『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

文字の大きさ
上 下
239 / 631
第六部

慌ただしい雛祭り

しおりを挟む
以前はこうやって自分の感情を、

素直に出すことが出来なかったのに、

今では牧野のように表情が出るようになった。

「ごめんね。この前黒谷君のところに行くのに、

お昼だから買って持ってたんですよ」

「食べたい………」

安達がじっと見てるので、

「今日はお雛祭りだから、

夕飯までご馳走がでますよ」

「………」

向井はその様子に笑うと、

「だったら明日のお昼はハンバーガーにしますか? 」

「する!! 約束だよ」

「ボールペン集めるなら、

冥王や牧野君に取られないように、

頑張らないとね」

安達がくれそうな人を考えながら歩く姿を、

楽しそうに見ていた。



「黒谷~お弁当取りに来たよ」

安達が二階のレンタルキッチンに入ると、

黒谷を呼んだ。

「おっ、来たね~」

エプロン姿の黒谷が箱をテーブルに置くと、

「この赤いマークの付いた箱が冥界用ね」

と説明した。

「随分と量が多いですけど、

他からも注文受けたんですか? 」

向井が積まれたボックスを見て聞いた。

「原田さんがね。

幽霊騒ぎの音響会社さんに感謝されて、

俺のことを話したんだって。

それで仕事が再開されるんで、

お世話になったお礼にって、

お弁当を注文してくれたんだよね~

俺としては向井さん紹介して、

ウホウホだよ」

黒谷が笑顔になった。

「そうだ。これ、多く作り過ぎたんで、

安達君にプレゼント」

袋に入ったアイシングクッキーを手渡した。

「ウサギとクマが好きなんだよね。

お子様ランチにも同じの入れたよ。

これより小さいやつだけど」

「有難う。可愛い………」

安達がぽぅ~という表情でつぶやく。

「食べるのがもったいないね」

向井の言葉に満面の笑顔で顔をあげた。

「そういえば玲子さんは? 」

「今日は原田さんの紹介で、

お店の前に置かせてもらえるんで、

玲子ばぁは先に行って用意してる。

限定販売なんで、

今は整理券配ってると思うよ」

「キッチンカーが軌道に乗ってよかったですね」

「うん。とりあえず食べてはいけるからね」

黒谷はそういうと向井を見た。

「じゃあ、黒谷君もそろそろ出かけるでしょう。

安達君ゲートを開いてくれますか? 」

安達が空間に穴をあける様子を見ながら、

「いつ見ても不思議。これって俺じゃなくても、

霊感ある奴なら見えるの? 」

「いや、これは黒谷君にしか見えないと思いますよ」

「そうか~やっぱ俺って変わってんだな」

「何をいまさら」

向井は笑うと箱を冥界に送り、

黒谷に挨拶すると安達と冥界に戻っていった。


――――――――


死神課の前に積まれた箱を見て、

チビ達が走ってきた。

「おべんとう? 」

その姿に戻ってきた安達の顔に笑顔がこぼれた。

「可愛い~」

「かみにもおハナがついてるんじゃ」

呉葉が見せてくれる。

「本当だ。似合ってるね~」

向井も驚くと、

「三鬼もカッコいいですよ」

袴姿に笑顔になった。

こんと呉葉は似たような振袖だが被布の色が違う。

お人形の様で、

これは大人達の方が大騒ぎだっただろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

遥かなる物語

うなぎ太郎
ファンタジー
スラーレン帝国の首都、エラルトはこの世界最大の都市。この街に貴族の令息や令嬢達が通う学園、スラーレン中央学園があった。 この学園にある一人の男子生徒がいた。彼の名は、シャルル・ベルタン。ノア・ベルタン伯爵の息子だ。 彼と友人達はこの学園で、様々なことを学び、成長していく。 だが彼が帝国の歴史を変える英雄になろうとは、誰も想像もしていなかったのであった…彼は日々動き続ける世界で何を失い、何を手に入れるのか? ーーーーーーーー 序盤はほのぼのとした学園小説にしようと思います。中盤以降は戦闘や魔法、政争がメインで異世界ファンタジー的要素も強いです。 ※作者独自の世界観です。 ※甘々ご都合主義では無いですが、一応ハッピーエンドです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

処理中です...