219 / 631
第六部
生贄
しおりを挟む
「俺もそこまで鈍くないですから、
冥王や特別室での大沢の様子をみても、
もしかしたらという推測はたてられます」
冥王は深いため息をつくと、
向井の顔を見た。
「そこまで分かっているなら、
説明しても大丈夫ですね」
「はい」
冥王は静かに話し始めた。
「まず大沢の祖父が見つけた、
その昔に行われていた儀式の文献から、
この国の転落は始まりました。
古来より人柱の風習が、
神への生贄とされていたことは、
誰もが知っている事実かもしれません。
現在では迷信だと言われていますが、
もしその文献が本当に存在したとしたら、
どうします?
しかも権力に直結するものだとしたら。
人は試したくなるというものでしょう」
冥王は両手を結ぶと瞳を閉じた。
「大沢は祖父が行った儀式を知り、
そしてその文献に取り憑かれてしまった。
十九年前に起こった大災害の時に、
二十人もの国民を殺害し、
赤姫の守る祠を壊しその下に埋めました」
黙っていた向井の顔が青ざめた。
「それが向井君も知っている神秘の国事件です。
あの時の赤姫の怒りは凄まじく、
安達君の魂の事もあって、
私が地震の神であるないの神に、
無理を言って収めた経緯があるんです」
「つまりそれは、
人柱による鎮護ではないという事ですか? 」
向井が驚きの声を上げた。
「神も昔は贄による願いを聞いていました。
ただ、その願いが度を越したことで、
神の怒りをかい、
贄の献上は要らぬものとなったのです。
あの時私が鎮めさせたことで、
大沢を勢いづかせてしまったのでしょう」
冥王の沈黙に、
その場にいたものも黙り込んだまま動かなかった。
冥王は静かに話し始めた。
「今回ヴィヴィから報告があったのは、
次回の人柱候補が十人であるという事です。
儀式は数ヶ月先を予定しているそうですが、
既にAIにより選定されています。
それが………汚職政治家を含めた十人。
もちろんトップを生贄にはできませんから、
恐らくその下が、
さらに階級制をのぞいて繰り上がる事でしょう」
「だとすると、これから開発されるあの場所で、
十人の人柱をたてて、
今起こっている災害を止めるという事? 」
アートンが聞いた。
「多分そうなると思う。
地方で大きな結界を張れば、
儀式について内部でも、
知られることになるかもしれない。
だって、千人単位の生贄を考えていたわけだから」
トリアの言葉にその場にいたものは、
口を閉じて聞いていた。
「あの開発地域の取り壊しはこれから。
それに合わせて十人の生贄はさらわれて、
中央に拘束され人知れず殺されると思われる。
神の祠は八ヵ所。そこに一体ずつ埋め、
残り二体は団地とその奥にと、考えているはず。
近々何かの理由を付けて、
一時団地から人を追い払うことになると思います。
吉沢の影鰐なので、
部下が足を踏み入れる事には問題ないでしょうから」
長い沈黙が流れた。
冥王や特別室での大沢の様子をみても、
もしかしたらという推測はたてられます」
冥王は深いため息をつくと、
向井の顔を見た。
「そこまで分かっているなら、
説明しても大丈夫ですね」
「はい」
冥王は静かに話し始めた。
「まず大沢の祖父が見つけた、
その昔に行われていた儀式の文献から、
この国の転落は始まりました。
古来より人柱の風習が、
神への生贄とされていたことは、
誰もが知っている事実かもしれません。
現在では迷信だと言われていますが、
もしその文献が本当に存在したとしたら、
どうします?
しかも権力に直結するものだとしたら。
人は試したくなるというものでしょう」
冥王は両手を結ぶと瞳を閉じた。
「大沢は祖父が行った儀式を知り、
そしてその文献に取り憑かれてしまった。
十九年前に起こった大災害の時に、
二十人もの国民を殺害し、
赤姫の守る祠を壊しその下に埋めました」
黙っていた向井の顔が青ざめた。
「それが向井君も知っている神秘の国事件です。
あの時の赤姫の怒りは凄まじく、
安達君の魂の事もあって、
私が地震の神であるないの神に、
無理を言って収めた経緯があるんです」
「つまりそれは、
人柱による鎮護ではないという事ですか? 」
向井が驚きの声を上げた。
「神も昔は贄による願いを聞いていました。
ただ、その願いが度を越したことで、
神の怒りをかい、
贄の献上は要らぬものとなったのです。
あの時私が鎮めさせたことで、
大沢を勢いづかせてしまったのでしょう」
冥王の沈黙に、
その場にいたものも黙り込んだまま動かなかった。
冥王は静かに話し始めた。
「今回ヴィヴィから報告があったのは、
次回の人柱候補が十人であるという事です。
儀式は数ヶ月先を予定しているそうですが、
既にAIにより選定されています。
それが………汚職政治家を含めた十人。
もちろんトップを生贄にはできませんから、
恐らくその下が、
さらに階級制をのぞいて繰り上がる事でしょう」
「だとすると、これから開発されるあの場所で、
十人の人柱をたてて、
今起こっている災害を止めるという事? 」
アートンが聞いた。
「多分そうなると思う。
地方で大きな結界を張れば、
儀式について内部でも、
知られることになるかもしれない。
だって、千人単位の生贄を考えていたわけだから」
トリアの言葉にその場にいたものは、
口を閉じて聞いていた。
「あの開発地域の取り壊しはこれから。
それに合わせて十人の生贄はさらわれて、
中央に拘束され人知れず殺されると思われる。
神の祠は八ヵ所。そこに一体ずつ埋め、
残り二体は団地とその奥にと、考えているはず。
近々何かの理由を付けて、
一時団地から人を追い払うことになると思います。
吉沢の影鰐なので、
部下が足を踏み入れる事には問題ないでしょうから」
長い沈黙が流れた。
1
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
独り日和 ―春夏秋冬―
八雲翔
ライト文芸
主人公は櫻野冬という老女。
彼を取り巻く人と犬と猫の日常を書いたストーリーです。
仕事を探す四十代女性。
子供を一人で育てている未亡人。
元ヤクザ。
冬とひょんなことでの出会いから、
繋がる物語です。
春夏秋冬。
数ヶ月の出会いが一生の家族になる。
そんな冬と彼女を取り巻く人たちを見守ってください。
*この物語はフィクションです。
実在の人物や団体、地名などとは一切関係ありません。
八雲翔
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる