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第六部
動き出す儀式
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「これならレイヤードスタイルでもピッタリ。
安達君はこういったくすみカラー似合うのよ」
安達も鏡の前でまんざらでもなさそうに見ている。
嬉しそうな姿に、
「じゃあ、これも入れて三着で、
四十パーセントオフでいいかしら」
真紀子が作家に話した。
「えっ、俺いいよ」
「この服気に入らない? 」
弥生が聞いた。
「欲しいけど………」
「だったらいいじゃない。
これは私と真紀子さんからのプレゼント。
三着買わないと、
四十パーセントオフにならないんだもん。
協力してよ」
弥生が笑った。
「いいですね~家族でお買い物」
作家が服を包みながら言った。
「うちの子なんか、
もう一緒にお出かけもしてくれないです」
「私達も今回はイベントに参加したんで、
それで一緒に来たんですよ」
真紀子が説明した。
「そうだったんですか?
ここのイベントも今回で終わりでしょ。
次はどこにしようかって、
作家さんたちは皆、悩んでますよね」
「私達今回初参加で。
次はもうないんですか? 」
弥生が驚いて聞いた。
「知らなかった?
なんでもこの辺りに、
大規模な開発工事をするらしいの。
地元住民が反対してたけど、
子育て応援街づくりだし、
大手ディベロッパーと大臣の、
都市計画でしょ。
生活迷惑法とかで逮捕者も出たし、
これ以上反対したら………ねえ」
作家は小声で話した。
真紀子も頷きながら顔をしかめた。
「でもね、来月にはこの先の会場で、
一応イベントできるみたいだから、
私みたいな作家は大変」
彼女はそういって笑った。
「寂しいわね。
安達君もまたやりたいもんね。
別の場所探さなきゃね」
弥生はブースに戻りながら安達に話しかけた。
その時安達がふと何かを感じたのか、
辺りを見回した。
「どうかしましたか? 」
向井が声をかけると、
「ん~………何でもない」
安達は首をかしげると考え込んだ。
あの団地はここから二キロほど先に位置している。
安達君には何か感じるものがあったのだろうか。
だとすると、この辺はあまり近づかないほうが、
いいのかもしれないな。
向井は安達の様子を暫く見ていた。
――――――――
冥界に戻ると、
ディッセから呼び止められて、
向井とトリアは冥王室へと向かった。
中にはアートンとシェデムもおり、
重々しい雰囲気で机を囲んでいた。
「何かありましたか? 」
向井が近づくと、
「先程までサランダとカランもいたんだけど、
西と北でも復興という名目で、
開発工事の話が上がっているそうです」
シェデムが空間ディスプレイの地図に、
円を書いた。
そういえば今日のイベント場所も、
開発工事が始まるって言ってたな。
向井もディスプレイを見ながら、
考え込んだ。
「今、災害地域はこの辺りなんですが、
復興予定地はここ。
意味不明でしょ」
シェデムが顔を顰める。
安達君はこういったくすみカラー似合うのよ」
安達も鏡の前でまんざらでもなさそうに見ている。
嬉しそうな姿に、
「じゃあ、これも入れて三着で、
四十パーセントオフでいいかしら」
真紀子が作家に話した。
「えっ、俺いいよ」
「この服気に入らない? 」
弥生が聞いた。
「欲しいけど………」
「だったらいいじゃない。
これは私と真紀子さんからのプレゼント。
三着買わないと、
四十パーセントオフにならないんだもん。
協力してよ」
弥生が笑った。
「いいですね~家族でお買い物」
作家が服を包みながら言った。
「うちの子なんか、
もう一緒にお出かけもしてくれないです」
「私達も今回はイベントに参加したんで、
それで一緒に来たんですよ」
真紀子が説明した。
「そうだったんですか?
ここのイベントも今回で終わりでしょ。
次はどこにしようかって、
作家さんたちは皆、悩んでますよね」
「私達今回初参加で。
次はもうないんですか? 」
弥生が驚いて聞いた。
「知らなかった?
なんでもこの辺りに、
大規模な開発工事をするらしいの。
地元住民が反対してたけど、
子育て応援街づくりだし、
大手ディベロッパーと大臣の、
都市計画でしょ。
生活迷惑法とかで逮捕者も出たし、
これ以上反対したら………ねえ」
作家は小声で話した。
真紀子も頷きながら顔をしかめた。
「でもね、来月にはこの先の会場で、
一応イベントできるみたいだから、
私みたいな作家は大変」
彼女はそういって笑った。
「寂しいわね。
安達君もまたやりたいもんね。
別の場所探さなきゃね」
弥生はブースに戻りながら安達に話しかけた。
その時安達がふと何かを感じたのか、
辺りを見回した。
「どうかしましたか? 」
向井が声をかけると、
「ん~………何でもない」
安達は首をかしげると考え込んだ。
あの団地はここから二キロほど先に位置している。
安達君には何か感じるものがあったのだろうか。
だとすると、この辺はあまり近づかないほうが、
いいのかもしれないな。
向井は安達の様子を暫く見ていた。
――――――――
冥界に戻ると、
ディッセから呼び止められて、
向井とトリアは冥王室へと向かった。
中にはアートンとシェデムもおり、
重々しい雰囲気で机を囲んでいた。
「何かありましたか? 」
向井が近づくと、
「先程までサランダとカランもいたんだけど、
西と北でも復興という名目で、
開発工事の話が上がっているそうです」
シェデムが空間ディスプレイの地図に、
円を書いた。
そういえば今日のイベント場所も、
開発工事が始まるって言ってたな。
向井もディスプレイを見ながら、
考え込んだ。
「今、災害地域はこの辺りなんですが、
復興予定地はここ。
意味不明でしょ」
シェデムが顔を顰める。
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