悪に飲み込まれた人間なのが分かるな」

ディッセが不快な顔をした。

向井はフッと笑うと、

「赤姫さんの祠を利用させていただきます。

全て終わった後はうちの開発室から、

新たな霊玉をここに埋め込ませていただきますので」

「かまわんよ」

赤姫はそういうと、

向井の動きを静かに見守った。

向井は祠に近づくと霊玉を土に押し込んだ。

一瞬で土が血の海のような色になり、

その後通常の色に戻った。

「あとはどうなるか待つだけだな」

ディッセが言い、輝くベールを見つめた。


――――――――


向井達がリゾート建設予定地に行くと、

菅野大臣が不機嫌に車に乗り込むところだった。

野次馬が大臣を追って、

手を振り声をかけている。

「元アイドルだけあって、

凄い人気ですね」

向井が驚いていると、

「そういえば、

大臣とライバルだったユウミって知ってる? 

彼女が亡くなった後に、

高田さんが派遣でレコーディングしたんだよ」

ディッセが思い出すように言った。
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