上 下
467 / 631
第十三部

冥王の日常は………

しおりを挟む
「冥王のお気に入りの、

騎士と宇宙飛行士のクッキーも買ってあるので、

無くなる前に食べてください」

「それは大変だ。みんな食べちゃダメですよ」

冥王が子供のように箱を覗いて探した。

「あったあった」

冥王も楽しそうにクッキーを手に取った。

「ここはアイシングクッキーの専門店なので、

いろんなキャラクターがあるんですよ。

チビと安達君のお気に入りのお店なんですよね」

向井はそう話すと、

「ただ、一枚が高いので、

一人二枚までにしてくださいね。

一枚が大きいんだから文句は無しですよ」

と注意した。

「なんですと? 」

「なんだと? 」

冥王と牧野が同時に言う姿に、

大人達はあきれ顔で笑うと、

「虎獅狼達や他にも食べたい人がいるでしょう? 」

と向井が釘を刺した。

「虎獅狼達の作品は置かないの? 」

新田が聞くと、

「今はオーダーの方で手一杯なのよ。

ただね、千乃のヘアアクセサリーと、

クロのニードルは少しだけ、

妖怪の匠コーナーに置くけど」

「妖怪の匠ってちょっと驚きますよね」

佐久間が笑った。

「考えたらそうよね。

でも、幽霊の匠コーナーもあるのよ。

このパンダ可愛い~」

アンがクッキーを眺めながら言った。

「幽霊の匠? って誰の作品? 」

ヴァンが驚いて聞いた。

「今回はレジン作家渡辺さんの作品を、

置かせてもらうの。

ほら、縁側の妖怪チビのお人形、

作ってもらったでしょ? 

あれが凄い人気で。

やっぱ本物の人気作家さんだからね。

で、再販して欲しいって言われたんで、

限定で三セットだけ作ってもらったのよ。

あと、閻魔の日常シリーズで六点だけ」

「えっ? 私のお人形ですか? 」

トリアの話に冥王の瞳が輝いた。

「冥王の普段の姿をそのまま、

人形にしてもらったの」

「そういえば………この所、

渡辺さんが私の近くにいた気がします」

冥王が思い出すように上を向いた。

「そりゃそうよ。冥王の日常をリアルに、

可愛くキャラクターにしてもらったんだもん。

観察して、デッサンしてたと思うわよ。

お陰で凄くいいのが出来上がって、

絶対完売するのが分かる作品なのよ」

「どんなの? 気になるな」

田所がトリアを見た。

「写真で撮ったから見てみる? 」

トリアはそういうとタブレットを取り出し、

画像をアップした。

………………………

のぞいた向井達の顔が一瞬固まり、

続けて笑いが起こった。

「これはウケるね~」

千鬼が腹を抱えて笑う姿に、

冥王が面白くなさそうにアヒル口をした。

「私はもっとかっこいいです。

これでは遊んで寝てるばかりみたいじゃないですか」

………………………………

みんなの冷めた目つきに、

「君達は私の日常がこうだと思っているんですか? 」

冥王は首を小さく振り、ふぅとため息をついた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

10分で読める『不穏な空気』短編集

成木沢ヨウ
ライト文芸
各ストーリーにつき7ページ前後です。 それぞれ約10分ほどでお楽しみいただけます。 不穏な空気漂うショートストーリーを、短編集にしてお届けしてまいります。 男女関係のもつれ、職場でのいざこざ、不思議な出会い……。 日常の中にある非日常を、ぜひご覧ください。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...