161 / 631
第五部
牧野の死
しおりを挟む
「星が綺麗~」
エハが空を見上げ声に出す。
「でも、やっぱ寒いわ~」
そういって笑うと両腕をさすった。
「冬の空は大気の中の水蒸気が安定していて、
不純物が舞わないので綺麗なんですよ。
夏は湿気が多いですからね」
向井はそう説明すると、一緒に空を見上げた。
「………………」
牧野が夜空を見てから俯くと、
その土地をじっと見つめた。
「どうかしましたか? 」
向井が聞くと、
「………………思い出した。俺、ここで死んだんだ」
「えっ? 」
五人が振り返った。
「そう、二年前だよ。
いつもならこんな公園に来ないのに、
何であの時ここを通ったんだろう」
牧野が足元を見たまま呟いた。
「牧野君は半グレの抗争に巻き込まれたって、
言ってましたけど」
「そうなんだよ。
この辺りはやばい奴がうろついているんで、
じいちゃん先生に通るなって、
ずっと言われてたんだよね」
「じいちゃん先生? 牧野君って施設育ちだっけ? 」
ヴァンが聞いた。
「ん? そうだよ。親が亡くなって引き取り手がいなくて、
ほら、ここから少し先に寺があるじゃん。
そこのじいちゃん………えっと住職? が、
引き取ってくれたの。
それで俺、よく覚えてないんだけど預けられて」
「牧野君はその後、ご住職に大事に育てられたんですね」
向井が言う。
「な、なんだよ」
「いいことだよ。施設だって色々あるんだから、
牧野君にはいい先生が、
そばにいてくれたってことだよ」
赤くなってむくれて言う牧野に、
エナトも微笑んだ。
「でも、そっか。俺が寺に預けられたのって、
二、三歳………
三鬼達くらいの年だったからな。
そのあとも寺の手伝いしながら、バイトして、
あそこに住まわせてくれたもんな」
「ご住職は今もご健在? 」
佐久間が牧野を見る。
「いや、俺が死んで………去年か、
死んじゃった。
俺、気になったからセイに聞いたんだよ。
『じいちゃんの魂はどうなってるのか』って。
そしたら、別の場所に行ったって。
よくわからないんだけど、
徳が高いと、違うところに行くんだってさ」
「へえ~
牧野君が自由奔放なのは、
そのおじいさんのおかげなんだな」
ヴァンが笑うと、その場にいたものも笑った。
「だけど、いつも通らない道を通ったのは、
何ででしょうね」
向井の言葉に、
牧野がハッと思い出すように言った。
「そうだ! 工事だよ。
いつもは反対側の道で神社によって、
お参りして………」
「えっ? 牧野君がお参り? 」
エハが笑った。
「なんでそこで驚くのよ。
ディッセにも言われたけど、
俺だってお参り位するよ。
でも、その日はその道が工事で通れなくて、
それでここを通ったんだ」
牧野が頷いた。
エハが空を見上げ声に出す。
「でも、やっぱ寒いわ~」
そういって笑うと両腕をさすった。
「冬の空は大気の中の水蒸気が安定していて、
不純物が舞わないので綺麗なんですよ。
夏は湿気が多いですからね」
向井はそう説明すると、一緒に空を見上げた。
「………………」
牧野が夜空を見てから俯くと、
その土地をじっと見つめた。
「どうかしましたか? 」
向井が聞くと、
「………………思い出した。俺、ここで死んだんだ」
「えっ? 」
五人が振り返った。
「そう、二年前だよ。
いつもならこんな公園に来ないのに、
何であの時ここを通ったんだろう」
牧野が足元を見たまま呟いた。
「牧野君は半グレの抗争に巻き込まれたって、
言ってましたけど」
「そうなんだよ。
この辺りはやばい奴がうろついているんで、
じいちゃん先生に通るなって、
ずっと言われてたんだよね」
「じいちゃん先生? 牧野君って施設育ちだっけ? 」
ヴァンが聞いた。
「ん? そうだよ。親が亡くなって引き取り手がいなくて、
ほら、ここから少し先に寺があるじゃん。
そこのじいちゃん………えっと住職? が、
引き取ってくれたの。
それで俺、よく覚えてないんだけど預けられて」
「牧野君はその後、ご住職に大事に育てられたんですね」
向井が言う。
「な、なんだよ」
「いいことだよ。施設だって色々あるんだから、
牧野君にはいい先生が、
そばにいてくれたってことだよ」
赤くなってむくれて言う牧野に、
エナトも微笑んだ。
「でも、そっか。俺が寺に預けられたのって、
二、三歳………
三鬼達くらいの年だったからな。
そのあとも寺の手伝いしながら、バイトして、
あそこに住まわせてくれたもんな」
「ご住職は今もご健在? 」
佐久間が牧野を見る。
「いや、俺が死んで………去年か、
死んじゃった。
俺、気になったからセイに聞いたんだよ。
『じいちゃんの魂はどうなってるのか』って。
そしたら、別の場所に行ったって。
よくわからないんだけど、
徳が高いと、違うところに行くんだってさ」
「へえ~
牧野君が自由奔放なのは、
そのおじいさんのおかげなんだな」
ヴァンが笑うと、その場にいたものも笑った。
「だけど、いつも通らない道を通ったのは、
何ででしょうね」
向井の言葉に、
牧野がハッと思い出すように言った。
「そうだ! 工事だよ。
いつもは反対側の道で神社によって、
お参りして………」
「えっ? 牧野君がお参り? 」
エハが笑った。
「なんでそこで驚くのよ。
ディッセにも言われたけど、
俺だってお参り位するよ。
でも、その日はその道が工事で通れなくて、
それでここを通ったんだ」
牧野が頷いた。
1
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
独り日和 ―春夏秋冬―
八雲翔
ライト文芸
主人公は櫻野冬という老女。
彼を取り巻く人と犬と猫の日常を書いたストーリーです。
仕事を探す四十代女性。
子供を一人で育てている未亡人。
元ヤクザ。
冬とひょんなことでの出会いから、
繋がる物語です。
春夏秋冬。
数ヶ月の出会いが一生の家族になる。
そんな冬と彼女を取り巻く人たちを見守ってください。
*この物語はフィクションです。
実在の人物や団体、地名などとは一切関係ありません。
八雲翔
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる