『アンダーワールド』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

文字の大きさ
上 下
192 / 631
第六部

妖怪にも反抗期?

しおりを挟む
真紀子と向井も笑うと、

残りのトレイを持ってテーブルに歩いて行った。

大人たちがケーキを食べていると、

早紀と弥生がチビと一緒に入ってきた。

「あ~なんかたべてる」

チビが走ってきて、向井達に飛びついてきた。

「ちびちゃん達はプリンね」

真紀子は立ち上がると、

「弥生ちゃんと早紀ちゃんもティラミス食べる? 」

「食べる~」

二人も足早に来るとケーキを箱から出した。

騒ぐチビと一緒に、

早紀がプリンを乗せたトレイを持って、

テーブルに来た。

「ほらちゃんと座って、こぼさないようにね」

「こぼさないよ~」

そういいながら食べ始めた。

「最近少し生意気なのよ」

早紀は大人たちの方へ来ると、

ティラミスのケーキ皿を手に取った。

「反抗期? 妖怪にもあるんですかね。

人間だとイヤイヤ期に当たりますけど」

向井も嬉しそうに食べるチビをちらりと見た。

「どうだろうね。

俺達はこの地に降りた時には、

もうこの状態だったからな」

究鬼が言った。

「君らも知っていると思うけど、

俺達は意味を持って下界に落とされて、

分からないままに入力されたことをさせられていた、

そんな感じ? 

冥王に会って、

自分で多くを考えて行動するようになったからな」

「人は不思議なことに、

何も考えていないようで、

脳はいつも何かを考えているんですよ。

君達もそのように思考を巡らせている。

いい事ですよ」

「源じいはさ。いい校長先生だったんだろうな」

田所の言葉に源じいは笑った。

「そんな風に言ってもらえたら嬉しいですね」

「あいつらは俺達と違って、

自然妖怪の部類だと思うから、

親から生まれてはいるんだろうけど、

妖怪も生み捨て多いからね」

「そうなの? 」

究鬼の話に弥生が聞いた。

「妖怪の感情って人とかかわることでも、

変わってくるんだよ。

触れ合う人が誰だったかでも、

悪魔にも天使にもなる。

もともとどうしようもないのもいるけど、

それは人間だって同じでしょ」

「確かにそうですね」

向井も手にしたマグカップの中をじっと見つめた。

「そういう意味ではチビ達は人間に近い。

ここで育っているからさ。

虎獅狼達もそうだろう? 

いいか悪いかなんて誰にも分んないし、

それでいいんじゃないの? 

ただ、それなりに力はあるから、

そこは気をつけたほうがいいけど、

向井さん達だって人間にはない力を、

冥王からもらってるでしょ。

だから反抗期が来たとしても問題ないよ」

究鬼はそれだけ言ってから、チビ達を見た。


クリスマスイブ当日―――

特別室からディナーとシャンパンを用意しろと言われ、

向井は面倒だが、

名店のディナーをテイクアウト予約し、

受け取りに行った。

街は悪霊が騒ぎを起こすこともなく、

イルミネーションの中、

楽しそうに歩く恋人や家族連れで溢れていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

幼馴染の勇者が一般人の僕をパーティーに入れようとするんですが

空色蜻蛉
ファンタジー
羊飼いの少年リヒトは、ある事件で勇者になってしまった幼馴染みに巻き込まれ、世界を救う旅へ……ではなく世界一周観光旅行に出発する。 「君達、僕は一般人だって何度言ったら分かるんだ?!  人間外の戦闘に巻き込まないでくれ。  魔王討伐の旅じゃなくて観光旅行なら別に良いけど……え? じゃあ観光旅行で良いって本気?」 どこまでもリヒト優先の幼馴染みと共に、人助けそっちのけで愉快な珍道中が始まる。一行のマスコット家畜メリーさんは巨大化するし、リヒト自身も秘密を抱えているがそれはそれとして。 人生は楽しまないと勿体ない!! ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

おっさんの異世界建国記

なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

処理中です...