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第六部

仙境の仙木

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下界では空が暗闇に包まれ、

その異様な様子に、

道行く人たちも立ち止まって見ていた。

「霊が集中している場所がこことなると、

近々なにか起こすってことかな? 」

田所が立ち止まって空を見上げている横で、

「違う………この近くで、何か………

ん~神様が………?」

安達が瞳を閉じて眉間にシワを寄せた。

息が荒くなるのに気づき、

「安達君、深呼吸して」

向井が声をかけた。

安達が大きく息を吸って吐く。

「ここは安達君には、

相性のいい土地ではないですね」

「分かる。俺ももやもやするもん」

牧野の言葉に、

そうか。ここの裏通りの先は、

牧野君が殺害された場所。

向井は顎に手を置くと考え込んだ。

そういえば………俺が働いていたホテルもこの先。

ここが開発されることになり、

老朽化を理由に取り壊しになるが………

俺が事故にあったのも………

この先の人通りの少ない交差点…

『あなた様達三人は点でつながっております。

これも運命だったのでしょう。』

ミヒカの言葉を思い出していた。

「向井さん? どうかしましたか? 」

佐久間が声をかけた。

「えっ? あぁ………ちょっと考え事をしてて」

「この前のイベントはここだったんだよ。

もう、入れないように囲まれちゃってるね」

安達がイベントが行われたビルを見ていた。

「そうだったんだ」

エナトが言った。

「多分、この辺りの祠を壊したのが原因だと思うよ。

今までは神が抑え込んでいた霊達も、

行き場をなくしてここに集まってきている。

この国の構造が利権温存だから、

これからも増えていくと思うけど」

アートンが言ったところで、

悪霊が膨れ上がり、

牧野が冥界札を取り出し貼り付けていった。

ここまで大きくなると霊銃では対処も難しく、

牧野の出番になる。

あぶれて散る霊を他の者達が霊銃で捕縛していった。

「暗闇が広がり過ぎて、

ちょっとやそっとじゃ綺麗になりそうもないな」

エナトが言った。

「さて、どうしましょう。

牧野君の体力も持ちませんからね」

その時、向井の頭上を白虎が駆け抜け、

結界を囲む黒い塊に突っ込んだ。

その後ろからエハが来ると、

朱で書かれた文言の仙木を投げつけた。

閃光が辺りを包むと、

一瞬のうちに悪霊が消滅した。

「間に合った~」

エハは白虎を呼び戻すと、

後ろからヴァンがやってきて、

残りの悪霊を、

式神の黒猫で始末していった。

「凄い…今の何? 」

牧野も驚いたままエハを見た。

「桃の木に冥王が術を入れ込んだ仙木よ」

「数日前に冥王に頼まれて、

俺達が仙境に派遣されてたの」

ヴァンも言うと黒猫を呼び戻した。

「仙境て仙人が住んでるんだよね。

本当にいるの? 」

牧野が二人のそばに駆け寄ると聞いた。
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