272 / 394
第七部
影鰐の結界
しおりを挟む
地震学者からの見解では、
メカニズムからみても沈没することはないというが、
プレートの沈み込み、盛り上がりの繰り返しから、
列島が分裂、
あるいはそれぞれの土地が沈没する危険性は高いという。
なんとしてでも、儀式を行わなければ………………
吉沢はゆっくりと顔をあげた。
吉沢達がリゾート予定地に現れる数時間前、
向井達は団地に来ていた。
向井の手には影鰐の入った小瓶がある。
土地に入ると赤姫が姿を現した。
「そろそろ来る頃だと思っておった」
アートンが辺りを見回すと、
「姫はかなり浄化をしてくれているんですね。
不浄の土地なのに穢れがない」
感謝するように赤姫を見た。
「ふん。私だってこの土地にいるのは辛い。
自分の為にも浄化しておる」
「ここに吉沢は現れましたか? 」
向井が聞くと、
「今のところ結界が効いているのか、
姿は見せんな」
赤姫が言った。
「今日は黒谷と玲子も、
キッチンカーで販売に行った。
何かやりたいならあいつがいないほうが、
やりやすいであろう? 」
「そうですね。では、今のうちに、
新たな結界を張りましょうか」
向井は言うと小瓶と霊玉を取り出した。
「影鰐の出番か」
赤姫が言った。
「この土地には怨みの念が渦巻いておる。
当の本人の影が半面と言えども植え付けられれば、
あやつがここに足を踏み入れた後は………」
「それも彼奴の罪だからね」
ディッセも赤姫を見ると、
冷たい笑みを浮かべた。
「じゃあ、この空間にベールをかけるよ。
悪霊が入らないようにするだけで、
住民には問題ないから」
ヴァンはそういうと式神を出し、
浮遊する悪霊をすべて始末させ、
上から虹のベールをかけるように、
空間を囲んだ。
「ほお~綺麗じゃの~」
赤姫がほほ笑む。
向井はそれを見て霊玉に言霊を放ち、
瓶に入った影鰐を吸い込ませた。
玉がよどんだ濁りを見せる。
「それを見ただけで、
邪悪に飲み込まれた人間なのが分かるな」
ディッセが不快な顔をした。
向井はフッと笑うと、
「赤姫さんの祠を利用させていただきます。
全て終わった後はうちの開発室から、
新たな霊玉をここに埋め込ませていただきますので」
「かまわんよ」
赤姫はそういうと、
向井の動きを静かに見守った。
向井は祠に近づくと霊玉を土に押し込んだ。
一瞬で土が血の海のような色になり、
その後通常の色に戻った。
「あとはどうなるか待つだけだな」
ディッセが言い、輝くベールを見つめた。
――――――――
向井達がリゾート建設予定地に行くと、
菅野大臣が不機嫌に車に乗り込むところだった。
野次馬が大臣を追って、
手を振り声をかけている。
「元アイドルだけあって、
凄い人気ですね」
向井が驚いていると、
「そういえば、
大臣とライバルだったユウミって知ってる?
彼女が亡くなった後に、
高田さんが派遣でレコーディングしたんだよ」
ディッセが思い出すように言った。
メカニズムからみても沈没することはないというが、
プレートの沈み込み、盛り上がりの繰り返しから、
列島が分裂、
あるいはそれぞれの土地が沈没する危険性は高いという。
なんとしてでも、儀式を行わなければ………………
吉沢はゆっくりと顔をあげた。
吉沢達がリゾート予定地に現れる数時間前、
向井達は団地に来ていた。
向井の手には影鰐の入った小瓶がある。
土地に入ると赤姫が姿を現した。
「そろそろ来る頃だと思っておった」
アートンが辺りを見回すと、
「姫はかなり浄化をしてくれているんですね。
不浄の土地なのに穢れがない」
感謝するように赤姫を見た。
「ふん。私だってこの土地にいるのは辛い。
自分の為にも浄化しておる」
「ここに吉沢は現れましたか? 」
向井が聞くと、
「今のところ結界が効いているのか、
姿は見せんな」
赤姫が言った。
「今日は黒谷と玲子も、
キッチンカーで販売に行った。
何かやりたいならあいつがいないほうが、
やりやすいであろう? 」
「そうですね。では、今のうちに、
新たな結界を張りましょうか」
向井は言うと小瓶と霊玉を取り出した。
「影鰐の出番か」
赤姫が言った。
「この土地には怨みの念が渦巻いておる。
当の本人の影が半面と言えども植え付けられれば、
あやつがここに足を踏み入れた後は………」
「それも彼奴の罪だからね」
ディッセも赤姫を見ると、
冷たい笑みを浮かべた。
「じゃあ、この空間にベールをかけるよ。
悪霊が入らないようにするだけで、
住民には問題ないから」
ヴァンはそういうと式神を出し、
浮遊する悪霊をすべて始末させ、
上から虹のベールをかけるように、
空間を囲んだ。
「ほお~綺麗じゃの~」
赤姫がほほ笑む。
向井はそれを見て霊玉に言霊を放ち、
瓶に入った影鰐を吸い込ませた。
玉がよどんだ濁りを見せる。
「それを見ただけで、
邪悪に飲み込まれた人間なのが分かるな」
ディッセが不快な顔をした。
向井はフッと笑うと、
「赤姫さんの祠を利用させていただきます。
全て終わった後はうちの開発室から、
新たな霊玉をここに埋め込ませていただきますので」
「かまわんよ」
赤姫はそういうと、
向井の動きを静かに見守った。
向井は祠に近づくと霊玉を土に押し込んだ。
一瞬で土が血の海のような色になり、
その後通常の色に戻った。
「あとはどうなるか待つだけだな」
ディッセが言い、輝くベールを見つめた。
――――――――
向井達がリゾート建設予定地に行くと、
菅野大臣が不機嫌に車に乗り込むところだった。
野次馬が大臣を追って、
手を振り声をかけている。
「元アイドルだけあって、
凄い人気ですね」
向井が驚いていると、
「そういえば、
大臣とライバルだったユウミって知ってる?
彼女が亡くなった後に、
高田さんが派遣でレコーディングしたんだよ」
ディッセが思い出すように言った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる