『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

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第六部

慌ただしい雛祭り

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以前はこうやって自分の感情を、

素直に出すことが出来なかったのに、

今では牧野のように表情が出るようになった。

「ごめんね。この前黒谷君のところに行くのに、

お昼だから買って持ってたんですよ」

「食べたい………」

安達がじっと見てるので、

「今日はお雛祭りだから、

夕飯までご馳走がでますよ」

「………」

向井はその様子に笑うと、

「だったら明日のお昼はハンバーガーにしますか? 」

「する!! 約束だよ」

「ボールペン集めるなら、

冥王や牧野君に取られないように、

頑張らないとね」

安達がくれそうな人を考えながら歩く姿を、

楽しそうに見ていた。



「黒谷~お弁当取りに来たよ」

安達が二階のレンタルキッチンに入ると、

黒谷を呼んだ。

「おっ、来たね~」

エプロン姿の黒谷が箱をテーブルに置くと、

「この赤いマークの付いた箱が冥界用ね」

と説明した。

「随分と量が多いですけど、

他からも注文受けたんですか? 」

向井が積まれたボックスを見て聞いた。

「原田さんがね。

幽霊騒ぎの音響会社さんに感謝されて、

俺のことを話したんだって。

それで仕事が再開されるんで、

お世話になったお礼にって、

お弁当を注文してくれたんだよね~

俺としては向井さん紹介して、

ウホウホだよ」

黒谷が笑顔になった。

「そうだ。これ、多く作り過ぎたんで、

安達君にプレゼント」

袋に入ったアイシングクッキーを手渡した。

「ウサギとクマが好きなんだよね。

お子様ランチにも同じの入れたよ。

これより小さいやつだけど」

「有難う。可愛い………」

安達がぽぅ~という表情でつぶやく。

「食べるのがもったいないね」

向井の言葉に満面の笑顔で顔をあげた。

「そういえば玲子さんは? 」

「今日は原田さんの紹介で、

お店の前に置かせてもらえるんで、

玲子ばぁは先に行って用意してる。

限定販売なんで、

今は整理券配ってると思うよ」

「キッチンカーが軌道に乗ってよかったですね」

「うん。とりあえず食べてはいけるからね」

黒谷はそういうと向井を見た。

「じゃあ、黒谷君もそろそろ出かけるでしょう。

安達君ゲートを開いてくれますか? 」

安達が空間に穴をあける様子を見ながら、

「いつ見ても不思議。これって俺じゃなくても、

霊感ある奴なら見えるの? 」

「いや、これは黒谷君にしか見えないと思いますよ」

「そうか~やっぱ俺って変わってんだな」

「何をいまさら」

向井は笑うと箱を冥界に送り、

黒谷に挨拶すると安達と冥界に戻っていった。


――――――――


死神課の前に積まれた箱を見て、

チビ達が走ってきた。

「おべんとう? 」

その姿に戻ってきた安達の顔に笑顔がこぼれた。

「可愛い~」

「かみにもおハナがついてるんじゃ」

呉葉が見せてくれる。

「本当だ。似合ってるね~」

向井も驚くと、

「三鬼もカッコいいですよ」

袴姿に笑顔になった。

こんと呉葉は似たような振袖だが被布の色が違う。

お人形の様で、

これは大人達の方が大騒ぎだっただろう。
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